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閑話 4-3.ミスタラを覆う影

 今回、いつにも増して内容が無いです。





 人の流れに押されるように、JR秋葉原駅の電気街口から外に出る。


 左手にラジオ会館を眺めつつ、向かうは横断歩道先のSEGA一号館。


 ……ではなく、そこから右に折れてしばらく歩いた場所にある廣瀬ビル。その一階から四階にかけて営業しているHirose Entertainment Yard、通称Heyが本日最初の目的地である。


「ねえねえこれ見てよ。ナイトストライカーが純正筐体で動いてるんだって。初代ダライアスもあるとか。三画面なのかなあ」

「お、響がやりたがってたシャドーオーバーミスタラもあるっぽいぞ」


 スマホで検索した情報を、左隣の和人と見せ合いつつ、気持ち早足で歩いて行く。


 だって、本当に楽しみにしていたのだ。


 このお出かけは付き合う前から予定していたもので、特にデートを意識したものではないけれど。しかしゲーマーとしては、特にレトロゲーム好きとしては、非常にテンションの上がるデートコースだと言えるだろう。


「そうだ。せっかくだし、ランチを賭けて勝負しよっか?」

「べつに昼なら俺が出すぞ? 母さんから軍資金も渡されてるし」

「あー、うん。でもそれじゃつまらないでしょ?」


 どうせなら面白い方がいいし、ただご馳走になるのも気が引ける。それならば勝負にして、勝ってしまえばいいのである。


 いつも通り三本先取の五本勝負。ここなら普段見かけないゲームも多いだろうし楽しいことになりそうだ。


「……いいのか?」

「負ける要素はない」

「またフラグになりそうな発言を……」


 いや、ウメハラはこの発言の後にしっかり勝ってるから!


 アレックスに負けかけたけど。


「……でもまあ、勝負はちょっと後回しにして」

「わかってるって。最初はD&Dな」


 雑談をしていたらいつの間にやら目的地。


 Heyと書かれたオレンジ色の看板の下をくぐり抜け、目指すは3階、格闘ゲームとレトロゲームのフロアに向かって歩を進める。


 さあ、まずはミスタラを覆う影を払いに行きますか!





 ダンジョン&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラというゲーム。まごう事なき名作だが、異様なまでの覚えゲーという評価がされていたりする。


 基本的にどこを切り取っても初見殺し。しかし、パターン化してしまえばノーダメージクリアも夢ではない。ただし、ソロプレイの場合。


 マルチプレイとなると途端に話が変わってくる。敵が異様に増えてパターンが全く変わるのは当然で。ステージによってはボスが倍化する。体力ではなく数が。


 それどころか不用意にボスを囲むと無敵技を使って来たり、振り向きに攻撃判定があって殴られたりと、協力しようとすると不利になる要素がてんこ盛り。ということで、道中は協力、ボスはタイマンが基本となる。


 PS3に移植済みなのは知っているが、まだそこまでゲームに入れ込んでなかった頃の話なため、実質これが初プレイ。レッドドラゴン討伐がとりあえずの目標である。ラスボスは知らん。


「マジックユーザーもらい!」

「俺はファイターかクレリックだなあ……」


 もっとも、このゲームでは同じ職業を二人まで選べるのでキャラの奪い合いは発生しない。と見せかけて1Pと2Pで性能が違うのは罠だと思う。特にマジックユーザーは最高レベルの魔法が違っていて、2P側がちょっとだけ使いやすい。


 このゲームの魔法は非常に強力で、戦闘をとても楽にしてくれる。回数制限はあるもののステージクリア時のレベルアップで回復できる。積極的に使って行きたいところだ。


 あと、マジックユーザーと言えば毒針を忘れてはならない。ワンチャンレッドドラゴンが数発で沈む超火力は、まさにロマンの塊と言えるだろう。


「一応動画では予習してあるけど、ソロプレイ動画だったんだよね。和人はどう?」

「こっちも似たようなもんだが。ま、なんとかなるだろ」


 結局コイツはファイターにしたようだ。


 ゴブリンを張り倒しつつステージ1をずんずんと進んで行くと、縛られた人を乗せた台車が結構なスピードで突っ込んでくる。思わずビクッとする場面だが、攻撃判定はないので大丈夫。


「台車通りまーす」

「言うと思ったよ!」


 台車を通さずに2台ほど破壊して、拉致被害者を救助するとイベントが発生してネームエントリーとなる。名前によって初期装備が変わるので侮れない。


「ドレイヴン……っと」


 2Pマジックユーザーの公式名を入力する。貰える装備はマジカルハット。防御力アップ効果があり、紙装甲なマジックユーザーには嬉しい装備。めんどくさかったらウと名付けても同じなので、タイムアタックの予定があるのなら覚えておくと役に立つ。普通はないけど。


 そういや和人はどんな名前にしたのだろうか。


「……ケバブ?」

「来る途中で見たケバブが美味しそうだったから……」


 わかる! とてもよくわかる!


