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episode 06 ―出会い―

 薄荷ラムは、サバゲーが大好きな女子大生だ。普通の、という接頭語は求めない。サバゲーが大好きな時点で、普通とちょっと逸脱しているという自覚があるからだ。薄荷ラムは、ちょっぴり普通ではない女子大生なのだ。

 初めての出会いは、高校生の時だ。父方の祖父は割とその周囲一帯の大地主で、いくつかの山を保有しているのだが、その山で遊びたいという若者連中がいるので許可したということがあった。条件は、山道の整備だ。気の弱そうな連中だったと言っても、見ず知らずの若者たちである。ラムはギックリ腰をやらかした祖父に代わって、その遊びの監督役として趣いたのだ。


 彼らの言う遊びというのが、すなわちサバイバルゲームであった。


 迷彩服の男たちが構える、黒塗りの無骨な銃器の数々。それが例えおもちゃであったとしても、ラムはそれらを見たときに、言いようもない胸の高鳴りを感じた。全身がかぁっと熱くなるような、それでいて一気に冷たくなるような、頭のぼうっとする感じ。上手く表現できないが、これは恋だ、とラムは思った。

 およそ遅咲きとも言える薄荷ラムの初恋の相手は、東京マルイから発売されるコルトM4M1カービンという電動ガンであった。言わずとしれた米軍のショルダーウェポン。そのモデルガンである。その後、ラムは実際のアサルト・カービンを試射している動画を見てみたりもしたが、彼女は電動ガンがBB弾を吐き出すときに響かせる、『きゅるたたたたたた!』というクールなモーター音が好きなのだとわかった。


 かくして薄荷ラムは、同年代の女子たちと同じように、ネイルやアクセ、アパレルファッションに熱中するよりも、男臭い電動ガンの世界に没入していくようになったのである。


 長く、険しい道であったと、言わざるを得ない。なんだかんだ言っても、サバイバルゲームは原則として男の世界だ。そこに女がひとりまじるだけで、異物感が凄まじい。高校の時に所属していたサークルでは、彼女をめぐってのいさかいが起きたりもした。正直な話、気苦労がある。

 それでもラムは、数万円もはたいて購入した愛銃を手放す気にはなれなかった。黒光りする無骨なカービンの冷たい手触りはいつでも脳幹を刺激したし、腕になじむようなずっしりとした重量感は安心する。


 大学でも彼女は、サバイバルゲーム同好会に入った。初めての女子部員ということで当初は困惑されたが、彼女が愛用のM4A1を器用に取り回す様を見せれば、困惑は歓迎に変わった。


 ラムは別に、衆目麗しい少女というわけではない。この歳になってメイクのひとつも覚えないし、うねり癖のある髪は原則としてぼさぼさで、頬にはそばかすも残っている。服だって露骨に迷彩柄のものを好んだし、おかげで大学の女子たちからは浮いていた。

 ただ、これで自分が異性として意識されなくなったかといえば、そんなことはない。この飾りっけの無い出で立ちが、逆に『いい』のか、それとも単に女であればなんでも良かったのか、とにかくサバゲー同好会においても、ラムを見る目はいつしか単なる『同好の士』ではなくなりつつあった。


 オタサーの姫、という言葉がある。ラムは別に『姫』ではない。

 だが、多くのサークルメンバーは、部長である彼女のことを『軍曹』と呼ぶ。


 本質的には同じような気がしていた。


「ああ、軍曹、帰るんですか?」


 サークル棟の一室を出る際、ラムはそのように声をかけられた。


「午後の講義が休講になったんだ。今日は帰る」

「そうですかー。そういえば、月末の申請はどうなりそうです?」

「ああ、あれな。たぶん通らないぞ」


 目の前の彼が言っているのは、つまりサバゲー同好会が競技をプレイするのに必要な、会場の確保のことだ。

 最近、徐々に市民権を獲得してきたとは言え、未だにサバイバルゲームに対する風当たりは強い。銃のおもちゃを持って、戦争ごっこをやるという行為自体が、この平和な日本の中では奇異で理解しがたいものに見えるらしい。おかげで、戦場ひとつ用意するだけで一苦労だ。


