あめ玉イチゴ
僕の彼女、依千子はいつも苺のあめを持ち歩いてる。
名前のせいか、小さい頃から苺が好きなんだって言ってた。
友達から
「依千子、苺のあめ頂戴」
なんてからかわれても、依千子は笑顔であげてる。
だけど、僕も一緒になって
「依千子、苺のあめ頂戴」
と言うと、依千子は首を振る。
「ケースケにはあげない!」
真っ赤な舌を出してそう言うんだ。
仕方ないから、自分んで依千子のよく買う苺のあめを買ったら、依千子に見つかって取り上げられた。
「ケースケは食べちゃ駄目!」
君は本気で怒るから、僕はもう苺のあめを食べれない。
「依千子、帰ろ」
「うん」
バスケ部が終わった帰り道、いつものように僕は依千子を後ろに乗せて思いっきりペダルを漕いだ。
自転車から落ちないようにと、僕のお腹に回された細い腕。
背中には熱いくらいに、君を感じている。
赤い屋根の家が見えてきて、片道20分の短いデートが終わりを告げる。
「ここで良いよケースケ」
もう少しだけ、こうしていたかったけれど、君がそう言うから僕は地面に足を付いた。
「門まで送るよ」
僕も自転車から降りて、依千子と並んで歩き出す。
不意に依千子が立ち止まる。
だから、僕も自転車を押すのをやめた。
「ケースケ…」
君の頬が赤いのは夕焼けのせいかな。
微熱に潤んだ瞳が真っ直ぐに僕を見つめてくる。
「うん?」
問うように首を傾げてみせると、依千子はじれったそうに僕の制服の端を引っ張った。
それでピンときた。
何度かデートした事あるけど、キスはまだだ。
依千子は照れて、すぐにうつむいてしまうから。
僕は依千子の瞳に吸い込まれて行くように、そっと顔を近づけていく。
ぎゅっと首をすくめたけれど、今日のキミはうつむかなかった。
…僕だって経験豊富じゃないから、失敗しても許してくれよ?
唇が触れるか触れないか、かすめただけで、僕は弾かれたように反対を向いた。
「…甘い…」
依千子の唇はやっぱり柔らかくて、それに苺の香りがした。
あめ玉のせいだ。
苺の香りが僕の頭をクラクラさせる。
リップくらいなら知ってるけど、こんなのは初めてだから。
やっとの思いで僕は依千子を見る。
「卑怯だ。僕にあめ玉をくれなかったのは、このために?」
依千子は小悪魔のように笑った。
「うん!何だかケースケに勝った気分っ」
…う。すごく可愛い。
「これあげるね!」
依千子は僕に無理矢理あめ玉をよこした。
「いらない」
僕はやんわり断る。
すると依千子の顔色が見る間に不安に包まれていく。
「苺のあめ嫌いだった…?」
僕は顔をのぞき込まれ、思わず抱き締めたくなったけど、依千子がびっくりするから、我慢した。
「嫌いじゃないよ。むしろ今、もっと好きになった」
「そ、そう?」
「でも僕はこっちのあめ玉の方がいい」
調子に乗って僕は依千子の頬に手を伸ばした。
すると、依千子は予想に違わず、思いっきり顔を赤らめて後ずさるんだ。
「ケースケの馬鹿!悔しい…また負けた気がするっ」
馬鹿ぁ!と捨てセリフを吐きながら、依千子は逃げるように走り出し、家へと帰っていく。
依千子が見えなくなって、僕は深くため息をついた。
ドッと背中に汗がにじむ。
「十分に僕の負けだろ?」
苺のあめをみる度に依千子を思い出してしまう。
今も、これからも、これからずっと先も、一生依千子を忘れることはできない。
「ほら、やっぱり僕の負けだ」
依千子との初めてのキスはあめ玉、甘くて切ないイチゴの味がした。
どうでしたか?甘めに仕上げてみました。
わたくし、ゆーりっどにしては珍しく現代物です(^O^)/
ちなみに、二人は幼なじみで最近つき合い始めた感じです。
あ、もしもっと読みたい!なんて奇特な方がいらっしゃったら、またこの二人書くかも。頑張っちゃいます♪
…いるかなぁ(汗)
ではでは、おつきあい下さりありがとうございました☆