運命の時計。
目をあけたらそこは観た事もない世界だった。
なぜ・・俺はいたはずだった。2013年の世界に。
何台もの車が行き交い、何人もの人々がすれ違い会い、時に楽しく、時に悲しみながらも
生き続けていた俺は高校3年生だった。学校の体育館にいたはずだった。そうみんなと・・・だがここは見覚えのない場所。一面野原のこの場所に俺はなぜかたっている。
みんなは・・・なんでここに俺がたっているんだよ!どこだよここは!!・・・・なんで・・・
突然意識を失ったんだ。そしたらここに俺はいた。意識失うまえの記憶ははっきり覚えているんだ。そうだ。おれはみんなと学校にいたんだ。
2013年7月 東京にある高校。
「楠木ぶちょ~、部活さぼってな~にしてるんスカ~?」
やる気も感じられないぐーたらな声が俺の名前を呼んでいる。後輩の佐倉大地
「大地、部活中はシャキシャキ喋って行動しろっていつもいってるだろ!まったく・・・」
「部長だってぇ部活中なのに、物置でな~にしてるんですか?全国いったからって気抜いちゃその座射止めますよ?」
お前が俺に勝つのは無理だっ!そういいながら大地を引き寄せ殴る。痛がる大地をシカトしながらおれはあるものをみつめていた。
それに気がついた大地も、興味深そうにそのものを覗き込み始めた。
そこにたっていたのはただの時計。1mほどの高さの古びた時計。入学して3年経つ俺だが、この時計を見つけたのは今日が初めてだった。
「なんすかこれ・・・みょーな感じするっすね」
さっきまでおちゃらけていた大地も、時計がだす独特の雰囲気になにかひかれている感じだった。
俺もそうだった。なにかを感じた。だからここにはいっていった。そこにはこの時計があり、この時計に導かれるように俺と大地はいる
「ただの時計なんだけどなぁ。気のせいかな?まっいくぞ大地。みんなが待ってる」
「先輩がここにはいっていくの見てきたんですから!!俺のせいにしないでくださいよ~~!」
時計は動いていなかった。ただ古く、そこに存在だけを残していた。ただ俺の、いや俺たちの時計の針は動き出していたんだこの時から、少しずつ。
体育館にいくと部員が5人、ストレッチをし始めたころだった。
「めずらしいな遅刻なんて。しかも二人同時にくるとはなんかあったんか?」
穏やかな口調で話す少年、剣道部副部長にして団体で先鋒を任せられ、俺なんかよりよっぽど部長にむいている男!天上院守。
「どうせ大地が原因なんだろ?」
そういいながらにこやかな笑顔で笑う風間俊介は次鋒を勤める、
部で一番笑うムードメイカー的な存在だった
「ちがうっすよ!部長がなにかにひかれたって物置にいったんすよ体育館裏の!そしたら俺も妙な感じがする時計をみつけたんですけど・・・」
「悪い悪い。まぁ時計があっただけでなんにもなかったけどな!遅刻したのは事実だ。今日の片付けは俺と大地でやるよ!」
「ちょっおれもですか~」
そういいながら落胆する大地を笑う天上院と風間につられ笑いながらも黙々とストレッチをする
少年の名前は赤星将矢
副将にして、部でもっとも冷静で、もっとも強さを求めていた。彼のおかげで部にも緊張感が保ち、結果全員の底上げにもつながっている。
「まぁまぁ。とりあえずランニングするかぁ。今日の先頭は柳生な!」
「お~うじゃ並んでー!いくぞぉー」
緩く、時にはっきりとだすその声にみなが集まり、1つの団体として行動していく。その声をだすのが
柳生総一郎
中堅を任せられる柳生は、部で一番練習をする男だった。勉強と部活を両立する柳生は、先生方からも注目されていて、でもとても浸し見やすく後輩の面倒見もいい理想の先輩でもあった。
部員はこのほかに10人ほどと少人数ながらも、去年は全国大会に出場しベスト8と立派な成績を収めていた。学校始まって以来の剣道部団体の成績だったらしく今年こそは
全国の頂点に立てるんじゃないかと、学校中から注目される感じだった。
普段と変わりなく練習をする俺達は、真剣にやりながらも時に笑い、大会前だからこその緊張感の中でも楽しくやっていた。最後の大会はもうすぐそこに迫っていた。
部室の片づけが終わったらしく、部室からでてくる人影が2人。唯一の女性マネージャで3年生の
三越咲
と、咲の親友でもある小町小百が楽しそうに笑いながら
「部室掃除したからねー!もう汚さないようにしてくださーーい!絶対にだよぉー!」
透き通るようなその声は、学校でも一目置かれる咲の声。
小学校からの知り合いだった俺と咲。なんとなくすごして来た学生生活だったけどいつも咲がいたような気がする。幼馴染みたいなもんなのかなっと自分に言い聞かせて見る。
「ふぁーーーい。気をつけますー。咲ちゃんいつもありがとねぇ」風間がニコニコ笑いながら叫ぶ
「コラーーー!!私の名前がはいってないぞ!私だってやってるんだからね!後で覚えてろー!!!」大声で叫ぶ少女が小百。
