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虚構の記憶を辿って

声のするドアに伸ばした手は、虚空を切った。

俺は何をしていたのだろう。全身に冷や汗をかいた状態で横になりながら天井に向かい手を伸ばしている光景はいささか奇妙に感じた。僕は何をしていたのだろう。何か大事なものが僕の頭から抜け落ちているようで、その奇妙な感覚が脳裏にこびりつく。今は___朝5時過ぎだ。変な時間に起きてしまった。日もまだ姿を見せていない早朝だ。さっきの夢…のようなものは一体何だったのか。もう半ば忘れかけてしまいそうなほどに先ほどの記憶は思い出せなくなっている。夢は脳が余分な情報を捨てる過程で意識に投影される副産物であり、一種の幻という話を聞いたことがある。なるほど、たしかにそれならどうりで思い出せないわけだ。

謎の夢の記憶を追おうとして変に頭が冴えてしまった。全身も汗をかいているし、もう布団に戻る気は起きなかった。まずは服を着替えてすっきりするとしよう。若干しけったパジャマを脱ぎ捨て、普段着に着替える。窓を見やると、地平線が赤く染まりだした。日の出だ。僕は年越しの時も徹夜などをせず、家族で年越しを祝ったらそのまま普通に寝ていたな…。夜更かしもあまりせずに生きてきたので今の時代の少年には珍しく、規則正しい生活をしている。特に最近はそうだ。不登校でいることへの無意識の罪への意識から生活だけでも規則正しくいようとしているのかもしれない。ただ一度だけ、何歳だったか、記憶にかろうじて残っているくらいの小さなころに一度だけ深夜まで起きていた記憶がある。もはやその時のことについては何も覚えていないも同然だが。

…と感傷に浸りながら少しづつ赤みを増す日の出を見つつ何をしようか考える。今までは起きる時間も規則的とは言いつつも、起床時間は8時前と学校に行くにはやや手遅れな時間であるため、普段はこのような迷いは起きずにもくもくと朝食を取り部屋でだらだら過ごしていたらお昼時で…というような生活をしている。しかし今日は比較的、いや十分すぎるほど学校に間に合う時間に起きてしまったがためにこのような気の迷いが発生してしまったのだ。

今日のような日に限って部屋の隅に追いやられている登校用のバッグが視界に映る。

「学校、行くべきなのか…?」

自分の机にある鏡に向かって問い掛けるように声を発する。当然、答えは帰ってこない。しかしながら、昨日ぼうしちゃんが言ってくれたこともあるし、もしかしたらこれは何か特別な存在に勇気を出せと言われていることを暗に示しているのかもしれない。

保健室登校、やってるって聞いた気がするな。

学校に行かなくなって数日経ったころ、担任の先生だか誰かから電話がかかってきて「保健室で養護の先生と気軽にお話しもできるし、もう一回学校に来てほしいな」と言われた記憶がある。当時の自分はクラスメイトの視線など社会的な不安は一切なかった反面、今以上に外の世界に対し無関心だったし学校に再び通う気などある訳がなかった。

別に学校に行きたいと思っていたわけでもないのに、制服の仕舞われた、しばらく使われた形跡のないほこりをかぶったクローゼットに手が伸びていた。

やはりぼうしちゃんのあの言葉___“君は宇宙“という一言に言葉で言い表せない奇妙な納得感を抱き、元気をもらった気がする。僕の持つ悩みにはまったく関係の内容に思えるはずのその一言が、なぜか、不思議なことに、今まで岩のように凝り固まった僕の世界に穴を穿つ一筋の光のような気がする。だが、まだその光は遠く、微かな存在だ。この光が僕の世界に届き僕が捉えることができるのか、それともこれは一時的な気の迷いかはわからない。

クローゼットを開ける。きちんと仕舞っていたおかげで、制服自体はきれいなままだ。相も変わらず無意識に制服に袖を通すと、しばらく着ていなかったはずなのにしっくりとくる。

やっぱり、僕は学生なんだな、と謎の納得感を得て、顔を洗いに洗面台のある一階へ向かう。学校へ行く支度をするときに、目が覚めたら顔も洗わず一番最初に制服を着るなんてちょっと滑稽な感じもするが、もうそんな細かいことはどうでもいい。せっかく体が学校に行こうとしてくれているのだから、僕はこの流れに身を任せるのが一番良いと分かっているのだ。

つなぎのお話です。

そろそろ僕くんの精神面の成長を描いていきたいなって思っております、、、!

今回はぼうしちゃんにはお休みしてもらいました、、、、(*^▽^*)

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