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episode 12 ―赤い鼓動―

「やっほー……、お?」


 あいりが久しぶりに服飾デザイン同好会の扉をたたくと、その中では正座をしたローズマリーと茶良畑が厳粛な態度で相対していた。床に置かれたピコピコハンマーとヘルメットを挟む形である。何をやっているのか、と、あいりは問いただそうとしたが、やめた。見ればだいたい想像はつくからだ。


「『かぶって・たたいて・ジャンケンポン』をやっているのです」


 聞いてもないのに、ローズマリーが厳かな声で告げた。


「そ、そう……。成績は?」

「351対160で私の優勢です。ですが、ここ100回ほどでチョリッスが追い上げを見せてきました。人間の成長速度とは恐るべきものです」

「まぁ、あんたには言われたくないと思うんだけど。えっと」


 ぐるり、と室内を見回す。ここに来なくなってから数日、特に変化らしい変化は見当たらない。当然か。以前は雑多であったあいりのデザイン机も、綺麗に片付けられたままだ。あれを見ると、きゅう、と胸を締め付けられるような感覚があった。

 見渡す中で、ふと、茶良畑と視線が合う。あいりが片手をあげて軽く挨拶すると、彼は珍しく少しの躊躇を見せた後に、しかしいつもどおりの挨拶を返してくれた。どうしたんだろう、と、あいりは心の中にしこりを作る。


 積み重なった違和感が、次第に大きくなっていくような感覚があった。


「さて、」


 ローズマリーは立ち上がった。あいりが来たことで『かぶって・たたいて・ジャンケンポン』は中断となったらしい。話を聞くに相当な長時間、白熱したバトルが繰り広げられていたはずだが、ローズマリーは別段足を痺れさせた様子も見せない。


「おかえりなさい、でしょうか。アイリ」

「え、ええっと。あの。うん。ただいま」


 彼女の言葉の意味をはかりあぐね、あいりの返事は曖昧なものになる。


「実はあの、ガンサバイブ・プラネットの試合のことなんだけど……」

「はい」

「マリー達は、結局、FPS同好会の助っ人として、出る……のよ、ね?」

「今のところは、その予定です」


 あいりは、ローズマリーとの付き合いが、決して長いわけではない。知り合ってからせいぜい2年とちょっとだ。だが、それなりに濃密な付き合いはしてきたつもりであるし、彼女の平坦な表情と口調の裏側にどういった感情が潜んでいるのか、ある程度は理解できるつもりだった。

 だが、あいりは、この時のローズマリーの心情を読めない。むしろ、こちらの内心を見透かした上で、あえて意味のない言葉を吐いているようにすら受け取れた。若干、息苦しくなる。


 自分は何のためにここに来たのだっけ。


 ああ、そうだ。サバゲー同好会のことを伝えて、今回の戦いから手を引いてもらうためだ。50万なんて手にしてもしょうがないし、今の自分では、とても使う気にはなれない。フランスにいけないのは残念だけど、まぁ、今は、身の丈に合うことをするべきだと思うし、


「アイリ、コクーンが1台1000万で売れるとしたら、どうしますか」

「は?」


 唐突にそのような話題を切り返し、あいりは間抜けな声を出してしまう。


「売れるのです。昨日、偶然親方の店に行き、流通ルートを確保してきました。親方は、信用できる相手からしか買い取らないと言っています。信用できる相手。すなわち私たちです。1台1000万。件のゲームセンターには12台ありますから、総額で1億2000万ほどになりますね。50万なんて、はした金です」


 ローズマリーの口調には、どこかこちらを、試すような色合いが滲んでいた。感情の伺いしれない瞳に正面から見据えられ、あいりはたじろぐ。その間、茶良畑はひとことも喋ることなく、茶を淹れていた。

 あいりが最初に考えたのは、やはりサバイバルゲーム同好会のことだ。コクーンは維持費用がかかるし、オンライン接続にも許可がいる。あんな面倒くさいマシンであれば、とっとと売り払って通常のミライヴギアを購入し、残った代金で新しい電動ガンを買うなり、おしゃれをするなり、スケールのでかい話をするなら、サバゲー用の土地を購入するなり、すればよいのでは、ないだろうか。


「アイリ」


 そのように考える彼女をたしなめるように、ローズマリーは強い口調で言った。


「私が尋ねているのは、あなたが、どうするかです。他の誰かでは、ありません」

「そ、そんなこと言っても……」


 どうしろというのだ。彼女は。あいりがまごついている間に、茶良畑はお茶を淹れ、ティーカップを運んでくる。


「アイリ、あなたが現状を維持したいというのなら、それでも良いのです。モラトリアムとはそうしたものでしょう。ですが、そうするにあたり、あなたはひとつ決めなければなりません」

