突然の提案
この村に着いてから、既に1ヶ月が経とうとしていた。もうお馴染みと化していたサグワやシスとの談笑の最中にその提案を受けたんだ。
「ところで健次よ、そろそろ外にも出たいじゃろう。この村に限り外出を許可しよう」
サグワの突然の一言に、飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
「え!?そんなあっさりで良いんですか!?」
まぁ当然と言えば当然である。獣人と人間とは、水と油の様な関係だ。それに文献によれば、約50年前には全面衝突も起こっている。
「そうじゃのう。理由としては、お主武器すら持っとらんのにこの村を制圧出来ると思うかの?」
この質問には、裏にはこんな意味も含んでいるのだろう。丸腰の人間が獣人に勝てるとでも?、と
「無理ですね、そんな状況になったら俺は迷わず逃げます」
肩をすくめ、首を振る。その答えに、満足したようにサグワは笑った。
「ほっほっ、そういうことじゃよ。それに…」
言い終わる前にサグワが席を立つ。自然と目で追ってしまう。扉の前まで歩いていき、ふと立ち止まりこちらを振り返った。
「大事な孫娘が気に入っとるんじゃ。信用に足る人物かはすぐに分かる」
そう言い残し、部屋を後にした。隣を見てみると、シスが尻尾の毛を逆立てて恥ずかしそうにアワアワしていた。可愛い…
「それじゃ、外出許可も出たことだし。シス、この村を案内してくれるかい?」
席を立ち、軽く伸びをしてからシスに手を差し出した。




