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18話 ダーク吸収

俺の推測が当たっていれば、【黒炎使い】はダークマスターの一人だ。

ダークは俺の使役物であり、俺の言う通りに動くべきだ。


3体集まったからって、強がって吠えているかもしれないが、相手を選べ。

ダークなら大人しくダークマスターの手の内に入るべきだろ。


しかし、レベル3ダークをは俺を見ても恭順の態度を見せない。

魔石をはめ込んだ分、先ほどより警戒心が高まったようだ。


わたしだ、ダークマスターだ。

こっちさこいこい。お手をしなさい。


「グガアアア! 」

ふむ、意思の疎通は不可能そうだ。


ダークは一般的に魔法使いに臆することはない。

生身の人間同様、目があえば襲い掛かってくれるものだ。

しかし、目の前のダークは俺に一向にかかっては来ようとしない。


そこには恭順などなく、若干だが恐れのような感情がうかがい知れる。

俺が魔石をはめ込んだときの謎の波動もそうだったが、やはり【黒炎使い】というのは何か凄い力がありそうだった。ダークはそれを敏感に感じ取っているのだろう。


襲ってこないのならば都合がいい。

なにせこちらはカスな物理耐久しか持っていない。相手は物理攻撃型のダークだ。


突進してくれるだけで厄介この上ない。

動かないのならば、先手必勝、魔法を叩き込ませて貰う。


「使用可能魔法を映し出してくれ」

俺の声に反応して、ポケットに入ったスマホが作動する。

ホログラムを空中に映し出して、使用可能魔法を見せてくれた。

スマホの操作ができない場合、こういったことも可能である。もちろん水琴家製。


使用可能魔法一覧

ダークフレイム Lv1 消費MP 30

呪文:地獄の業火に焼かれて闇へと帰れ


映し出された魔法は一つだけだった。

魔石をはめ込んだLv1の状態では当然か。


「映像をどけてくれ」

戦闘の邪魔にならないように映像を消しておく。

これで戦闘準備は整った。


それにしても、あんな呪文を言わなければいけないのか……。

恥ずかしすぎるぞ。


ゲーム内じゃ呪文を唱えて魔法を行使する方法と、スマホに術式マクロを組み込んで発動させる方法がある。

呪文は演出がながいし、キャライメージに合わなかったりで選択しない人が多い。


そしてこの世界でも学園で見る限り呪文を唱える派は少なかった気がする。

スマホで術式マクロを組んでおいた方が楽だし、スマートだ。

まだそれほどの例を見ていないので、正確なものではないが。


俺もスマホに術式を組み込みたいのだが、まだ設定していない。たった今魔石をはめ込んだばかりだからね。

それとゲーム内では第三の詠唱の仕方がある。


それは主人公の文月大夜だけがやっている方法だ。

魔石の入った右の手を胸に当てて、左手で魔石の痣に触れながら使用したい魔法を念じる。そうすることで魔法が行使されるのだ。


大きな違いはないはずだが、なんかかっこいい。

主人公だけズルいぞ。

ゲーム内の春鷹は思いっきり呪文を唱える派だったから、余計に羨ましいぞ。


まあこの場は仕方ない。

かっこよさよりも、確実さをとる方がいいだろう。


「地獄の業火に焼かれて闇へと帰れ、ダークフレイム!! 」

まっすぐ突き出した両手から、黒い炎が噴き出し、ダークへと一直線に飛んでいく。

食らうがいい、【黒炎使い】として初めて放つ魔法。

作中最高値を誇る俺の攻撃魔法値によって出る魔法の威力。

更には能力反映率300%が乗り、攻撃魔法値1071となった俺の超高威力魔法を!


炎の先端が少し狼っぽく見えた。さながら地獄の番犬のようだった。


俺の魔石に恐れを見せてボンネットの上から動こうとしなかったダークは、超速で飛んでくるダークフレイムもかわすことができずに、肩から狼に噛まれてその部分から黒い炎に焼かれ始めた。