「やめて」


 ローズマリーの言葉に対して、自然にその言葉が漏れていた。必死に目をそらそうとしていた問題を、目の前につきつけられようとしていることだけは、はっきりとわかったのだ。それを受け入れるにせよ、突っぱねるにせよ、一度は問題を直視せざるを得なくなる。そしてそれは、あいりの心に致命的な変容をもたらすだろう。今のままでは、いられなくなる。


 それは、非常に恐ろしいことだった。だが、ローズマリーは続ける。


「あなたがサバイバルゲーム同好会に新たな居場所を見出しているというのなら、それで構いません。あなたが、杜若あいりとして、彼らにコクーンを提供し、あるいはその売却金を提供しようというのなら、それでも構いません。ですが、アイリ、それがあなたが本当にしたかったことかどうかは、吟味する必要があります」

「やめて……!」

「心変わりというものはあります。あなたが本当にしたかったことを中断して、彼らと大学生活を楽しむ方を優先したいというのなら、それもいいでしょう。今、本当にしたいことがそちらであるというのなら、それも、私は、応援します」

「やめてよ!」


 あいりは拳を握り、怒鳴り散らすかのような大声をあげた。


「あたしが逃げてるって言いたいの!?」

「語弊を恐れずに言えばそうですが、私は逃避が悪いことだとは思っていません。応援すると言いました。彼らに、サバイバルゲーム同好会に、力を貸してあげたいのでしょう?」


 ローズマリーの言葉は、おそらくは本心からだ。あいりが『そうしたい』と言えば、彼女は友人として協力してくれるだろう。だが、何故かあいりは、自分自身が責められているような心境になっていた。いや、何故か、ということもない。あいりを責めているのは、あいり自身ではないのか。


 思考の迷宮に入り込んだあいりに、今度は茶良畑の方から声をかけた。


「杜若さん、一番悪いのはぁ、あれっすよ。マジで。中途半端なことだと思うんすけど」


 だから、なんだ。


 握った拳に更に力がこもる。つけ爪が、ぎゅっと手のひらにくい込むが、あいりの心に痛みを感じる余裕などありはしなかった。ローズマリーの言葉を、茶良畑の言葉を、整理するのに時間がかかる。

 中途半端がいけないなんてことは、わかっている。今の自分は中途半端だ。何もかも途中で投げ出して、居心地のいい世界に浸っている。そんなことはわかっている。


 でも、だから、なんだ。


 ただの女子大生でしかない杜若あいりに、一体何を求めているのだ。あたしは、そんな大層な人間じゃないのに。才能がなくて、ちょっと辛いことがあったら逃げ出すような弱い人間なのに。どうしてそんな酷な二択を突きつけるのか。

 いっそ言ってしまおうか。すべてを捨てて逃げてしまいたいと。背負っているものを放り投げて楽になりたいと。このちっぽけな才能に、自分が抱く夢は大きすぎるのだと。服飾デザイナーへの道は、長く険しい。杜若あいりに、フランスは遠すぎる。途中で諦めても、良いじゃないかと。全部投げ捨てて、大学の進級ひとつを愚直に追い続ければ、人並みの人生は全うできる。


 言ってしまおうかと思った。言ってしまいたかった。言って楽になりたかった。


 だが、


 夢を捨てる。


 その一言が、どうしても喉から上に通らない。


「もう、わかんないわよ……」


 あいりが絞り出すのは、辛うじてそのひとことだ。


「あたしが、何をしたいのか。できることなら、今の中途半端な環境で、夢とも現実とも適度な距離感を持って、ダラダラ楽しみたかったけど、それじゃあ、ダメなんでしょ」

「はい。残念ながら、今は決断を要します」


 ローズマリーは静かに答えた。


「私たちがFPS同好会の助っ人として50万を持ち帰っても、アイリがサバゲー同好会にコクーンの売却ルートを伝えその手伝いをしたとしても、アイリは後戻りができなくなります。自分で選択をせず、流されるままに進んだ道ならば楽でしょう。ですが私は、アイリに後悔をして欲しくはありませんので、今ここで、進む道を決めてもらいます」


 夢を追いかけることを選べば、あいりは自らの才能と改めて向き合わねばならない。それを言い訳に、停滞することが許されなくなる。自らの魂を振り絞って、戦わねばならなくなる。きっと、辛い戦いだ。

 夢と向き合うことを選んでも、別に、サバゲー同好会のメンバーとの接触を絶たれるわけではない。ならば、今はこちらを、選んでおくべきなのか……? そんな、中途半端な選び方で、果たして本当に良いのか?


