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神様、俺の日常を返してください  作者: 夜十奏多
side 伊織
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実力差

「へぇ、リクの冒険者には分不相応な剣じゃねぇか、中々の剣だ。決めた、俺が勝ったらそいつを貰おうか」

なぜかフューガルを勝手に賭けの賞品にし、1人で騒いでいるレクスに少し腹が立ってきた。


「勝手に話を進めないでくれる?誰も賭ける何て言ってないんだけど」

周りの群衆からしたら格上の相手に対して発する言葉では無いだろう。しかしフューガルは神様から貰った所謂神器に値するものだろう。そんなものをこの世界の人間に渡してしまえばそれを巡って戦争が起きてしまう。それはなんとしても阻止しなければ。


「あ?なにいってんの?万が一、いや、億が一にでもお前が勝てばこの俺に勝ったと箔がつくだろ?なのに俺が勝っても何も無いのは不公平じゃん」

つまりはそういうことだ。この世界においてこのレクスに勝ったということがどこまで通用するかは知らないが、伊織自身の実力に箔がつく代わりに、伊織が負ければフューガルを差し出せと

「要するに勝てばいいんだろ?そうすれば文句は無いんだよな」

この男の自己中発言にはとことんイライラさせられる。最初から手加減なしだ、伊織は心に決めた。

「やれるもんなら、な!!」


レクスが剣を構え一歩踏み出した瞬間、突然目の前に迫っていた。魔法の詠唱はない、単純な身体能力だ。目前にまで迫る剣を伊織は、たじろぎもせずにフューガルで防ぐ。


レクスは両手で押しているのに対して、伊織は片手でそれを受け止めている。観客の目にもその異常性は直ぐに分かる。さらには

「凍れ…」

レクスの剣が、フューガルに触れている部分から凍り始める。咄嗟に距離を取ったレクスには流石と言わざるを得ない。それが常人なら気付いた時には腕ごと凍らされていただろう。


「ちっ、能力付与か。益々欲しくなっちまったじゃねぇか」

レクスの目がギラギラと輝く。まるで獲物を目の前にした獣の目だ。

「どうしたんですか?早くかかってきてくださいよ」


「この三下が…調子にのってんじゃねーぞ!!」

レクスの気迫が増し、初擊とは比較にならないほどの剣速で切りかかってくる。その凄まじい攻撃を動体視力を使って時に避け、時にフューガルで流しながら捌いていく。


「す、すげぇ……」

誰かと言わず、唐突に漏れた声に周りの人間も賛同する。

「あ、あぁ。あいつ本当にクウの冒険者なのかよ」

「もしかしたらあいつ…」

「あぁ、レクスに勝っちまうかも…」


とはいっても、伊織にはこれだけの密度の剣撃をかわしながら攻めいる手段がない。ここからは持久戦に持ち込むか無理矢理攻めるかしかないのだ。


「どうしたどうしたー!さっきまでの威勢はどこにいっちまったよ!防戦一方じゃねぇか!!」

伊織は静かに勝機を探っていた。この剣撃の雨が止み、光が差す瞬間を………



実を言うと伊織には既に策はあった。しかし、それを使うと後々面倒なことになりそうなので決めかねていたのだ。


その策とは、【模倣(コピー)】を使うことである。それだけ聞けば面倒なことなどなさそうではあるが、固有魔法持ちの人間の少ないこの世界で【模倣(コピー)】何てチート魔法。利用、悪用しない方が不自然だろう。


レクスの壮絶な剣撃の雨を、のらりくらりとかわしながらここまで考えていたのだ。その余裕がある時点で倒すことも出来る気がするが……


「ちっ、ちょこまかと逃げやがって。そろそろ観念して降参しやがれ!」

息も絶え絶えにレクスが怒鳴る。

「そうはいかないさ、この剣を渡すわけにはいかないからな」

それに伊織は飄々と返答する。


「あーくそ、頭にきたぜ。こうなりゃ制限なんか知らねぇ、全力の全力だ!」

どうやらまだ上があったようだ。なにやら制限があるようだが


「【暴走(オーバーヒート)】!!」

突如として、レクスの体に炎が纏わり始めた。

観客が驚愕の声を挙げ、我先にと逃げ出そうとしている。彼らはこの固有魔法を知っているようだ。

「ゼェ、ゼェ、さぁ、2回戦だ。始めようぜ」

レクスの跳躍の直後足元の地面がひび割れ、クレーターを生み出す。


先程までの剣撃でさえ、常人の比ではなかった。

しかし、今のレクスの剣速は視認することすら難しいほど段違いに速くなっていた。

伊織も全力で避けつつも段々傷がつき始める。


(迷っている暇はもうないかな…)

「ここまでとは思わなかったよ」

「あん?なにがだ」

「いや、独り言だよ。あんたには本気でやらないと流石にヤバそうだ、てな」

「はっ、お前も本気を隠してたのかよ」


「【模倣・瞬速(コピー アクセル)】」

伊織も【瞬速(アクセル)】を使い、更に攻防は加速する。

しかし単純に速さだけが上がる【瞬速(アクセル)】と身体能力の倍増する【暴走(オーバーヒート)】が同列の筈が無く、それでもレクスの優勢は変わらなかった。


「お前の本気はその程度なのかよ、違うだろ?奥の手まであるならここで全部出しちまえよ!!」

更に剣速を上げ、レクスが決めに掛かる。

「じゃ、遠慮無く。【模倣・暴走(コピーオーバーヒート)】」

詠唱後、伊織の体に炎が纏わりだす。


「なっ!?固有魔法は一人1つのはずだろ!なんでてめぇがそれを!?」

レクスの顔が驚愕の色を見せる。

「悪いな、俺のは特別でね」


瞬速(アクセル)】からの【暴走(オーバーヒート)】の重ね掛けにより、伊織の速度はさらに飛躍的に上がる。残像を残しながら一気にレクスの間合いから後退し、タイミングをずらしてもう一度突っ込む。


「これで終わり、だ!」

フューガルの柄をレクスの腹部に叩き込む。ガハッ、と声を挙げレクスが膝から倒れ伏せる。


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