 ラムはサークルの部長として、関係各所に申請書を提出するなどして会場の新規開拓に尽力していたが、なかなか上手くいくものではなかった。当然、サバゲー用に誂えられた専用のフィールドというものも、あるには、あるのだが。


「となると、当分はやっぱりゲームの中ですかねー」

「そうだな。だがミライヴギアを買えていない部員も多いんだろう?」

「まだ半分くらいは買えてないですよ。だって軍曹の持ってるカービン2丁分の値段でしょ?」

「アクセサリー類を含めればもっといくが……。まぁ、そんなところだな……」


 最近話題となっているVRGS〝ガンサバイブ・プラネット〟の話になる。自分の意識を仮想現実に没入させて戦う体感ドライブ型のガンシューティングゲームは、サバイバルゲームにも通じるところがあり、同好会でもかなり話題になった。

 ゲームの中のM4A1は、電動ガンのような軽快な発射音ではないのが不満だし、正直血しぶきの走る必要以上に悪趣味なエフェクトはラムの趣味ではなかったが、それでもサバゲーでは実現できないようなアクセサリーの活用、例えばM203が巻き起こす擲弾グレネードの炸裂とその熱などには、わずかながら心を躍らせた。恋人の知らない一面を見せつけられたような気分だ。


 ともあれ、ガンサバイブ・プラネットを遊ぶには専用のハードが必要だ。これがなかなか高い。多くもないバイト代をやりくりしつつ、マルイやタナカの新作エアガンを吟味するサバゲー同好会のメンツには手痛い出費となる。

 が、仮想世界の中でもドンパチできるとなれば、今回のようにフィールド確保が上手くいかなそうな時であっても、サバゲーごっこに興じることはできる。そう思ったラムは、営業終了を間近に控え、現在業務用ゲームハードをタダ同然で譲ってくれるという、気前のいいゲームセンターの店主と交渉の真っ最中であった。

 同じくその業務用ハードを求めるFPS同好会と対立したが、最終的に『ゲーム内で戦い、勝った方が権利を有する』という着地点に落ち着いた。


 現在、ラムも勝つために様々な方策を探し求めている真っ只中だ。何度もゲームの中に潜っては、現実のサバイバルゲームとの違いを肌で実感し、ゲーム特有の戦術を打ち出そうとしているわけだが……。


「今日も、アカメは来ていないのか?」

「なんか、一週間前のショックがまだ尾を引いてるみたいですね」

「ふぅん……」


 アカメというのは、同じサークルメンバーの赤城瞳のことだ。サバゲー同好会の中では、ラムを単純なる銃器愛好家としてみなし、接してくれる貴重な男である。ドラグノフ狙撃銃を愛好する無口なスナイパーで、彼もまた、FPS同好会との決戦に向けて実直な練習を積んでいると聞く。

 一週間ほど前、ガンサバイブ・プラネットをプレイ中、ひどい暴言を吐かれて以来心に傷を負ってしまい、自主休講を続けているという。見舞いに行こうかとも思ったが、そこまでされるほどではない、というのが本人の弁だ。

 今日はマルイの電動ガンから新作が出るということだったので、ガンサバイブ・プラネットの近況も聞きつつ、一緒に見に行こうかとも思っていたのだが。落ち込んでいるなら仕方ない。一人で行くとしよう。


 ラムは室内のメンバーに軽く手を挙げて、部室を出る。彼らはガタタと椅子を蹴りたて、直立不動の敬礼で、薄荷ラム軍曹を見送った。






 赤羽駅付近にあるミリタリー系ホビーショップ。ラムの行きつけの店はそこだ。大学から駅へ向かう道とは少しずれているものの、帰りがけにいつでも寄れる気軽さと、コアな品揃えが魅力だった。この店のオーナーは、エアガン専用の射撃場であるシューティングレンジの運営も行っており、射撃の練習にももってこいだ。