「じゃあお昼はそれで!」

「了解。値段も手頃だし丁度いいか」


 あんまり高いと奢って貰うのも気がひけるからね。フラグを立てているような気もするけれど。


 ちなみにケバブくんはプロテクションリングを持ってきたようだ。





 ステージ2ボスのゴブリン戦車を毒針で瞬殺し、幸先の良いスタート切ったケバブ一行。ステージ3は川下りルートで2匹に増えたマンスコーピオンにぐだぐだになりかけるも、毒針ラッキーパンチでなんとか突破。ショップのヒーリングポーション3本目を誰が買うかでモメた後、ステージ4のハーピー退治へ向かって行く。


「ワイバーンに乗ってるダークエルフってどう倒すんだっけ?」

「マジックミサイルだけしか当たらないらしいぞ」

「めんどくさ……」


 なにはともあれボスまで到着。ハーピーの着地に投げダガーを重ねて毒針を狙うも、当然そう簡単には行かず飛ばれてピンチになりそうに。そこでさっき拾ったばかりのイフリートボトルの出番である。きっちり焼き鳥にしてくれてほっと一息。切り札は切ってこそ輝くのだ。


 ステージ5に入り、ライバルキャラ(笑)なテルアリンさんをオイルで念入りに焼いていると、イベントからのステージ選択が発生する。版権問題でいろいろと名高い鈴木土下座ェ門もとい、ビホルダーが待ち受ける腐海とアインスン村の二択。今回は村ルートを選択した。


「杖落とした! ヘルハウンドさん! ロッドオブファイア!」

「わかったから落ち着け!」


 このゲームの主力アイテムであるオイルの威力が上がるのだから仕方ない。これと大オイルがあればレッドドラゴンだって上手に焼けるはずである。





 さて、ようやくやって来ましたレッドドラゴン。


 ここまでの道中で二回ほどコンティニューしているが、不慮の事故なので仕方ない。オーガの投げた岩が頭を直撃すれば人は死ぬ。ディスプレッサービーストに噛まれれば人は死ぬ。なお、ケバブくんもリッチのメテオ直撃で一度亡くなっていたりする。ざまぁ。


「みんな、大オイルは持ったな!」

「行くぞォ!」


 この二人ノリノリである。


 ここでオイルについて軽く説明しておこう。通常オイルは火柱が一つ上がる火炎瓶で、ダウンした敵にも当てることが出来るアイテムだ。ダウンさせてオイルで燃やして追い討ちしてまたオイルでループするのがダメな点。大オイルはもっと凶悪。火柱三本にそれぞれ攻撃判定があり、ダウンした敵がダウンしたまま連続でヒットする。大抵のボスがダウンさせて大オイル連打で終わってしまうのは、ぶっちゃっけ調整ミスなのではなかろうか。


 話は変わるけど、レッドドラゴンは画面に収まり切らないくらい大きいので、カプコンお約束の顔と腕だけ見える例のヤツが採用されている。マーヴルVSシリーズのアポカリプスを思い浮かべて貰えれば間違いない。いや、ちょっと違うか。まあいいや。


 戦闘が始まるとまず噛みつきが来るので画面下端でしゃがんで避ける。次に落石を影を見て回避。すると中央に顔を出して来るので、影を見て縦軸を合わせたら大オイルを連打する!


 多分これが一番早いと思います。


 断末魔の悲鳴をあげながら、アイテムを撒き散らかして画面外へ消えて行くレッドドラゴン。勘違いして欲しく無いのだけど、まともに戦うとめちゃくちゃ強いしめんどくさいボスなのだコイツは。


「……なあ、響。いいのか。これで」

「長く苦しい戦いだった……」


 このゲームは剣と魔法のファンタジーではなく、暴力とオイルのファンタジーなので、ぶっちゃっけこれでいいのである。


 そういえば、このステージ毒針使ってないや。





 ラスボスも大オイルで燃やした。





 ダイレクトマーケティング。

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