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Beyond≠ビヨンド  作者: ヌマさん
東京超常殺人事件
2/3

中編『怪奇Ⅰ』

ーーーーーーーーーーーーー

もしも。もしも。もしも。

ーーーーーーーーーーーーー

『マジで、浮いてたんだな』


ベンチに座り、唖然とした態度で言葉を放ったのはネクタイを緩ませ、缶コーヒーを右手に持つ、氷室正道であった。


彼が思わず呟いたのは、代々木公園の池の中心部で空中に浮かぶ変死体の事実を確認したからだ。


鑑識によるとロープや、道具を使って浮かされている訳ではないらしい。更に不思議なのが空中に固定されたかのように、動かせず、未だに変死体の回収が出来ていない状況であること。


『本当に何なのでしょうね』


氷室の隣、同じくベンチに座る後輩、緒方も疑問と驚愕を口にした。


『それは、俺も聞きてぇことだよ』


現実とは掛け離れた現象。しかも、驚きなのはこれが殺人の可能性であるかもしれないからだ。鑑識が言うには、代々木公園の監視カメラにはこの男が何かに怯えている様子が収められていたらしい。


『一課の案件として扱ってるのは、殺人の可能性があるかもしれないから、ってことか』


そう、ここだ。問題点はここ、殺人?

監視カメラには変死体として発見された男、一人しか映って居らず、何なら監視カメラが男を捉えていた時間帯の代々木公園には人っ子一人いない。


なのに、殺人の可能性があるのは男が目の前を見て異様に怯えていた事と男が叫んだ言葉だけ。根拠が少なすぎる。


『なぁ、緒方。本当に殺人だと思うか?』


色々と整理して、考えたがよく分からない。だから、俺よりも頭が良い緒方に尋ねてみることにした。


『あくまで可能性の話ですし、鵜呑みには出来ませんけど、可能性は限りなく低いでしょうね』


顎に手を当てながら返答されたのは、現実的な尺度から見たごく普通な考え方。だが、完全に否定という訳でもない。


完全的な否定は、あの意味不明な変死体がぶっ壊した。それに、解せないのが、殺害する瞬間が監視カメラに映っていなかったこと。


男が慌てふためく瞬間は映っているのに、浮かされる瞬間は映っていない。監視カメラと男の位置関係のせいだろうが、凄くもどかしい。


『まぁ、どちみち調べるまでは謎ってことだな。緒方、死体の身元は聞いたか?』


氷室はゆっくりとベンチから立ち上がると、右手に持つ缶コーヒーを一気に飲み干し、緒方に声を掛ける。


『あっ、はい。被害者は川西隆一、53歳。職業は不定で四課が追っている犯罪組織とも関係があるらしく、四課にも協力して調査をしてもらっています』


緒方は手帳を取り出し、メモしたページを開くと、変死体の身元、川西隆一のことについて必要なところだけを話した。


『四課が追ってるってのは確か、麻薬を海外から密輸してるとかいう輩か?』


『そうです』


緒方の返事の後、暫く思考を巡らせた氷室は、近くにあるゴミ箱に殻になった缶コーヒーを入れ、再度、緒方の方に歩み寄った。


『それじゃ、犯罪組織のほうは四課に任せて、俺らは別の方向から探ってみるか』


氷室は緩めていたネクタイをしっかりと整え、歩み寄った緒方に声を掛けた。緒方はそれに静かに頷き、二人は別の方向からの探りを入れることに決定した。


           ーーーーーーー


『川西さんの事を、恨んでた人?そりゃあ、大勢居るだろう。あんな性格なんだから』


『俺も正直、あの人嫌いでしたし』


『川西さん、死んだんすか?』


           ーーーーーーー

『あの人、嫌われ過ぎだろ』


思わず住宅街で、呟いたのは川西隆一の評判の悪さと嫌われ具合であった。


同じアパートに住む、住人からはやれ嫌いだの、やれ性格が悪いだの。近くの住宅街に住む人たちからの評判も最悪、これでは、誰に恨まれて殺害されたかなんてわかりっこない事だ。


『お手上げですかね?』


隣を歩く緒方も、苦笑いを浮かべて氷室の嘆きに賛同する言葉を投げた。


『四課も同じ感じなら、迷宮入りだろうな』


氷室は髪を掻き荒らし、冗談に近いニュアンスで言葉を繋ぐ。そもそもだ、根本から間違っている。


死体が浮くなんて有り得ない。

これは、もっと、人智を超えた、、、何か。


その刹那、緒方の携帯が鳴り響く。それに反応した緒方は携帯を右ポケットから取り出すと驚愕を顔に表す。


『せ、先輩!』


『どうした、慌てて?』


緒方の感情の急変と荒らげた声に、驚きながら氷室は尋ねる。


緒方は右手に持つ携帯を氷室の前に突き出す、その画面に映し出されたものを見て、驚愕しないはずがない。この事件に関わる者からすれば、それは、アレと同じーーーーーーーーーー