 ラムは展示品の新作モデルを手にとって、その感触を確かめていた。金属製のフレームは手触りが心地よい。これはショットガンモデルで、カービン銃をこよなく愛するラムからすれば本命ではないが、それでも出来のいいものはついつい欲しくなってしまう。


 いや、今はダメだ。お金がない。悔しい思いをしながらも、ラムはショットガンを戻す。


 ふと、店内に目をやると、棚にかけられた銃器の数々に視線を走らせる、一人の女の子が目にとまった。

 こんなサバゲー専門店みたいなホビーショップに、女の子とは珍しい。彼氏に連れられて、退屈そうにしている子なら何度か見かけたことはあるが、彼女はどうやら、自分から銃を捜し求めているように見えた。ラムはじろじろ見ないようにしながらも、意識をそちらに傾ける。


 自分とは違う、随分と垢抜けたギャルっぽい子だった。髪の色はだいぶ赤っぽい茶髪だ。服装はシンプルだがおしゃれで華がある。当然、こうしたミリタリー系の店にそぐう出で立ちではなく、だいぶというか、かなり浮いていた。

 よく見れば男連れらしいが、彼氏というわけではなさそうだった。男の方も負けず劣らずチャラい感じだが、まぁ、チャラチャラしつつもミリタリーが好きな男は、割といる。


 ラムは意を決した。見た目のオシャレさに若干二の足を踏むが、それでも、同好の士かもしれないのだ。しかも女性だ。


「銃を探しているのか?」


 声をかけると、彼女はくるりと振り返る。


「店員さん?」

「いや、客だが」


 こほん、と咳払いをして、ずらりと並ぶモデルガンを手で示す。


「買いに来たのは初めてか?」

「うん。あんま銃には詳しくないんだけどねー」

「む、そうか」


 のんびりと言う彼女の声に、ラムはちょっぴり肩を落とす。だが、どうやら銃を買いに来たのは確からしい。いかなる経緯で興味を持ったのかは不明だが、相手が初心者なら、丁寧に教えてあげることだってできる。サークルではそういったポジションが求められているからこそ、『鬼軍曹』なわけだが、薄荷ラムは本来そこまでツンとした娘というわけでもない。

 ひとまず、壁にかかったいくつかの電動ガンのうち、自分が愛用しているひとつを手にとった。東京マルイのコルトM4M1カービン。ラムは未だに、これがアサルト・カービンの傑作モデルであると信じて疑わない。


「少しばかり大きいが、こいつはどうだ。突撃銃としては王道だし、カスタム用のアクセサリーはいろんなところから発売されているから、自分の好きなようにカスタマイズできる」


 そうでなければ、と、次に手を取るのは、やはりマルイから発売されているレシーライフルだ。


「アメリカ海軍の特殊部隊が使う、偵察狙撃ライフル型のモデルだな。ダイキャストの重さと冷たさが手にがっちりはまるぞ。基本、狙撃銃は門外漢なんだが、レシーライフルはこのライトレイルがいかにも軍用ミリタリーといった感じで好きだ」

「んー……」


 彼女はあまりよくわかっていないような、曖昧な返事をする。連れのチャラ男は周囲をきょろきょろと見渡していた。

 変な語り方をしてヒかせただろうか。と、ラムが不安になりはじめると、彼女はハート型イヤリングを指先でいじりながら、このようなことを尋ねてきた。


「あの、えっと……、れみんとんえむななひゃく、ってのは、あるの?」

「なんだ、もう目当ての銃があったのか」


 ラムは若干拍子抜けしつつも、2、3歩離れたところにある、いかにも狩猟用ライフルといったスマートなフォルムのガスガンを手にとった。タナカのM700だ。現行のモデルガンの中では、レミントンM700にもっとも近いフォルムをしたものがこちらになる。ボルトアクションの装填方法も完全再現だ。