「ずっと、ワケのわかんない不安感だけがあんのよ」


 自分の気持ちを整理するためにも、あいりは震える声で心情を吐露した。


「みんなと遊んでいるときも、ずっと、このままじゃいけないはずなんだっていう、焦りだけがあんのよ。後ろから、じっと誰かが尾行けてくるような、変な感じがあって、ラム達と遊ぶのは楽しかったけど、どっかに、なんか、引っ掛かりが残ってて……。だから、茶良畑くんの言うような、中途半端が良くないっていうのは、そういうことだと思うんだけど……」

「なるほど」


 ローズマリーは深く頷いてみせる。


「では、アイリの心は、最初から決まっていたということですね」

「え?」

「ですが勇気がなく、踏ん切りがつかなかった。決断できなかったのは、そうした理由です」


 彼女は何やら一人で納得しながら、あいりのデザイン机の方へと向かっていく。


「私は、アイリの後ろからついてくる人物が誰であるのか、心当たりがあります。結局、アイリは二度目の決意をしたあの日から、もう走り続けるしかなかったということでしょう」


 そう言って、ローズマリーは机の引き出しを開き、中に敷き詰められた紙の束を物色し始める。一体、彼女は何を言っているのだろう、と、あいりは思った。後ろからついてくる人物。もちろんそんなものは単なる錯覚で、あいりの自覚する焦燥感を例えた、表現のひとつでしかない。だが、ローズマリーは明確に『それが誰であるのかわかる』と言った。


 果たして本当に、あの焦燥感の影は、明確な『誰か』であるのか?


「なので、アイリ。私にできることは、あなたが燻らせている思いを、教えてあげることだけです」


 困惑するあいりに、ローズマリーは続ける。その手には、一枚の紙を持っていた。


「何を言いたいのかわかんないけど、マリー。あたし、たぶん、あんたが思ってるような立派な人間じゃないわ。結局、のろのろだらだらしてる、イモムシみたいな奴なのよ? ゲームの中だって現実世界だって、イモムシみたいな奴なのよ……?」


 それは、遅々たる動きで、実にみっともない。あいりの生き様はイモムシそのものだ。ゲームの中でも、地面に這いつくばってのろのろ動く。芋スナなんて称号は、そんな自分にぴったりである。あいりは自虐に口元を緩める始末であった。


 ローズマリーは頷いた。


「そうですね。アイリはイモムシです。小さな足を使って、ゆっくり懸命に前進し、葉を食べます。停滞することはあっても、後退することはありません」


 だが、どうやら彼女は、別の捉え方をしているらしい。ローズマリーは、イモムシとしてのあいりの姿を肯定していた。その手に持った一枚の紙を、あいりに向けてそっと差し出した。あいりは、訝しく思いながらもその紙を受け取り、そして、目を見開く。見覚えのあるものが描かれていた。


 それは、たった1枚のデザイン画である。それを手渡した後、ローズマリーははっきりと告げた。


「そしてイモムシは、いつか蝶になるものです」


 言葉を区切って、さらにひとこと。


「自分がイモムシであると言うのなら、あなたもそうあるべきです。アイリ」


 あいりがかつて、依頼を受けるという形で初めて手がけたデザイン画が、それだった。未熟さの目立つ稚拙な服飾デザイン。蝶というデザインモチーフを明確に打ち出したそのスーツの上下は、依頼主である男には好評だったが、多くの人間から失笑を買った。小っ恥ずかしい記憶しかない。

 だが、依頼主であるその男は、『君に頼んでよかった』と、言ったのだ。

 悔しいが、認めざるを得ない。最初の一歩はそこだった。才能がないなんてことも、夢が報われるかわからないなんてことも、歩んだ先に栄光があるかわからないなんてことも、当時から織り込み済みのはずだったのだ。


 ああ、ああ。


 そうか。そうだわ。そうよね。


 くそったれ。


 いま明確に、背後をぴたりとつけてきた焦燥感の正体がわかった。あれは自分自身だ。

 ただ認められた嬉しさに引きずられて、脇目も振らずに走ろうとして、みっともないくらいにバタバタしていた、がむしゃらだった自分自身だ。進むことを忘れ、のんびりしていた今の自分を、昔の自分が追い越そうとしている感覚こそが、その焦燥感の正体であった。


 蝶になりたい。


 今は地を這うしかないイモムシでも、いつかは羽ばたく蝶になりたい。夢の大空へ、広い世界へ飛び立つための翅が欲しかった。ずっと目をそらし続けていた夢が、燻らせていた目標が、いま、再び羽化しようとしている。

 それで本当に良いのか? と問いかける、弱気な自分がいた。

 自分に才能がないのは明らかなのだ。この広すぎる空を、自由に羽ばたけるだけの翅が、果たして自分に備わるのか? イモムシとして地を這う幸せを、模索するべきではないのか?