両手で炎を取り除こうとしても、その場でゴロゴロのたうち回っても、黒い炎は消えることがなかった。

始めこそ盛大に暴れていたものの、次第に体力が落ちていっているようだった。


MPにはまだまだ余裕がある。

ここで追撃を行うことにした。それも主人公スタイルで。


右手を胸に当て、左手をそっと右の手の甲に添える。

頭の中で、ダークフレイムの行使を念じた。


魔石の痣が光り、両手の平に魔力が満ちていくのを感じる。

手をまっすぐ伸ばして、魔力の高まりと同時に魔法が発射された。


黒い炎が噴出される。

先端部分には狼が2頭いた。

ダークに食らいつくと、そのまま引き倒して、先ほど同様黒い炎に変化して更に焼いていく。


既に体力のなくなっていたダークだ。

もう黒い炎に焼かれるままになっていた。

これが1071の攻撃魔法値の恐ろしさ。

たったのLv1の素人魔法使いが、ソロでレベル3のダークを狩れてしまうぶっ壊れ性能。


これが本来、春鷹が持つ能力なのだ。

しかも、これでいてまだ発展途上という恐ろしさ……。


勝負はあったと見ていいだろう。

それよりも、なにあれ……。

主人公スタイルの詠唱を行なったら、狼が二匹になったんだけど……。

普通に考えると威力倍だよね。

主人公チートじゃないですか……。


つぶれた車のガソリンが漏れ出して、黒い炎がそれに引火して現場は悲惨なことになっていた。

お掃除ロボットが複数台近づいてきて、消火液を噴出している。

同志にあんな機能があったとは。俺も次から清掃するときは消火器具を持とう。


それにしてもダークとのリアル戦闘はこんなにも凄いことになっていたのか。

レベル上げでなんども倒していたが、現地住民からしたら凄い被害だったのね。


炎に包まれて、後は消滅を待つだけのダークだったのだが、最後の気力を振り絞って立ち上がった。

流石はレベル3といったところか。


しかし、体力の限界は目に見えている。

口を押えているが、もう限界だろう。


ほら、ダークが一体漏れ出した。

次でもう一体も。

後一体出てくれば、ダーク討伐完了である。


憑依した体からダークが漏れれば、ダークは死に、憑依された者は正常な状態に戻る。

つまりは戦闘完了。俺の勝ちで終わる。


しかし、最後のダークはなかなか出てこない。

そして、彼は最後の意地か、こちらに向かって突進してきた。


方向感はあまり定まっておらず、向かっている先は運の悪いことにちょうど倒れ込んでいる田辺の方向だった。

うちの人間に手は出させん!


俺も走っていき、雄叫びをあげながら突進するダークに近づて、足を滑り込ませた。

俺に引っ掛かったダークは盛大にこけて、最後のダークを吐き出すに至った。


ふう、勝ったな。

倒れ込んでいる男を俺が気遣ってやることはない。ダークに憑依されたのには彼にも原因があるからだ。


それよりも近くにいる田辺の元へと向かい、無事を確かめた。

「田辺、無事か? 」

「ええ……、せいぜい立ち上がれな位です。それより……立派でした春鷹様。あなたなら父上同様、凄腕の、魔法使いに、なれると、思って、ました」

「無理をしてしゃべるな。すぐに回復魔法を使える者が来るだろうから、それまでは安静にしていろ」

田辺は頷くだけで、その後は無理に喋ろうとはしなかった。

不思議とその顔には満足感が漂っている気がした。


こうして二日目の清掃と、2回目のダーク討伐が完了したかに見えた。

しかし、俺は一つ忘れていたことがある。


吐き出されたダークの顛末を見ていなかった。

憑依者を倒した後は、ダークは消えてなくなると思っていた。


ゲーム内でもそうだったし、先日あやと共闘して倒したときもそうだった。


ふと頭上に何かの存在を感じた俺は、そちらに視線を向けた。

そしたらそこにはダークが3体いた。

憑依していない、素の状態のダーク。


黒いもやもやの集合体のようなのが3つ。

先ほど吐き出されたダークたちだ。


なにやら慌ただしく俺の周りを漂流している。

「なんだ? 恭順したくなったのか? 」

ダークが更に近づいてきた。

頬ずりしてくるやつまでいる。ほんのりと温かい。ふわふわもしている。

なんだか急に可愛く思えた。


やはり【黒炎使い】というのはダークマスター、ダークを使役する者だったか。

「ならばよし、俺に従えダーク共」

そう言い終わると、ダーク3体は猛スピードで俺の手の魔石の痣へと入っていった。


ちょっと待って!

憑依された! ダークに憑依された!

レベル3だよ、しかも!


……一瞬パニックになりかけたが、俺が正気を失うことはなかった。

ダークになっていない。

よかった、あの黒い煙を吐きながら学園生徒に倒されるなんて嫌だ。

次の日から教室内で浮くこと更に加速することだろう。


手の痣を確認する。

変化はない。しかし、ダークが3体入ったのは間違いない。

軽く手を振ってみても違和感はない。

力が高まったような感じもない。

……ダークマスターの力、いろいろと検証が必要そうだな。




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