14.手癖
今回、格闘ゲーム、特にスト5やらない人置いてけぼりです。相変わらず反省はしていない。
推奨はしませんが、読み飛ばして15話に行っても一応大丈夫です。
1ラウンド目はお互いゲージも無いので静かな立ち上がり、地上戦自体はかりんが若干上かもしれないけど、豪鬼には飛び道具がある。空中での選択肢、斬空や百鬼などの多さもあって、総合的には豪鬼若干有利かと思っている。
膝としゃがみ中Pを牽制に散らしながら、近距離での顔面に直接当てる波動拳をメインに立ち回る。相手のしゃがみ中Kがぎりぎり届かない位置で、ダッシュや前歩きを刈り取ることが狙いだ。
かりんの前ステップにしゃがみ中Pが噛み合って、そのまましゃがみ中P→弱竜巻→強竜巻のコンボを決める。ノーゲージならこれが鉄板だろう。そのまま前ダッシュして起き上がりに立ち弱Pを重ねて様子見。
アイツが間合いを嫌がって後ろに歩いたところで反射的に波動を出すが、その出かかりに立ち強Kをクラッシュカウンターで貰ってしまう。距離が遠かったので追撃はVスキルの明王拳だけで安く済んだ。といってもVゲージが大きく貯まるので後々に響きそうではあるんだけど。
というかこれ完全に人読みの立ち強Kだ。オレが波動を出したくなるタイミングを完全に把握されてる。さすがにいつもやってるだけあってやりづらい。
起き攻めの固め連携をガードでやり過ごして、しゃがみ中Pを置いたところで外から立ち中Pヒット確認→天狐→天狐を食らってしまう。
リバサはガードで様子見したが投げを通される。迂闊に暴れて死ぬよりはマシだ。
距離があいたのでEX百鬼で奇襲をかける。上をあまり見ていなかったのかこれをP派生でガードさせて、少し前歩きで投げを匂わしておいてしゃがみ中Pをカウンター→立ち強P→波動でダウンを奪って前ダッシュから波動をガードさせる。
お互い流れを掴めない、掴ませないままじりじりとした展開が続く。双方体力残り2割といったところで何気なくした垂直ジャンプに異常な反応速度で空対空が飛んできて、着地の裏周りしゃがみ中Pをガードできずに立ち中P→天狐でKOされてしまった。
……いや、なにそのSNKのCPUみたいな反応速度の空対空は。本当に人間の反応速度なのか疑いたくなったぞ。
立ち強Kのタイミングや空対空の異様な速さから、どうも人読み、一点読みを通されている気がする。全対応しようとしている動きじゃないし、そっちがそうくるなら対策するのみだ。
百鬼への反応が遅かったことから、飛びへの意識配分が低いのかと思ったが、その後の垂直ジャンプ狩りの空対空を見るとそうでもない。間合いでかなり意識配分を変えてそうな気配がする。
レバーをつまんでボールを締めるように回す。ラウンドの合間のクセだけど、オレにとっては闘志を引き出す儀式のようなものだ。JOJO風に言うならスイッチングウィンバックだろうか。
もちろんボールが緩んでる場合は、締めてしっかり固定出来るので一石二鳥だ。
2ラウンド目は開幕波動からスタート。普段ほとんど開幕波動は打たないのでアイツの頭から消えているだろう。1発目をガードされたあと、そのまま2発目を最速で打つ。それがかりんの牽制の立ち中Kの外からヒットしダウンを奪う。
前ダッシュ2回から起き上がりに投げを重ねる。スト4以降、起き上がりの投げ無敵時間が極端に短いので非常に強い行動だ。スト5はガード、ヒット硬直、起き上がり、全て投げ無敵はたったの2フレームだ。つまり30分の1秒。そして最速の通常技は発生3フレーム。そして投げと通常技がかち合った場合、投げが勝つ。
切り返すには投げ抜けをするか、上いれっぱでジャンプ、バックステップ、無敵技などが必要になるが、どれもそれなりにリスクがある。そのせいか、わりと投げられることを必要経費として受け入れているプレイヤーが多い気がする。もちろん常にどんぴしゃのタイミングで投げが重ねられるわけじゃないんで、勇気を出して暴れてみることも大切だ。