170cmある身長が目立つ小百は咲と同じく注目を浴びていた。話しやすく、誰とでも冗談をいいながら笑える小百は部にとっても大切な存在だ。
咲といつも一緒に仲良く行動していて、マネージャとして3年間支えてくれていた。最後に迫っている大会にむけていやな顔せずいろいろやってくれている。
「ありがとぉ!汚さないように努力するよ~!」部長として二人に叫ぶ。ただ咲と目があうときだけ楠木悠の顔になる。不思議な気持ち。気づいてはいたんだ。中学のときから
この気持ちは知っていた。ただ声にはだせないし、行動にも移せない。周りからみたら気づくかもしれないが自分にはわからないしこのままでもいいかなっと思っていた。
ハッキリした思いが伝えられない自分が情けなくなる。言えばスッキリするんだろうけど。あぁ青春だなーっとそっとつぶやく。
この日の練習は6時ごろ終わった。みなが帰るころ、俺と大地は遅刻の罰として体育館の掃除をしている。
いつもは部員全員でやるのが決まっているが、遅刻や、部に迷惑をかけた者が罰としてやることもある。まっ俺が決めたんだけど、俺がやるとはね。。。
部長として情けないと感じながらも、ニヤニヤ笑ってからかう人の群れに目をやり、つられて笑ってしまう。
「部長がしっかりしなきゃダメじゃん!ほらしっかり掃除掃除!」そういいながら笑う咲にたった数秒見とれている自分を押し殺す。
帰らず残っている咲や小百、天上院や風間、柳生に赤星。そして俺と1こ下の大地。いつものメンバー。ささいなことで楽しめる大切な仲間。
いつまでもこうして笑って楽しく生活していくんだろうなーと誰もが思っていたと思う。この瞬間は誰もが楽しんでいたことはわかる気がする。
ただ進んでいた時計はみんなを巻き込んでいた。誰もが考えもしていなかったこの先の未来。たった数分後には、なにもかも変わってしまう未来に誰も気づいていない。
「そうそう。時計がどうとかいってたけどみにいこうぜ!気になるし。」
風間が言うその一言に興味をそそられた二人のマネージャー
「えっなになに!そんな話きいてないぞぉー!」話をきかせてと、迫る小百につられるように咲もききたがっていたから俺はその時計の不思議さを話した。
「いけばわかるっしょ!いこういこう」
天上院の言葉に全員が賛同した。おれももう1度みたかったし、きにかかっていた。大地もきっとそう思っていたと俺は大地の顔を見て思う。
改めて見て確信をした。やっぱおかしいこの時計。
古びた時計なんだけど、見とれてしまうというか、引き込まれるというか・・・。
頭の中で考えていると、「やだぁなんか不気味。」小百がボソッとつぶやくとともに我に返る。ほかのみんなもなにか引き込まれていくものを感じ、目がはなせなくなっていた。
「まぁたしかに変な感じはするけどなぁ~。ただの時計だしな~」
天上院が言うことにだれもが納得していた。ただの時計、、、針も動かずただ立ち尽くす時計。
おもむろに近づいた大地が時計に触ろうとした瞬間、時計の針が動き始めた!
えっおれさわってないっすょ!?
突然のことにビクビクしながら答える大地をよそに、全員が動き出した時計をみていた。カチカチカチ・・・・不気味に動く時計に見惚れてしまう。
何分たったんだろう・・・だれも動けない。その時計に誰もが心を奪われ、誰も動こうとしなかった。このときからおかしかったんだ。この時計がだす雰囲気に飲まれてしまっていた。
そして時は動き出す。カチカチカチと動いた時計と共に。その瞬間は突然現れた。時計からだされた眩い光に目を眩ませ、腕で顔を隠したんだ。そしたら気を失っていたんだ。
そして目を開けたらそこには2013年の面影がまったくないほどの野原だった。
道はずれに寝そべっていた俺はただ呆然としていた。
考えること?分からない・・・なにを思えばいいのかもわからない。それほどの状況がいっぺんした状態で俺は何分ここに座っているんだろう。
動けない・・・どうなったのかも、ここがどこだかもわからない自分と向き合ってでてきた結論だった。その状況を大きく変えたのは林からでてきた3人ほどの人間。
先に気づいたのは俺だった。俺以外に人間がいる!そのことに安堵したとともにここがどこなのか、山ほどある疑問を問いかけたかった。
だがそれは1つの動作により叶わぬ願いとなった。3人のうちの1人が、時代劇でしかみたこともない刀を手にもっていたからだ。
なにを信用したらいいんだ・・・わからないなぜあいつが刀を持っているのか?本物なのか?悪い冗談はやめてくれよ。撮影なんだろ?そうだそうなんだろ・・・
ただただ混乱していた。頭の中がすべて不安と焦りでいっぱいになっていた。相手がなにかを言い出した。はじめの言葉を聞きそびるくらい混乱していた。
「っい聞いてんのかお前!!つったってないで、金目の物をだせよっ」
そういいながら刀を手にもち詰め寄ってくる。
まじかよおい・・・動け動け俺っ!
