キュウリはついていけない
最終話です。詰め込みすぎた感すごいです。
一番物知りだと言われているセンニチコウの言葉を俺は耳を疑った。二人きりの部屋に耳をつんざく静けさが訪れる。
「それってどういう」
「まあ絶対って確証はないさ」
センニチコウの澄んだ目が物語ってる。嘘じゃないんだろう。鮮やかな紫色の瞳が俺を見つめる。
「古い古い言い伝えだからね。この世界の起源も俺は知らない」
もしセンニチコウの言ってることが俺にも当てはまるのなら、俺たちは…
「そんな顔するなよ、仮にそうだとしても俺の祖先だって同じかもしれないし。ああ、君達と俺達は同じ血が流れてるのかな」
でもこれは何としてでもノールやドフには伝えなくてはならない。帰らなくては。どうやって?
「しょうがないなあ、特別だよ?」
センニチコウは俺の手を引いて部屋の外に出た。「俺だけ知ってる」
ぐいぐいと家から離れて行く。見た目の割に力が強い。細い腕は今にも折れそうなのだが折れない。
「他のみんなには教えてないし、ここを出たら多分もう二度と会えない」
「お前だけ外への道を知ってるってことだな?」
「うん」
「どうして教えない?」
「俺たちの見た目はこの世界の人間とは違うからな。むやみに近づかない方がいいと思ってたら1000年過ぎた」
「1000年?!」
「まあそれも言い伝えだがな」
道を覚えようと試みたが全く経路が頭に入らない。不思議なオーラでもでてるのだろうか。
「ついた」
「ありがとう。また会えたら、な」
誰もいなかった。つくづく不思議な奴だ。ここはアイアンゴーレムに出会った場所。ここまできたら帰れるな。
「どこに行ってんだ!」
「探しましたよもう!!」
クルアが泣きながら擦り寄る。感動の再会を果たすには俺の心は落ち着いてなかった。
「はぁ、キュウリには説教が必要だ。おいで」
いつもならここでノールとの1対1の説教タイムが始まるはずだった。
「何を思い出した?」
「特に」
「何を聞いた?」
「……………」
ノールの目がぎゅっと硬くなる。
「どうして黙るのだ?僕ら、仲間だろう?」
初めてこの言葉に違和感を覚えた。
「逆に何を知りたい」
「さあ?前の記憶が戻ればなって思ってるだけ」
「もう俺疲れたから寝たいい?」
「いいよ、おやすみ」
「やめろ!放せ」
というノールの叫び声が聞こえたような気がしたが俺は寝てしまっていた。
「やあおはよう。早く起きろ、今日はノールとクルアを尋問する」
ドフがいたずらっぽい笑みを浮かべていた。
「は?」
「ノールの不自然さにこの僕が気づいてないとでも?」
ドフはナイフを手に部屋を出て行った。
俺は目を丸くしながら着替えて慌てて部屋の外に出た。ノールの寝ていた部屋のドアを開けるとノールとクルアが拘束されてドフに殴られていた。こんな状態だがひとつだけ、センニチコウに言われたことを確認したくなった。
「元の世界を壊したのは俺たちか?お前たちなのか?」
「やっぱり聞いてたんだね」
「私たち四人は最後の生き残りです、多分」
「流石にそこまで僕覚えてなかったわ!これはびっくり。その話について知ってること、教えてくれよ、全部」
「言ったらどうせお前は」
「私達を殺すつもりでしょう」
「さぁ?」
俺は状況を整理していた。センニチコウの知っていた言い伝えとは、かつて彼らの先祖は元いた世界の彼らが住んでいた星を自ら住めない環境にまで追いやってしまったというものだ。神は怒ってもう二度とそんな愚かなことをさせないために、ループしないようにするために記憶を消して異世界に送り届けた。その異世界とは自分の住む星や世界を壊した罪人たちの子孫集う世界。島流しのようなものだろう。神が、種族を消さない理由は、消したらこの世のバランスがおかしくなるかららしい。そして赤い鎧は神様の送り込んだ監視役。赤い鎧は神様が裁き忘れた重罪人を殺してしまうという。
「ノールてめぇ、さっきか僕の質問に黙りこくるとはいい度胸だ!」
「うっ?!」
鳩尾を蹴られてノールは口から物を出した。
「私たちは、ただ神の怒りを聞いただけなのです!」
「そ…そうだ、この世界に適応せよってな」
「キュウリさんのお母さんがドフ様、いいや不道さんあなたを利用しようとした。それは環境破壊で限界を迎えた地球を救うため」
「でもな、お前は勘違いしてキュウリの母をころしてしまった。それから、覚えてるか?あのオカマだ。マオがその研究を引き継いだ」
「彼は子供時代いじめられてた経験から、実は密かに地球もろとも人間全員を殺してしまう計画を立てて、キュウリさんのお母さんに近づいたのです」
「で、僕とクルアとキュウリは学校にいた時に世界滅亡。笑えないよ」
「黒幕はマオ。スッキリしましたか?」
「どうして俺たちが生き残った?!」
ドフはまだわかる。あれほどの力の持ち主だから。それに世界滅亡の力はドフの力だ。
「神様が適当に選んだんじゃない?」
「メンタル強くないと、いきなり異世界に来て行動できないからひょっとしたら私ら人類最強メンタルとかですかねぇ」
「なんだそれ、かっこいいな」
「で、でも、どうして俺がなにかを思い出すことにあんなに厳しい顔したんだよ?」
はっきりあのノールは怖すぎる。
「僕らは思い出したけど、それを隠していた。だっていつメンタル砕け散ってもおかしくないじゃん、こんなこと」
「ノールさん、すっごく心配してたみたいですよ」
「怖いってーの全く」
こうして俺達は人類最強メンタルパーティ(自称)を正式に結成した。
「本当は世界滅亡の最も重要な原因は環境破壊だから、俺達だって黒幕かもしれない」
ありがとうございました。キュウリ目線の話なので、多分最後まで頭の処理速度が、みんなの会話についていけなかったのでしょう。いや、そういうことにしといてください。