29、戦禍
気がつくと、そこは異世界だった。
生物が何処にもおらず、まるで時が止まったように静まりかえっているのだ。いや、正確には植物だけが時の流れに沿って成長している。
立ち上がって少し歩いてみると、点々と立ち並ぶ半壊のビルには蔦が絡みつき、錆と葉に覆われた時計塔は四時五分を示しながら横たわっていた。
胸がドキリと鳴った気がしたが、気のせいだと自分に言い聞かせた。
歩き続けていると、道端でキラリと光り輝く物を見つけた。拾い上げてみると、それは腕時計だった。それも四時五分を示している。
――偶然ではない。
そう確信するとともに、激しい動悸に襲われた。
午後四時五分。昨日、私の操縦する飛行機が敵国に爆弾を落とした時間だ。
お読みいただきありがとうございました。
今回は、ランダムワード「異世界転移」から連想して生まれた作品です。
実は最近、戦争や平和について考えさせられる機会が何度かありまして、その影響もあってこの昨日を書いた次第です。
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