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好きと言えるのなら  作者: まる
7/40

静か

高校2年の夏。

学校までの道の桜並木は緑になっていた。

朝は眠い。電車に揺られて駅につくと歩いて10分ほどのところに学校がある。

その10分間が晴也は好きだった。木々が生い茂る道を通るため空気が美味しい。そんな場所が東京にあると思うと東京もいい所だと自分で感心してしまう。


『角北…くん!!』

後ろから誰かに声をかけられて振り向く。

声の持ち主は同じ学年で女子バスケ部の狩野(かのう) 美穂(みほ)だった。

『おお、狩野じゃん。どうした?』

同じバスケ部で何回か喋ったことがある。

歩きながら答えて後ろを狩野が歩いた。

『角北くんはさ、好きな子いるの…?』

少し恥ずかしそうにモジモジしながら聞いてきた。思わず『えっ…』と驚いたけれどすぐに

『おう、いるよ?』

と答えた。

『え!…え、えっと…角北くんの好きな子って…誰…?』

『俺の好きな人は桜泉が好き。藤本桜泉(ふじもとさな)。今年の春に転校してきた人。わかる?』

『えっ…藤本さん…って』

『おう。』

『あの子のどこがいいの!?』

狩野は『しまった』と思ったのか手で口を抑えた。

『んー。桜泉は可愛いし運動もそこそこできるし頭いいし…桜泉見てると元気出るから…』

『角北くんはバカだよ!!!』

狩野は声を荒らげると走って行ってしまった。

周りの視線が晴也に向けられる。

『え…』

晴也は意味がわからず教室学校に入って行った。


教室のドアを開けると桜泉はいつものように本を読んでいた。

桜泉は相変わらず友達がいない。女子と話しているのをあまり見たことがない。

『桜泉〜おはよう!』

晴也は笑顔で桜泉に話しかけた。

桜泉もおはようと手話で伝えた。

『(いつもより元気…ない?)』

いつもよりも暗い顔の桜泉を見て晴也は疑問に思った。

『桜泉、大丈夫?何かあった?』

桜泉はビクッとすると視線を本から晴也に移して『大丈夫だよ。』と手話で見せると苦笑いをした。

『嘘つけ〜!何かあっただろ〜』

晴也はいつものテンションで桜泉にちょこちょことちょっかいを出した。

桜泉は笑った。けれどその笑顔はなにか違った。

『…何かあったら言えよ…?』

晴也は心配だった。言葉で気持ちを表せないからもっと心配だった。


昼休みになるといつものように桜泉と食べようとした。だが

『ごめんね。今日は図書委員で仕事があるの』

と手話で晴也に伝えた。

『そっか…了解!委員会、頑張れ』

晴也はそう伝えると仲のいい男子のところに向かって話の輪に入っていった。

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