火炎拳
技名考えるのが大変ですね。
「ほら、赤い鎧から作ったよ。キュウリのために」
手にちょうどハマりそうなグローブ(にしては硬い)を渡された。こんなもの作ったのかよ、凄すぎるだろ!
「力の込め方によって吹き出る炎の強さも変わるよ」
「俺に死んでほしくはないのか?」
「僕が殺すんだ、それまでに死なれてはこまる」
ドフは俺が他人に殺されてほしくないらしい。
「おはようございます、って、キュウリさん?その手は?!」
「ドフが作ってくれた、赤い鎧からな」
「すごいよ!ドフ!僕も何か役に立ちたいな…」
朝からテンションの低いノール。
「そんなことありません、ノールさんは頭が良いからたくさんの助言で私たちを助けてくれてますよ!」
なにやら良い雰囲気のノールとクルア。もうお前ら付き合えよ。クルアに励まされて赤面するノール。相変わらずの朝だ。
「おい、キュウリ、その赤い鎧のグローブを使ってみたくないか?」
「ああ、気になるな」
というわけでパンをかじりながら郊外の原っぱに出た。人もいないし思う存分試せる。
「キュウリ!都合よく魔物が来たよ!」
「あ、本当ですね。あれは……魔物化した豚ですね。倒したら豚肉ですよ!」
どう考えてもこいつらは戦闘のテンションではないが、肉か、いいな。久々のご馳走か?
「任せとけ、おらあ!」
手に思いっきり力を込める。すると、火が勢い良く出て来た。体全体が炎に包まれたのに苦しくも熱くもない。武器の力なのか?
「フゴゴゴゴ」
力を抜いた瞬間、炎は収まり焼けた豚がいた。
「おお、一発」
ん?これ、殴るための道具だよな?俺は炎を出しただけ。雑魚相手には力を込めるだけで勝てるのか?楽でいいな。
ナイフで豚を解体して少し食べた。宿に戻って、残りの肉は干し肉にした。部屋は肉というかなんというかの臭いが酷い。慣れるまではしんどかった。
「キュウリさん、相手しますよ!」
クルアがもう一度さっきの原っぱに俺の手を引いた。
「さあ!思いっきりどうぞ!」
「火炎拳!」
歯を食いしばって手に力を込める。決めた、とりあえずこの初歩的な技は火炎拳にしよう。
クルアめがけて本気で殴り込む。
「ホーリーシールド!」
クルアのバリアに弾かれた。衝撃が腕に走る。
「痛ってえ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、再開しようぜ!クルアも俺にかかってこい!」
距離を取り直してもう一度。
「火炎拳!」
クルアめがけて突進した。
「ホーリーシールド!」
実はこのホーリーシールドの弱点は、本人の膝から下はシールドを貼れていないことなのだ。さっき見破った。膝から頭は強固なシールドで今の俺ではとても無理。しかし!膝下ならばっ!全力でしゃがみこんで膝下に火炎拳を食らわす。
「うがぁっ!!」
クルアが1メートルほど飛んだ。
「はあっ、げほっ、凄いですね、弱点をこんなに早く見破るなんて」
「まあ、な。というよりお前、怪我してる。悪ぃな」
クルアを背負って宿に帰った。怪我をしたクルアを見てノールは俺を部屋に呼び、オカンの如く怒って来た。
「クルアは嫁入り前なのに!どうするつもりだったの?!!」
「だ、だってあっちがしようって」
「手加減すること知らないの?馬鹿なの?」
「うるせぇ!!!」
30分は続いた。
お読みいただき有り難うございます。