9、旅
昔、旅好きな夫婦がいた。
「今日はどこまで行きましょうか?」妻が問う。
「そうだな。今日はあの山を一つ越えてみよう」夫が答える。
そしてその日、夫婦は言葉通り一つ山を越え、その麓で野営をして夜を過ごした。
夫婦には旅をする上でルールがあった。
それは「無理しない程度に、歩ける所まで」というものだった。
それから幾星霜と、夫婦はルールに従って旅を続けた。
「神様、見てください! ついに彼らがアフリカ大陸を越えました!」
天使は小さな箱を上から覗きつつ、興奮している。
「おぉ、遂にか!」
「どうやら旅好きの血筋が、脈々と子孫に受け継がれているようです」
「そうかい。それは今後も楽しみだな」
神もまた目を細めて、箱を眺めた。
お読みいただきありがとうございました。
今回は、ランダムワード「世界一周」から連想して生まれた作品です。そして、「実は人類の発達に関するオチでした」というのは、星新一さんのショートショートから着想を得ています(ネタバレ防止で作品名は出しませんが)。
星さんのショートショート集『ボッコちゃん』は、面白いオチの作品が沢山詰まっているので、オススメですよ……!
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それでは、次回もまたよろしくお願いします(→ω←)