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12話 魔法クラス選択

クラス分けが発表されて、あやとは別の組になることが決まった。


俺は1組。あやは3組である。

急に知り合いがいなくなった途端、俺は借りてきた猫のように大人しくなった。

周りが知らない人ばかりだとこんなに心細い者なのかと今更に知ったのだ。


水琴春鷹というのは、ただそこにいるだけで目立つ存在だ。

中学入学したてにしては高い身長と、嫌でも目立つその家名。

更には見た目だけは良いのだ、異性からの注目も少なからずあった。


代表挨拶ではあれだけ堂々と発表したこともあり、更に注目は集まった。

しかし、クラスに入った俺の様子はどうだろう。


先ほどの印象とは全く違い、クラスでポツンと一人大人しく座っていた。

周りが徐々に打ち解けていく中、俺は背筋を伸ばしてただ正面を見つめている。

悪いがこちらが俺の本性だ。

周りと自然に打ち解けている連中、わけわからん。どうやっているんだ。

頼む教えて。300円払うから。400円でも可!


俺に唯一救いがあったとすれば、周りが完全に打ち解ける前に教師が教室にやってきたことだろう。

周りが完全に打ち解けてしまっては手遅れになる。

長い一年を一人きりで過ごすという地獄が待ち受けるのだ。


「みんなー入学おめでとう。担任の橘クリスティンと申しますー」

彼女は自分の名前を教室の前面に表示されるホログラムスクリーン上に表示していく。

生徒は正面に映し出される映像を見てもいいし、机上にポップアップされる自分専用のホログラムスクリーンを見てもいい。


実際の授業もこの形式で行われる。

ノートをとる必要はなく、表示される内容は自分のタイミングで保存可能であり、好きに内容を書き足してもよい。自分のスクリーン上に書き込んだ内容は当然自分のスクリーンにしか反映されない。

こうして独自のノートを仕上げてテストに挑むことができるわけだ。


紹介のあった担任、橘クリスティンというは英国と日本のハーフの教師だった。

長い金髪が凄く目立つ女性である。

この学園は外国人も多いので、教師もそれに対応して多国籍化している。

ちなみにクリスティン先生はゲーム内にも出てくるキャラなのでなんだか少しホッとする。なぞの知り合い感が芽生えていた。


このシステムに慣れるためにも、クリスティン先生は俺たちに表示されるホログラムスクリーンを積極的にいじらせた。

ホログラム自体はこの世界では一般的なので、みな操作に困ることはない。

確認して欲しいのは、どんなことができるのかという詳細な部分だろう。


「はーい、じゃあシステムを使って自分の紹介文を作ってねー。一時間あげるから、できた人から前に出てきてこの大きいスクリーンで発表してねー」

操作のいい授業になるのだが、なかなかハードルの高い自己紹介をさせるな。


クリスティン先生はゲーム内でも人との距離感が緩くて、接しやすいと主人公たちから高評価を受けていた先生だ。しかし、ことコミュ障卒業1年生の俺とは相性が悪い気がする。

自己紹介なんて適当に終わらせて欲しかった。


操作している間、先生は操作の困った生徒に個別で対応していた。

そして手が空くとちらほらと豆知識を入れてくる。

「このホログラムスクリーンは水琴くんのお父さんが経営している会社が作ったものなのよー」

へー、とクラスから感心の声が聞こえる。


やめて! そういうのは注目を集めてしまうから。

全く、絶対に相性最悪だよ。


1時間くらい触っていると操作感は大体つかめてきた。

そして俺の自己紹介文も簡単にまとめ上げることができた。


自己紹介は挙手した者から順に行われる。

名前がポップアップしてくるような仕様で自己紹介する者や、どうやったのかアニメーションも交えて自己紹介をする者もいた。

俺の番がやってきて、皆がやったようにスクリーンを操作して自分の名前を表示させた。


水琴家のイメージに沿って、鹿威しと琴の音色が聞こえる中、楷書で書かれた水琴春鷹の名前を表示させる。

なぜか、おおっと声が上がった。


そういえば、音を加えたのは俺が初めてだった気がする。

「みずこと、はるたか、って読みます。仲良くしてくれると嬉しいです」

簡単に説明を終えて、席に戻る。


「さすが水琴家のシステムだけあって、操作に精通しているわねー。皆拍手ー」

クリスティン先生のそんなまとめに、照れくささを隠すために頭をぽりぽりと書きながら拍手を受け入れた。


全員の紹介が終わって、俺は何人か聞き覚えのある名前と印象に残った数人を記憶にとどめることに成功した。


「はーい、じゃあ自己紹介も終わったし、この後は大事な魔法クラスを選択してもらいますー」

そうそう、これだよこれ。

俺は今日このためにやって来たのだ。

最初の地雷回避、魔法タイプ選択のために!