無事に起き攻めの投げが通り、体力リードを広げる。前ダッシュからもう一度投げを重ねようとしたところに、最速しゃがみ小パンでの暴れが刺さり、立ち中P→天狐→天狐でダウンを奪われ、そのまま起き上がりにダッシュ投げを通される。言ったそばからこれかよ! これだけで3割以上減ってるってのが辛い。
その後の起き上がりは技が重なるタイミングではなかったので、上いれっぱからEX斬空で仕切り直す。スタンゲージの回復時間稼ぎや、とりあえず状況を良くすることが出来るので本当に重宝する技だ。
EX斬空をガードすることを嫌って下がったかりんに対して、波動を打ってから近づいてゆく。この間合は1ラウンド目にEX百鬼が通った間合いだ。ここでも一度飛びを見せておくことにする。単純な前ジャンプも、百鬼や斬空の可能性がある分反応しづらいのでかなり使える。逆に使っていかないと相手の目線を散らすことが出来ない。どれだけ多くの択を持っているか、見せておくだけでも意味があるのだ。
ラウンド開始時の波動連打がちらついたのかはわからないけど、アイツは牽制に明王拳を出してきた。明王拳には飛び道具相殺判定があるので、一応飛び道具対策として機能するが、今回は悪手だった。大きなスキにジャンプ中Kがめくりでヒット、しゃがみ中P→膝→Vスキル→K派生→百鬼豪掌でダメージはさらに加速した。
この状況からは前ダッシュしゃがみ強Pがその場、後方、両方の受け身に綺麗に重なる。それを匂わせておいて、起き上がりに重ねるのはやっぱり投げという。相手が嫌がって飛んだりグラップしたりするまで執拗に重ねるつもりだ。
これで画面端まで追い詰めた。さてさて楽しい楽しい鳥籠の時間だ。起き上がりに弱P重ねからVトリガー発動。Vトリガー発動状態であれば斬空波動が垂直ジャンプ、後ジャンプからでも出せるようになる。さらに弾が2発出るようになるのが単純に強い。出し得と言ってもいいくらいだ。画面端ではあまり関係無いけれど、さらに起き攻めのセットプレイで表裏の択を迫ることもできる。
間合いを自分から作れないかりんの体力をじわじわと削ってゆく。起死回生狙いの飛びをきっちり昇竜で返して、起き上がりに重ねたしゃがみ強Pが何かにヒット。これがトドメとなった。
たぶん最後は小技擦ってたんだと思うけど、何を出したかは見えなかった。擦るといっても本当に擦ってるわけじゃない。スト5は起き上がりに先行入力が効くので簡単に最速暴れが出来る。先行入力が無いゲームだと本当にボタンを擦ってたりするんで、その名残でそう呼ばれていたりする。
それにしても先行入力が効かないのに、猶予1-2フレのコンボを毎回成功させることを要求してくるスト4やスパ4は異常だった気がする。あれが出来なくて離れていってしまった人はどのくらい居たんだろうか。
やりこみ要素ととっつきやすさを共存させることの難しさというのを考えさせられる。その点ストVはうまく消化してきたと思う。ただ、入力遅延……つまりコントローラーからの入力が反映されるまでの時間が6フレームもあるのが残念だ。このゲームのもっさり感はこれが原因だろう。
3ラウンド目、お互いゲージは2本近くあるが、ともに様子見の後ろ歩きからスタート。かりん側が牽制に立ち中P、立ち中Kと置いてきたので、その戻りモーションを盗んで前ダッシュで距離を詰める。
しゃがみ中Pをガードさせて、ノーキャンセルで波動を打つか迷ったが様子見。そのタイミングで相手が立ち強Kを振っていたので、打っていたらクラッシュカウンターで貰ってるところだった。1ラウンド目にも見た光景だ。
少し後ろに歩いてから牽制の波動、これは特に何もなくガードされたが、ちょうどさっきから飛びが通ってる間合いになる。百鬼から百鬼豪衝で頭の上に乗りにいくと、案の定明王拳を出していたかりんに百鬼豪衝がヒット。ダッシュで画面を押して起き攻めへ。
