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神様、俺の日常を返してください  作者: 夜十奏多
side 伊織
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幼なじみとの再会

魔物が襲いかかる瞬間、既に伊織はフューガルを構え詠唱を唱えていた。

「【瞬速(アクセル)】!」


瞬速(アクセル)】状態では、全ての動きがゆっくりに見えるほど高速化することが出来る。それゆえ、オーガが襲いかかる瞬間を狙うなど楽な作業なのである。後は思い切り強く踏み込んでから跳躍し、オーガの首を切りつけるだけだ。


その瞬間だけ、フューガルの群青色の刀身によって綺麗な道筋ができる。それこそまるで流れ星のように…


オーガを切りつけ、全体重をかけ踏み倒せば女性に届く前に倒すことが出来る。一切の危害を与えないようにする作戦だが、一応の怪我の確認はしておこう。

「怪我はないか、って、あれ?お前ひょっとして綾香か!?」

「い、伊織!?もしかして伊織なの!?」


まさかこんな所で奇跡の再会を果たすとは…1ヶ月前に突然失踪した()()()()


「な、何で伊織がこんな所に…はっ、まさか伊織もあの自称神様に連れてこられたの?」

「それはこっちの台詞だ。1ヶ月前に行方不明になってたお前が何でこんな所にいるんだよ」


連れてこられたのはお互い同じのようだ。ただ違うのは、持たされている武器や防具だ。綾香の防具はほぼ布一枚だ。といってもその格好はまるでプリーストのような格好であったが、武器は伊織のフューガルと違い、魔法使いのような杖であった。


「ここじゃなんだし近くに川がある。そこで話をしようぜ」

「う、うん。わかった」


そういうと、率先して川に向かう。綾香は、先程のオーガの死に様をまともに見ていたせいか顔が青ざめていた。そんな状態でガルフ達の死体を見せるわけにはいかないので、少し上流側を目指していた。


川岸で二人で並んで座り、これまでの説明を始めた。






「なるほど、つまり朝起きたらあの暗闇に居たとこまでは完全に同じな訳だ。違うのはそこからなのか?」


まさか異世界の川岸で行方不明になっていた幼なじみ、笹倉綾香と話しているなんて誰が想像できたろうか。これまでの経緯を話してもらっていてわかったが、この世界に来る直前まではほぼ同じ説明を受けていたらしい。


「多分ね、私が目を覚ました時には泉のそばだったから。ていうか、身体強化されてると言っても女子高生を普通地べたに放置する?」


綾香のフキに対する怒りの論点が違う気がするが放置しておこう。まぁたしかに地べたに放置はないと思うが…


「その杖については何か聞いたのか?防具の事とか」

「一応教えてくれたよ。この杖はローグス。何か魔法を使うときの魔力消費を押さえる能力が付与されてるとかなんとか言ってた。防具に対してはただのコスプレとほぼ変わんないよ」


なるほど、結局武器のチート性能と防具の適当さ加減は相変わらずか…


「魔法は詠唱は教えてもらったのか?詠唱を知らないと魔力消費押さえても意味ないだろ」

「教えてもらってないよ?何か使いたい効果をイメージしてそれに名前を付ければいつでも発動出来るらしいから、需要は分かんないけどね」


これって俺よりチート性能過ぎね?つまり綾香は自分で都合の良い魔法を創れるって事だろ、チーターにも程があるだろ!!


「お前それってかなり需要はあると思うぞ?例えばだが敵を全滅させる魔法をイメージするだけで創り出せるってことだからな?全然俺よりチートじゃねぇか」

「そ、そんなに?へー、この能力そんなにすごいんだー」


自分の能力の便利さを今理解したのだろう。かなり嬉しそうに頬を綻ばせている。


「それにしても、こんな異世界で伊織と会うとは思わなかったなー。ずっと、ずっと独りで寂しかったんだから…」


行方不明になった日から今日まで1ヶ月を過ぎている。その間ずっと独りで樹林をさ迷っていたのだろう。いつ魔物に襲われるかという恐怖感があったのだろう、遂にその緊張の糸が切れ、涙が出てしまっている。


「ちょっと、このまま居させて…」

泣きながらこちらにもたれ掛かってくる。伊織は無言で頭を撫でる。そっぽを向いてはいるが、久しぶりにあった幼なじみとのこの状況は男ならというか、伊織には赤面しないという方が無理難題だろう。


その状況が少しばかり過ぎ、漸く泣き止んだのか綾香はごめん、と謝ってくる。別に謝られることじゃないさと返しはしたが、その赤面ぶりを見る限り説得力ゼロである。


とにかくこのまま樹林のなかに居るわけにはいかない。ここに来る途中に見つけたあの惨状を引き起こした()()()がいつ現れるか分からないからだ。綾香を促しその場を離れようとしたとき、辺りに巨大な咆哮がこだました。


あまりの音に耳を塞ぐと、突然辺りが暗くなった。嫌な予感がし、咄嗟に【瞬速(アクセル)】を使い綾香を抱き抱えその場を飛び退くと、一瞬後で大きな影が先程まで立っていた場所に飛びかかっていた。あとほんのすこし遅ければやられていただろう。辺りに砂ぼこりが立ち上ぼり襲撃者の姿を隠している。


漸く砂ぼこりがはれ、その中から姿を現したのは…

「まじかよ、いきなりこんな()()が出てくるか普通…」


大きな黒い翼に、太くて長い尻尾。その身体を覆う鱗は一枚一枚がサッカーボール程の大きさがある。そう、その襲撃者とは

「ドラゴンかよ、こいつはヤバそうだ」

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