差別
「ていうか伊織、普通迷子見つけたら交番に連れてくんじゃない?」
綾香のその一言によって、交番という存在をようやく思い出した。そうだよ、何も歩き回る必要ないじゃん。
そこで、近くの人に王都の警備隊の屯所を聞き、3人であるきだした。途中、これまた女の子の名前を聞くのを忘れていた伊織に対し、綾香の壮絶なため息を頂戴したり、リリーと名乗った女の子と綾香が途中でお腹が減ったようなので買い食いしたりして、屯所の前に着くことが出来た。
「以外と近くにあったんだな」
「そうね、誰かさんが忘れてなかったらもっと早く着いたんじゃない?」
綾香の一言がグサッと伊織の心に突き刺さる。負けじと言い返す。
「でも綾香も買い食いしてたからな、おあいこじゃないか?」
「あら?リリーちゃんの事まで悪く言うつもりかしら?」
綾香の正論カウンターをもろに受け、深く沈み込む。その下ではリリーが私のせいなの?と涙目になっている。
なんとか宥め、屯所の中に入っていく。すると、門番らしき男に女性が縋り付いていた。
「あっ、ママーーっ!!」
どうやらリリーのお母さんだったようだ。二人とも涙を流しながら抱き合い、再開の喜びに浸っている。
そんな中、不遜な態度の者が一人。
「ふん、貧民如きが俺の手を煩わしやがって」
そのボソッと呟いた言葉を、伊織は聞き逃さなかった。
途端にピリッとした殺気を纏い、門番に歩み寄る。途中殺気に気付いて綾香が止めようとするが、伊織は門番にしか集中しておらず歩みを止めない。
あと数歩で門番に届くという距離でピタッと止まると、いつもの調子で話しかける。
「あのー、すいません。実は王都のギルド本部に呼ばれてるんですけど道が分からなくて、案内を頼めませんかね」
別に怒りを納めた訳ではない、攻め方を変えただけだ。
門番は最初、何で俺が…という態度だったが、伊織が冒険者と知るや否や、ガラッと態度を変えた。
この国での権力なら、警備隊の下っ端より下ではあるが、冒険者の方が物理的に強い。それが例えリクであってもだ。
つまり、警備隊の手に負えない物は、冒険者の仕事になる、そこで媚を売っておけば後々甘い汁を啜れるということか。
その考えにも反吐が出そうだったが、グッと堪えて案内を頼む、そこでリリー達と別れ、門番の男が先立ってギルド本部に向かう。
さて、この男はどう処分してやろうか。
歩く事数分程、ようやくたどり着いたギルド本部は、見たことのある建物そのものだった。なんでこれがみつけられなかったんだ…
「着きましたよ冒険者様、ここが冒険者ギルド本部です」
「…ねぇ、伊織。これってアレよね」
「…あぁ。俺も実際には見たこと無いけど確実にアレだな」
「「国会議事堂じゃん……」」
よくニュースで見かける国会議事堂の姿がそこにあった。前にもユニ◯ロに似た服屋はあったが、今回は似ているというレベルではない。ほぼ現物と言って良いだろう。
「え?なに?こういう場所ってこういう建物って決まってんの?」
「知らないわよ。私に聞かないでよ」
案内役の門番をそっちのけにして、二人の会話が続く。
「それでは、私はここで失礼します」
と、門番が元の屯所に戻ろうとする。ここでただ返しては制裁にならない。
「あ、すいません。その前にお名前をお伺いしても良いですかね。案内をしてくれたことを報告させていただきますので」
その言葉を聞き、門番は待ってましたとばかりに振り向き、意気揚々と答えた。
「自分は王都中央警備隊第2屯所門番、ジルと申します」
ご丁寧に所属まで喋ってくれるとは、馬鹿ってこういう奴の事か。
「分かりました。ジルさんですね?それではお仕事頑張ってください」
そういうと、ニンマリと薄気味の悪い笑みを浮かべ、ジルが戻っていく。
一方伊織は、ジルが振り替えるとほぼ同時に笑顔を止め、疲れたような表情を見せる。
「あー、疲れた。あんな感じの奴相手ってこんなに疲れるのな」
「ねぇ、あの門番、ジルだっけ?名前なんて聞いてどうするの?」
綾香のその一言に答えるように、伊織は黒い笑みを浮かべる。その表情でなんとなく察した綾香は、程々にねとだけ言っておいた。
ギルド本部に入ると真っ先に受付に向かい、召集を受けて来た事を伝え、面談室に通された。勿論、王都中央警備隊第2屯所所属の門番、ジルについても多少の脚色をしつつ報告しておいた。
「結局なんなのかね?呼び出された理由って」
「さぁ?でもさっきの受付の人はが言うには、このギルドの本部長直々にらしいし、やっぱりあの決闘の件じゃない?」
ガチャッ
「やぁ、君たち。奇遇だね」
そこに入ってきたの人物に二人とも驚いた。
「「スクルド(さん)!?」」