まあ起き攻めは相手が嫌がるまで投げと決めてるので投げ。やっぱり通る。投げは通してもいいって考えてるのか? 長く考えてる暇はない。起き上がりに立ち強Pを重ねるもガード。基本的には暴れない方針か。
画面端を背負わせた状態で、相手の牽制技がぎりぎり届かない位置で膝を置く。これが踏み込み足払いに一方的に勝つ。不思議だけどなぜか勝つんだよなこれ、判定どうなってるんだろう。膝の特性で強制立ち喰らいになるので、ヒット確認からキャンセル弱竜巻→EX百鬼→百鬼豪刃→立ち強Pと繋いでゆく。
起き攻めはしゃがみ強P重ね。これが当たると美味しいのだけどさすがに当たらない。投げばかりじゃなく、ある程度こういうのも見せておく。本命は投げだけど。とりあえずこの時点で体力半分リードだ。
さて、このガードされた後のちょっと気まずい間合いで様子を見ていたら、相手の歩いて立ち強Kをガードさせられてしまった。当然のようにVトリガー発動からしゃがみ中P→立ち中Pとガードさせられて画面端からの脱出に成功されてしまう。
Vゲージ満タンのかりんと殴り合う気とか全くしないので、バックジャンプで距離を取る。EX斬空がちらつくから無謀な突進はしてこないはず。目論見通りに距離を取り、牽制に波動を出したところに超反応のEX刹歩、これで波動を抜けて天狐→紅蓮拳→紅蓮頂肘→紅蓮楔のコンボを叩き込まれる。
よく見ているし、なんて反応だろう! 驚きとともにワクワクする。
起き上がりにバックダッシュから奇襲の前飛び。やはりこの距離の飛びへの反応が妙に悪い。何かを狙っているんだろうか。単純にこの距離の上を捨てて地上に集中しているんだろうか。飛びを通してしまってでも狙うべき何かがあるというのか。
――オレたちはレバーとボタンを操作して、画面を通して語り合う。そこに言葉は要らない。画面は雄弁で嘘をつかないのだから。
めくりジャンプ弱Kをガードさせて位置を入れ替えて、当て投げで相手を画面端へとご招待。VゲージがあればVトリガーを発動して一気に攻めたいところだけど溜まっていないものは仕方ない。そろそろ暴れを警戒してレバー入れ強Pを見せておく。飛び上がって拳を地面に叩きつける技で、地上技を回避して攻撃出来るしガードさせて有利だ。ただし出は遅いけど。
――アイツと語り合うことが、あまりにも楽しくて。それなのに。
アイツもわかっているもので、こういうタイミングではなかなか手を出してこない。近すぎる距離を嫌って間合いを離す。
――いや、だからこそ。これが最後の対戦になるかもしれない。そんな考えが頭をよぎった。
それは手癖だった。アイツのかりんを画面端に追い詰めて、立ち回りでの垂直ジャンプ、そしてEX斬空波動。さっきまでやけに飛びが通っていた距離。余計なことに気を取られて、考えることを止めてしまっていた。
アイツはそれを見逃さなかった。完璧な反応、いや先読みのEX刹歩。狙われていた――!? 着地にしゃがみ中P→立ち中P→天狐→紅蓮拳→紅蓮頂肘→紅蓮楔のコンボを決められ思わず顔をしかめる。
すでに落ち着きを失っていた。終わりが近づいてきているのがわかる。それなのに、手はまるで鉛のように重く、思うように動いてくれなかった。
起き攻めをしに前ダッシュしてくるのが見えて、思わずしゃがみ弱Pを擦ってしまう。アイツの選択は投げではなく立ち弱K重ね。カウンターでそれを貰って立ち中P→天狐→無尽脚。さらにそこからの起き攻めが待っていた。
スタン値が7割を超えていることを確認して、半ばパニック状態でガードを固める。それを見透かしたかのように、起き攻めの投げを2連続で通されてスタン値は9割を突破した。
決死の覚悟で繰り出したリバサEX昇竜は、実況の言葉を借りるなら。
『きたねえ花火だ』
着地にコンボを決められスタンした豪鬼に、クリティカルアーツまで絡めたコンボを耐えるだけの体力は残されていなかった。
3ラウンド目。一進一退だった筈の攻防は、呆気ない幕切れを迎えた。