 糞くらえだわ。


 あいりは拳を握る。翅が生えないならば、死んだのと同じだ。自分は走り続けるために、挑み続けるために生まれたのだ。持て余した焦燥感も、退屈な幸せも、一切が自分の人生には必要ない。いまならまだ届く。あいりの心臓に、赤く熱い鼓動が脈打つ。いまならまだ、届くのだ。


「杜若さん、ちゃー、冷めるんでぇ」

「あ、うん」


 茶良畑からティーカップを受け取り、まだ熱を持ったそれを、一気に喉に流し込む。火傷するような想いが、そのまま胃袋から全身に伝播した。


「では、アイリ。おかえりなさい、でしょうか」

「うん。ただいまよ」


 何の躊躇いもなく、きっぱりとあいりは言葉を返す。


「今まで止まってた分、取り戻さなきゃいけないわね」

「と、言いますと」

「やりかけだったこと、全部やるわよ。何がなんでも単位は取るし、次のコンテストに送るデザインは完成させるし、フランスにも行くわ」

「しかしおカネが足りません」

「売れるんでしょ。コクーンが。1000万で」


 さきほど交わしたばかりの言葉と共に、あいりが思い出していたのは、サバゲー同好会で赤城瞳が発した言葉であった。


『負けて得るものに何の意味もない。サバイバルゲーム同好会として勝利を掴むことに、俺は意味を見出したい。それ以外に、興味はない』

『負けるだとか、他に擦り寄るだとかいうことを、俺は一切考えていない。俺たちはサバイバルゲーム部だ』


 あいりだって同じだ。杜若あいりとして、勝利を掴むことができなければ、何の意味もない。他の誰かではなく、自分自身の手で挑むのだ。そのためには、あらゆる手段、あらゆる方策を選んではいられない。中途半端では、ダメなのだ。

 FPS同好会に擦り寄って50万を手にするのは楽だろう。

 サバゲー同好会と交渉して1台分の売却額を手にするのは楽だろう。


 だがそれでは何の意味もない。あいりは杜若あいりとして、フランス行きの旅費を稼ぐ。手元に入るのは、1億2000万か、ゼロか。そのどちらかしかありえない。すべてを得るか、失うか。その過程で得る1億2000万という大金の、なんと小さなことだろうか。しょせんは、翅を得るための踏み台だ。


「杜若さんパねぇ」


 そこで茶良畑が、何やら嬉しそうに口元を歪めてそう言った。


「やっぱぁ、あれっすか。まじで。乱入? 飛び入りっすか? おれ達3人で? やべぇ。まじ興奮する。パねぇ」

「まー、そーなるわね。上限は6人で、下限はないもんね」

「私1人で10人分の戦力になるので、その点は取り立てて問題ありません」


 ローズマリーはすまし顔で頷く。


 もちろん、ローズマリーと茶良畑に頼って、自分はステルススーツを着て逃げに徹していれば、勝つことも不可能ではない。だがそれではダメだ。あいり自身が、挑まなければならないのだ。

 もちろんそれは、FPS同好会とも、サバゲー同好会とも、敵対することを意味する。あいりの脳裏に浮かんだのは、薄荷ラムの浮かべた、様々な表情だった。あの小動物じみた言動をする彼女にも、M700の銃口を向けることになる。その時ラムは、どんな顔をするだろうか。


 ともすればこれは、裏切りにも等しい行為なのだ。


 だが、それを言うならば、今の気持ちを持て余したまま、彼女と友情ごっこに興じるのだって、裏切りだ。ラムは、自分と友達になりたいと言っていたではないか。ならば、この気持ちだけは裏切れない。

 それに、あいり自身が抱いていたような違和感は、きっとサバイバルゲーム同好会全体をも覆っている。停滞と焦燥。不安を抱きながらも、前進を恐れて現状維持に努めようとする空気は、確かにあった。気づいているのは一人だけだ。今はそれでもいいかもしれないが、いつか必ず、無理が来る。そうなってからでは遅いのだ。決断を必要としていたのは、何も自分一人ではない。


「それで、どうするのですか」


 ローズマリーが、あいりに言った。


「イモムシから蝶になる決意を固めたところで、アイリが芋スナであるのは変わりません。2チームを同時に相手して生き残るのは、難しいのでは」

「そーね。まぁ、気は進まないけど、一個思いついたことがあるから、それをやるわ」


 あいりが思い出すのは、さきほどレッドアイについて、ガンサバイブ・プラネットをプレイしていたときの記憶だ。ヒントはあそこにあった。むしろ、素人たる自分が、レッドアイやカルーア、それにモヒートのような経験豊富なプレイヤーと同じ土俵に上がるには、手段はひとつしかないようなものだ。


 あいりはバッグからスマートフォンを取り出し、アドレス帳を開いた。長らく言葉も交わしていない、かつてのゲーム仲間の名前を呼び出し、いささかの躊躇の後に、コールボタンをタップする。あいりは、独り言を呟くようにこう言った。


「イモムシが蝶になる前に、必要なもんがあるでしょーが」

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