クリスティン先生から魔法タイプ選択の説明が行われる。

正直知らない生徒はいないので説明も簡単なものだ。


「皆さんスマホで生体データを読み込んでステータスを見ているよね? それの上位機能が皆さんの座っている机と椅子にもインストールされています。スクリーンを操作して、解析されている自分のデータを見てみて下さい」

いくつか項目をめくってみると、確かにステータスを表示する画面があった。

タップして表示させる。


水琴春鷹 12歳 男

身長164cm 体重49kg


HP 333       ■■■


MP 967       ■■■■■■■■■■     


物理攻撃 021     ■■


物理耐久 017     ■


攻撃魔法値 357    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■


支援魔法値 012    ■


魔法耐久値 103    ■■■■■


妨害魔法値 214    ■■■■■■■■■■■


素早さ 256      ■■■■■■■■■■■■■


器用さ 311      ■■■■■■■■■■■■■■■■■


ラック 045      ■■■


身長が少し伸びたのと、能力が微増している、そのくらいの変化があった。

正確な数値だということはすぐにわかる。なにせ水琴家製だからね。


「はい、表示された能力をもとに、後は自分の好みに沿ってクラスを決定してください。とりあえずまた1時間くらいあげます。正式な届け出は1週間以内にお願いねー。クラスのインストールには、魔石が必要だから、決定した人から魔石を取りに来てください」


先生の説明通り、魔石を体のどこかに埋め込むことで魔法クラス選択が完了する。

場所を自分で選択することが可能で、耳たぶにつけてピアスみたいにする人もいるし、額につけて宗教っぽくする人もいる。

ちなみに主人公は右掌につけて、かっこいい感じになっている。

肝心のゲーム内春鷹は、舌にはめ込んでいた。

……趣味が悪い。

チーズバーガーを食べながら、チラチラと水の魔石が見える姿は非常に趣味が悪い。絶対にそこはやめてこうと誓った。


せっかく持って生まれた優れた容姿を、そんな悪趣味で汚したくない。

小さな地雷扱いをしてもよいだろう。それも回避しなくてはな。


俺はスクリーンを操作して、魔法タイプの種類を表示させていく。

そこにタイプの特徴と、詳しい説明が記されている。


魔法のタイプは5つに分かれる。

物理強化魔法タイプ。

攻撃魔法タイプ。

支援魔法タイプ。

魔法耐久タイプ。

妨害魔法タイプ。


大きく分けてこの5つだ。


俺は間違いなくここで攻撃魔法タイプを選ばなくてはならない。

物理強化タイプは最悪の選択。

支援魔法タイプも次いで悪い選択。

魔法耐久タイプはゲーム本編の選択。地雷だ。

妨害魔法タイプは正直悪くない。俺は優秀な能力値を誇っている。場合によっては選んでもいい選択肢となる。


次いで、魔法クラスを全て展開させていく。


拳闘、シーフ、踊子、炎使い、光使い、闇使い、回復使い、菌使い、知識使い、水使い、木使い、土使い、音使い、糸使い、毒使い、黒炎使い。


以上15の魔法クラスである。


春鷹はこの中の水使いを選択してしまったんだよな。

尊敬する父、冬之介もこれだし、先祖代々これなら仕方ない面もある。

しかし、俺は選択しない!!


水使いを展開させて、相性のわるさを再確認することにした。

ホログラムスクリーンが展開させれて、詳しい内容が表示される。


【水使い】

分類:魔法耐久タイプ


能力反映率

HP 140%

MP 120%

物理攻撃 10%

物理耐久 130%

攻撃魔法 15%

支援魔法 140%

魔法耐久 210%

妨害魔法 35%


スクリーンに表示される水使いの特徴。

見よこの特徴を。

春鷹の不得意な支援魔法と魔法耐久を高く反映する一方で、得意な攻撃魔法と妨害魔法を低く反映するこの水使いというクラス。

これを選択した春鷹に、馬鹿ですか、と言いたい。


物理耐久は多少ましに反映してくれるが、俺の物理耐久の元値が17だ。カスな部分を少し上げたところである。

見るだけでぞっとするこの相性の悪さ。

正直これを選んだ時の春鷹の精神状態は医学的に問題があったことだろう。

広坂の爺さんにもっと診察してもらうことを薦める。


ちなみに、素早さと、器用さ、ラックは選択する魔法クラスに影響を受けない。

もともと持っている能力値がそのまま発揮される。

更に言うと、器用さとラックは戦闘面に影響を与えない。


俺の実際の能力をこの反映率に当てはめた時の能力をお見せしよう。


HP 0399    ■■■■■■■■

MP 1160    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

物理攻撃 002  ■

物理耐久 022  ■

攻撃魔法 035  ■■

支援魔法 016  ■

魔法耐久 216  ■■■■■■■■■■■

妨害魔法 074  ■■■

素早さ  256  ■■■■■■■■■■■■■

器用さ  311  ■■■■■■■■■■■■■■■■

ラック  045  ■■


見よ、この悲しき結果を!!

あのゲーム内最高を誇っていた攻撃魔法値が、水使いクラスを選択することによって35という悲しき数値になってしまう!

357という数値は中学生入学時にしては異常な高能力値だ。

いずれは作中最高の攻撃魔法値を持つまでに至る。


それが35って。悲劇でしかないよ。本当に。

自分のことなので喜劇とは間違っても見れない。

絶対に選択できないクラスだということだ。

魔法耐久値が216でも殴られてしまえば終わりなんだよ、物理耐久22だからね。

よくこんな性能で一人で主人公パーティーに挑んだな……。


物理耐久の低さは実感しているだろうし、ほんとどんな精神状態だったんだよ春鷹。





魔法クラス16種書いていますが、次につながるところなのでミスではないです。

それと魔法タイプ分類を5つにしました。

それに伴い、2話も編集しています。


追加で、能力反映率を変更しました。

合計800%になるようにしています。

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