『嘘、だろ』


画面に映し出されたのは、地面に大量の血を噴出し転げる死体。しかも、それは一つだけではなく複数の死体。


氷室と緒方は、焦りを覚える。別に舐めてこの事件にかかった訳では無い。


 ただ、氷室と緒方の想像を超えたのだ。


 故に、氷室と緒方は、焦りを覚えた。


          ーーーーーーーーー


数時間前


人気が少ない路地裏で、殺戮は起こった。

誰もが、戦慄した。誰もが、驚愕した。


だが、それを考えた時には地面に転がっていた。そして、死んでいた。


          ーーーーーーーーー


『一体どうなってんだよ』


目の前に広がる剣呑、見渡す限りの複数の死体、それらを実際に目視した氷室は動揺した声色で言葉を吐き散らかした。


『し、死因は?』


同じく、動揺する緒方が、鑑識に死因の確認を求めた。


『多発骨折と多臓器損傷から見て、落下死というのが現状の結論です』


氷室は上空を見上げる、建築物と建築物に挟まれた路地裏。建築物はそれなりに高く、屋上から突き落とされて、死亡したのか?


『五名を連続で、屋上から突き落としたのか?』


『あっ、いや、それなのですが、屋上の監視カメラに妙なものが映ってまして』


氷室が咄嗟に思考し、推測を立てるも、鑑識の付け足した説明で数秒も持たずして崩れる。


『妙なものって?』


二人は鑑識に連れて行く先で、衝撃な映像を目にすることになる。


『現実か?』


氷室は恐怖を口にした。見つめる先、監視カメラに映ったのは人々が空中に浮いている映像。

それは、編集などで作られたものよりもリアル。いや、本物だ。


『こんな事、あって』


同じく恐怖する緒方は、声が詰まり、目の前に映る現実を見つめるしかなかった。一件目の衝撃も中々だったが、二件目はそれ以上、殺害シーンまで見せられているんだ。


その衝撃は計り知れないし、正直、夢を見ているんじゃないのかと自分を自分で疑っている。

そんな、思考放棄状態の二人に鑑識が割って入る。


『今し方、五名の身元が分かりまして、その内の一人が、川西隆一とも関わりがあったらしく』


『川西。一件目と二件目の殺害を行ったのは同一犯かよ』


繋がる。またしても見つかる変死体。

氷室は、脳裏に再び思い浮かべる。

人智を超えた、何かを。


           ーーーーーーー


木村塁 51歳

職業 不定

死因 複数箇所の粉砕骨折と内臓破裂


赤木昴 49歳

職業 不定

死因 脳損傷と複数箇所の骨折


美咲蓮 55歳

職業 不定

死因 頭蓋骨粉砕と大量出血


川北勝馬 52歳

職業 不定

死因 急性硬膜下血腫と内臓破損


大原銀太 53歳

職業 不定

死因 脳損傷と大量出血


           ーーーーーーーーー


『働いてない奴が多いな』


疲れた口調で淡々と呟いたのは、身元と死因が書かれた書類を持ち、自席でダランと座る氷室であった。


『この五人も例の犯罪組織と関わっていたそうでね』


付け足すようにして言葉を吐いたのは、前の席に座る緒方であった。


『そのうち、川西と関わりがあったのは、一人』


『大原銀太、ですね』


大原銀太は他の四人と同じで、職業不定で親からも勘当されているとか。まぁ、川西を含め、被害者たちは大体が親がいないか、縁を切られているかの二択。


家族も居ないし、親しい友達もいなし、愛する恋人もいない。八方塞がり。だから、犯罪に手を染めたのだろう。


それよりもだ。


何より衝撃なのはアレ。あんな非現実的な殺害方法。もし、一件目も同じやり方なら、相手は不思議な『力』を持った人間ということになる。


非現実的。有り得ない。だけど、認めるしかないのだ。それを実際にやってのけたのだから。


人智を超えたその『力』で。


          ーーーーーー


暗い闇のトンネル。パーカーで顔を隠した男は、炎を見つめていた。闇に煌めく業火を、燃え盛る人間を、その断末魔を。


『ざっ、ざぶ、いいい、やべ、ろ。ざぶい』


その数時間後、半焼死、半凍死の変死体が発見された。


              ーーーーーーーー


中編『怪奇Ⅰ』はここまで、続きは中編『怪奇Ⅱ』に続きます。

        


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