俺は俺の直感を信じる
私は私の直感を信じられないタイプです。
「ちょ、ちょ、嘘だろ」
壊れかけのアイアンゴーレムがいる。多分、この前戦った時に殺されかけたあいつだ。今のメンツじゃまともに戦って勝ち目はない。というよりどうしてあんなデカイものに気付かなかったのだろう…
「キュウリ、やばいよこいつ」
「多分俺、そいつに前に殺されかけた」
「え、え、えええ?!」
「ノール、逃げるぞ!戦略的撤退っっ」
難しそうな言葉を使ってみた。なんか軍師っぽくなったなあ、俺。いや、そんな場合ではないぞ!ノールが死ぬ。まじやばい。
「キュウリ、待ってぇぇぇ」
ノールの動きが壊れかけのゴーレムより速いことを確認して俺は一目散に逃げた。振り返りはしなかった。ノールもあの様子だと無事に逃げられるだろう。
とりあえずかなり走った。そのせいでここがどこかわからなくなってしまった。やばい。来た道を、ゴーレムに気をつけながら戻るしかないようだ。早速分かれ道出現。詰んだかもしれない。というより元々ここは俺らの元いた世界でもないし、分かれ道とか些細なことのような気がしてきた。そんな考えで直感的に道を選び、直感的に道無き道を進み、直感的に曲がった。そして、どう考えても帰るべき町から離れているような気がした。それでも直感的に森の中へ、深い森の中へと進んだ。日が暮れた。それでも俺は森の中にいる。抜け出せなくなったのだ。森から。ただでさえ日の光が届きにくいのに、夜になって完全に真っ暗なのでラスボスでも居そうな雰囲気の森に思えて来た。心の中ででノールが
「何でそんな所へ進むの?根拠は?馬鹿なの?ちゃんと考えてるの?」
と俺を罵倒してきた。そんなことを思うなんてだいぶ不安で疲れてるらしい。
「ノール、俺は俺の直感を信じる」
そんなありきたりのような名言(?)を心の中のノールに呟いた。
夜通し歩いた。夜が明けて、辺りはまた少しだけ明るくなった。足がズキズキ痛む。頭もフラフラする。こんな時はうるさいヒノデでもいいから、イラつくドフでもいいから、誰かと居たい。ヒノデ?ヒノデはどうして何もして来ない?いつもはあんなにいつでもどこでもうるさいのに。契約してるとかいう理由で武器から離れてても普通に話してくるくせに。
森は抜けたが、俺はさらに不安になっていた。足の痛さも忘れる程の不安。
「貴様、どこから来た?」
不安のあまり辺りが見えていなかった。声の主はいつのまにか俺の真横にいて、そして俺に剣を突きつけている。
「あ、その、森の向こうのさらに歩いた町です」
どうしてこんな命のピンチでまともな応答ができたんだ、俺は。しかも敬語だし。
「は?何だと貴様。殺す」
「話せばわかる!」
「問答無用ッ!!」
俺の直感は言っている。やばい死ぬ、と。
直感という言葉を何回使ったでしょう……