殺したいぐらい憎い
物語が本格的に動き出します。最後までお付き合い頂けたら幸いです。
「へぇ?夢か。どーいう夢だ?」
「まあ、夢っていうか…、僕が見たのは自分の過去!僕はほとんどの記憶を取り戻した。魔物の爪で死にかけた時に」
俺は瞬時にナイフを取り出しドフの首に突きつけた。
「じゃあ死ねよ貴様っ!!!」
「うぉっ?!何でだよ!僕は死にたくない!」
最初からこうするつもりだった。しかし記憶を取り戻していないドフを殺すのは気が引けた。記憶が戻るまでは別人物だと思ってどうにか堪えようと思ったけど、こいつの記憶が戻ったのなら思いっきり殺せる!
「てゆーかさ、キュウリのその反応…なーるほどね。記憶が戻ったんだろ?」
なんでそれを?!こいつ、特殊能力は雨乞いだけではなかったのか…?!
「俺は…、俺の母さんが貴様に殺されたことしか思い出してない。だから死ね、ドフワルジ」
手に力を込める。ドフの首から血が垂れてくる。
「ぐぉああああああ痛だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「うるせぇなくず」
「あのさ、殺したいのは僕の方なんだけど…それだけしか思い出してねぇんだったら待ってやるよ。クソガキィ」
なんのことだ?命乞いかよ。見苦しいなぁ。やっぱりクズはクズだ。
「キュウリの母さんなんか殺したっけ(笑)僕覚えてねぇわ」
「このゴミッッ!何人殺した?答えろよ、殺すぞ?まじで」
「えー?んーとね16人ぐらい?17人目の奴が強くてな…ありゃあびっくりしたわ。17人目の奴にぶっ飛ばされて、んで記憶飛んで気付けばタイホされてた」
マジクズだ。こいつは殺すしかねぇ。生かしておけない。
「その後のことは覚えてねぇのか?このマウス野郎」
ドフはナイフを突きつけられてるくせにやけに落ち着いている。俺のことをマウス野郎だと?むっっかつくなぁ。
「お前に僕は殺させない。僕は死にたくないから」
右腕を目にも留まらぬ速さで捕まれた。そして思いっきり吹き飛んだ。いや、吹き飛ばされた。
「ぁぁぁぁ!痛でぇ!」
「お前に僕を殺すことはできねぇ。だがな、僕はお前が記憶を戻すまで殺す気は無ぇ」
このっ……ゴミが!
「ああああああああ!!!!」
ナイフを握り直して突進した。
「やめろよガキぃ(笑)僕はね人外なんだからさー、抗っても無駄なんだぜ?ばぁぁぁか」
え?俺、いつの間に寝てたんだろう…。
「突進してきて邪魔だから飛ばしたわごめん(笑)これからは共同戦線張ろうぜ?俺のことをバラしたらノールとかクルアとかマオとか八つ裂きにするからな、わかったか」
承諾するほかなかった。ドフとの力の差は歴然としている。逆らえない…。自分の無力さを情けなく思った。
「この僕の本名を教えてあげよう。そうすれば記憶が戻るかもね。不道 極太郎だ。元死刑囚で人外」
人外というもの信じるしか無いくらいドフは…いや、不道は強かった。
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