 M700を軍用に改造したものがM24になるのだが、こちらをモデルにした銃は残念ながら売り切れ中のようだった。ラムの掲げた銃を見て、彼女は『おお』と感嘆の声を漏らす。


「これよ、これ。多分これよ。ほかのと見分けつかないし、全然自信ないけど……」

「良かったっすねぇ。杜若さん」

「うん。あっさり見つかったわねー。ありがと!」


 カキツバタ、と呼ばれた彼女は、ライフルを構える仕草を見せてから満面の笑みでそう言った。少しばかり、ムズ痒い気持ちになる。


「しかしなぜM700を? サバゲーデビューでもするのか?」


 わずかな期待を込めて聞いてみるのだが、カキツバタはあっさりとかぶりを振った。


「ちょっとゲームの中で何度か使ってるうちに、愛着が湧いてきちゃってねー。欲しくなってきたんだけど、これ、いくらくらいすんのかしら」

「だいたい4万くらいだな」

「高ッ!!」


 驚愕に目を見開くカキツバタである。高いだろうか。いや、高いな。一般的な感覚からすれば。


「てっきり5000円くらいで買えるものだと思ってたわ」

「駄菓子屋の銀玉鉄砲じゃないんだぞ。まぁ、タナカのM700は命中精度は悪いし、ガスガンだから冬場は使えないな。ただ見た目の出来はいいし、ボルトアクションもしっかり再現できるから、コレクターアイテムとして持っておく分には悪くない」

「ふーん。このボルトアクション? っての? これ楽しいわよね」


 カキツバタは、ライフルの遊底ボルトをがちゃがちゃと弄びながら言う。そう、そのアクションは実に楽しいし、癖になる。ただ、電動ガンの自動装填が主流となるいまの戦場では、ただのロマンにしかならない。サバゲーの特色上、一発ずつしか撃てないスナイパーライフルではやりにくいということもあって、今までのイベントでもボルトアクション式ライフルを使っているプレイヤーは、ほとんど見たことがなかった。


 がしゃん、がしゃん、と薬莢の排出と再装填を行いながら、カキツバタは天井を見上げる。


「うーん、4万かぁ……」

「小物を考えるなら、5万、6万は覚悟したほうがいいぞ」

「たっかいわねー。月の洋服代の半分かぁー……」

「ふ、服にそんなに使うのか!?」

「えー、普通じゃないの?」


 カキツバタはがしゃん、とボルトを押し込んでから、ラムを見た。


 普通、普通か。確かに、世間一般で言う女子大生というのは、そんなものなのかもしれない。カキツバタは見る限り非常にオシャレだし、メイクの仕方も髪の整え方も中途半端にしか知らない自分とは、やはり価値観が違うのかもしれない。自分は服だって、大半がミリタリーファッションなのだ。


「ミリ系もいいわよねー。あんま意識したことなかったけど」


 カキツバタは、そんなラムの迷彩服を眺めて頷いた。


「やっぱミリタリー系だとAVIREXとかかしら。goaやEditionもミリっぽいけど、そこまで本格的な感じじゃないのよねー」

「あ、あび……何?」

AVIREXアヴィレックス。ファッションブランドだけど。知らない?」

「ま、まったく……」


 いよいよもって、ラムの顔からは火が出る勢いだった。銃について賢しげに語った自分が徐々に恥ずかしくなってくる。何がミリタリーファッションか。いまの自分が着ている迷彩服など、ファッションとすら呼べないものではないのだろうか。


「そっかぁ」


 カキツバタは、嘲る様子もがっかりする様子もなく、ただそれだけ言って、タナカのM700を棚へと戻した。横のチャラ男が声をかける。


「買わないんっすかぁ?」

「ちょっとねー……。さすがに5万6万はキビしいわねー……」


 その横顔はやや悔しげに歪んでいた。どうやらこのオシャレな娘は、ラム達の世界の象徴であるガスガンを、割と本気で欲しがっていたらしい。既に彼女に対してだいぶ気後れしていたラムではある。そこからさらに、踏み込んだ質問をするには少し勇気が必要だった。