初めて味わうこの状況に体はゆうことをきかず、ただ立ち尽くすだけで迫り来る相手をただ待つだけになっていた。
「餓鬼が一人でなにほっつきあるいてやがる、だがらおれらみてーなのに襲われちまうんだ」
「そうにちがいねぇ!悪いのは俺らじゃなくここにいたお前が悪いんだぜ。刀ももたねー餓鬼が」
意気揚々と話す3人組に自分はついていけなかった。刀?んなもんもってるわけないだろう・・・ここにいたのが悪いだ?どうしてここにいるかをおしえてほしいくらいだ。
なにも言い返さずただ沈黙していた俺を見ているだけだった3人のうちの1人が絶えかねたのか胸ぐらをつかんできた。
「おいっ返事もしねぇで、親になにをおそわってきたんだぁおぃ!ぶっ殺すぞ!」おいおい・・・その刀見ると冗談だと思えないぞお前・・・
「じゃどうすりゃいいんだよ!!」混乱していた俺は怒鳴った。なにもわからない苛立ちを3人組にぶつけてしまった。その直後後悔するのはわかりきったことだった。
「口の利き方もしらねぇんだな。この状況でいきがるっちゃ勇気だけは買ってやろうかぁ。ただよ・・・おりゃ気がみじけーんだ。それがお前の運のなさだなぁ」
胸ぐらを掴みながら抑えていた苛立ちを言葉にするように語りかけ、俺を投げとばした男は、投げ飛ばされたおれにむかって刀を振り上げた。
恐怖はなかった。まだしらなかっただけなのかもしれないけど、ただ振りあがった刀をみていたんだ。叫ぶこともしなかった。叫んだのは刀を振り上げた男の後ろにいた2人だった。
「ウアァァアア」
後ろにいたうちの1人が叫びながら倒れこむ。仲間になにが起きたか分からない刀を振り上げたまま呆然と後をみていた男は、確実に混乱していた。
もう一人の後にいた男は、とっさに刀を抜くと同時に、この場を混乱させた1人の男に向かい、奇声をあげながら走り出した。彼の顔には恐怖が浮かんでいたのが自分でもわかったほど。
一瞬の出来事だった。走りだした男が刀を一直線にその男に突きだした。その刀をいなしながら、首の後ろに刀の柄をぶち当てる。また1人仲間が倒れこむとこを見た、3人目の男が走り出す。
「冗談じゃすまさねーぞ”コラァア!!」
威圧するように叫んだ声に、仲間が2人もやられた不安を一緒に吐き出した。ただ拭えない恐怖と不安。さまざまな思いがこみ上げてきた。
「迷ったまま相手に向かって言ってもそれは無謀としか捉えられないよ」
向かってくる相手にむけて、冷静に言う男の顔は、刀をむけ走ってくる1人の姿だけを見据えていた。
振り下ろしたんだ。
俺にはそう見えた。現実は違った。振り落としたのは両腕だけで、降ろそうとしていた刀が消えている。
「余分な力は良くない。相対した瞬間に力をいれるだけで、君の刀は吹っ飛んでしまったのだから」
そういいながら、刀を向けてきた相手の戦意をなくしたと判断し、俺のほうによってくる。
「大丈夫かぃ?立てる?」
やさしい笑顔だった。すぐ前に3人ほどの男たちを相手にしてたとは思えないくらいだ。
「よぉし!怪我もない見たいだね!よかった。あっ君たちもうこういうことはしないと誓うなら立ち去りなさい」自分が倒した相手にも同様の笑顔でそう言い放つ彼に気圧された男たちは
足早に去って言った。簡単に相手の敵意を無くさせあっという間にその場を和ます男の笑顔は印象的だった。
「運命だね。たまたま通りかかっただけなのだから!それでも君の命を助けられたことはすばらしいことだよね。あっ名前は?」マイペースに話す相手につられて反射的に名前を言ってしまった。
「へぇ楠木君かぁ。僕は河上俊二郎。君の命の恩人ってやつだね」一瞬だけでも笑ってしまった。河上俊二郎の笑顔を見て。心にすこしだけの余裕も一緒に。
これからはじまる先の見えない未来を感じながら
読みづらいとは思いますが
これから自分自身勉強していくので心に残るものになっていただけたら
うれしいです