目覚め
あれ、その後はどうしたんだっけ…思い出せないや…
目を開けると、見慣れた木造の天井が見えた。体を起こそうとするが、全身に激痛が走り腕一本動かせなかった。左側に気配を感じ、見るとシスがベッドの縁でうたた寝をしていた。
あぁ、看病してくれてたのかな。状況的に自分で動けるって事も無さそうだし。
窓から入る日射しが眩しい。朝なのかそれとももう昼なのか、というかどれぐらい寝てたんだ?
感覚からして、包帯でぐるぐる巻きにされてるようだ。着物の様な寝間着は着せられているが、その下に包帯が見えている。どんだけ重症だったんだ俺…
痛みで呻いた声が聞こえたのか、犬耳をピクッと動かすとシスが起きた。
「あ!まだ寝てなきゃ駄目だよ健次さん!」
体を起こそうともがいていた俺の肩を抑え、寝かそうとしてくる。
「だ、大丈夫だって、もう平気平気」
空元気だろうが元気の内だ。少し位動かさないと全身バッキバキになった今の身体はどうにも過ごし辛い。
「ホントに大丈夫なの?」
あ、この目はまるっきり信じてないや。ジト~っとした目で疑り深そうに見てくる。
「大丈夫だって、もう痛くもないよ」
寝ながら言っても説得力の欠片も無いが、言わないよりマシだろう。
「へ~そうなんだ~」
肩を抑えていたシスの手に、グッと力が入る。傷口からはずれているとはいえ、激痛に変わりはない。
「いっでぇぇぇー!!!」
余りの痛みに、涙さえ出そうになる。悶絶していると、傍らのシスがやれやれと首を振ると、やっぱり痛いんじゃない、と言われてしまった。
仕方がない、ここはシスの言う通り大人しくしておこう。
「よしよし、それで良いの。待っててね、今お爺ちゃん達呼んでくるから」
満足そうに頷くと、サグワ達を呼びに部屋から出ていった。
一人になった部屋で、さっきの夢を思い出していた。
随分とリアルな夢だったなぁ…俺渡瀬にあんな相談したっけ?
考えに耽っていると、扉の外から足音が聞こえた。気配は3つ、2人はシスとサグワだ。後一人は誰だ?
「目覚めはどうかの?健次殿」
サグワに続いて、シスと後一人、人間の男が入ってきた。
「あぁ、気持ちの良い目覚めとは言えないが、今日はまたどうした?そっちの男は?」
ジロリと、シスと一緒に入ってきた男は見る。
「この男は、君のやられた冒険者グループの副団長じゃ。君に謝罪がしたいと言っておったので連れてきた」
男は緊張のせいか、顔を強張らせている。俺ははぁ、とため息を吐くと、サグワに2人で話がしたいと言って少し出てもらった。
「少しは話しやすくなったか?それで謝罪って?」
少し緊張も和らいだ様だ。男はポツポツと喋り始めた。
「この間はすまなかった。団長を止められなかったのは、副団長である俺の失態だ。謝って済む話ではないが、一先ず俺から謝らせてくれ。本当にすまなかった…」
感極まったのか、あの時の自分達の団長の狂気を思い出したからなのか副団長の男の肩は震えていた。頭を下げているので顔は見えないが、涙を浮かべているかもしれない。