「カキツバタ、」

「うん、あたし?」


 いきなり名前を呼ばれ、彼女は驚いたように顔を向ける。


「M700のどこがそんなに気に入ったんだ」

「どこって、どこかしら……」


 いきなりぶつけられた突飛な質問に、彼女は視線をさまよわせる。


「愛着が湧いただけだから、どこが、って言ってもねー……。ボルトアクションが気持ちよかったっていうのもあるけど、あとまぁ、やっぱ可愛いわよね。スマートで」

「そ、そうか……」


 正直なところ、M4A1の重厚なフォルムを好むラムとは、相容れる好みとは言えないかもしれない。だが、カキツバタが曲りなりにも銃のフォルムを〝可愛い〟と形容したことに、どこか安心感のようなものを覚えていた。住む世界が違う人間のように見えて、彼女は、ラムの世界に大きな理解を示してくれている。


「カキツバタ、実は私も家に同じ銃を持っているんだが」

「え?」

「迷惑じゃなかったら、貸そう。大事に扱ってくれそうだ」

「えー、で、でも悪いわよ? あたし達初対面じゃん」


 カキツバタは別に、ヒいているわけではないらしい。純粋に遠慮しているようだった。ならば、と、ラムはもうひと押し、正直な気持ちを加える。


「こういった分野に興味を持ってくれる女の友達が、あまりいないんだ。詳しくなれとは言わないが、その、よかったら、その、エアガンを通して……」

「あー、友達になりたいのね」

「ま、まぁそうだな……」


 ぼさぼさの髪を掻きながら視線を逸らすと、視界の外側で、カキツバタはあっさりとこう言った。


「いいわよー」

「い、いいのか!?」

「まぁ、あたしもほら、自分の世界に興味を持ってくれる人がいるって大事だなって思うし」


 カキツバタの言葉には妙な含みがある。彼女のようなオシャレで社交性の高そうな人間に、自分と同じような過去があったとは思えないのだが。

 いや、今は、すぐさま頷いてくれたことに対して謝礼を述べるべきだ。ラムはまたも咳払いして、カキツバタに向き直る。


「薄荷ラムだ。よろしく」

「杜若あいりよ。よろしく」


 差し出された彼女の右手は、フィンガーレスグローブ越しでもわかるほどに柔らかい。やはり、女の子の手とはこうしたものでなければならないのかなぁ、と思っていると、彼女の脇に立っていたチャラ男がこんなことを言った。


「じゃあ、杜若さん、おれぇ、これからバイトなんでぇ」

「あ、そうだった。ありがと茶良畑くん。付き合わせちゃって」

「別にいいんでー。おれ、杜若さんのことガチリスペクトしてんでー」


 チャラ畑、と呼ばれた男(すごい名前だ)は、手をひらひらと振ってショップを出て行く。その背中を見送ってから、ラムとあいりは、


「で、これからラムんち行くの?」

「あ、ああ。そうだな……。迷惑じゃなかったら、その後この店でまた射撃練習しないか。シューティングレンジの予約は取っておくから」

「シューティングレンジってのがなんなのかわかんないけど、いいわよ別に。夕方くらいまでならずっと暇だし」


 という流れになった。連れ立って出て行く女2人を、店内のまばらな客が物珍しそうに眺めている。


「ゲームでM700を使ってると言ったてたな。スナイパーなのか?」

「んー、まぁね。ザコだけど」

「私の知り合いにも凄腕のスナイパーがいるから、今度紹介しよう。今は、なんだか過去の古傷をえぐられて精神的に参ってるらしいんだが……」

「そんなことされたの? 酷いコトする奴がいるのねー」


 痛ましい顔を作るあいりの横顔を見て、やはり自分も、少しオシャレに目覚めたほうがいいのかなぁ、と、ラムは思った。

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