26/30
26、夏の音
「ねぇねぇ! この貝殻、波の音が聞こえるよ!」
快晴の空と白い浜辺。白いフリルのワンピースと麦わら帽子を身につけた幼馴染の夏音が、右手を高く振りながら砂浜を駆けてきた。掲げたその手には、薄桃色の貝殻が握られている。
「ほんと?」
「ほんと!」
俺は夏音から貝殻を受け取り、左耳にあてる。
だが。
「何も聞こえないけど」
「もっと耳に意識を集中させて」
言われたとおり耳に意識を集中させ、瞼も閉じる。
すると、ざざぁ……ざざぁ……と、心地よい漣の音が耳に入ってきた。
「おぉ、本当に聞こえ――」
と言いかけた瞬間、俺の心はある音によって波のように揺れてしまう。
「……好きだよ」
漣の音に紛れた囁き声。
体が熱いのはきっと夏の所為。
お読みいただきありがとうございました。
今回は、「夏らしい作品を書きたい!」と思って生まれた作品です。私もこんな青春を過ごしてみたかったですね……。
この作品がお気に召しましたら、いいねや★、ブックマークをつけていただけると嬉しいです!
感想もお待ちしております!
それでは、次回もまたよろしくお願いします(→ω←)




