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第四十話……生物としての一線

「ドレッドノート発進!」


「「了解」」


 艦橋での晴信の傍には副官であるエリーが控える。

 このエリー、犬族の獣人で規律と序列を尊ぶ種族の出だった。



「ドレッドノート重力圏離脱!」


「続いて短距離ワープ準備!」


「了解!」


 今回も相手が地上部隊ということで、晴信の乗艦はドレッドノートだ。

 惑星コローナまでの道のりを、連続短距離ワープで短縮しようとしていた。


――ワープ。

 この世界における移動手段の一つ。

 核融合炉内を臨界させ燃料質量を虚数化することによって、光の速度の壁を打ち破る技術。

 勿論、古代の人間たちが開発したものであって、現在はその機関を作り得ることは出来ない。


 少ない弱点として、ワープ中にそこそこに質量がある物体とは接触できず、そのため念入りな航路計算が必要とされた。



「機関臨界!」


「ワープ開始!」


「超光速航法開始します!」


 ワープ航法により、ドレッドノートの質量は線となり、体積を持たない者として空間を疾駆した。

 そのため、惑星コローナまでの所要時間は8時間。

 日帰りが可能な距離での航行であった。



「惑星コローナの重力圏に到達!」


「管制に連絡しろ、対空砲撃を受けたら敵わん!」


「了解!」


「管制応答、降下開始します!」


「了解!」


 ドレッドノートは惑星コローナの管制に従い大気圏へと侵入。

 その全長200mの巨体が摩擦熱の炎に包まれた。



「着水完了!」


「よし、後はえい航船に任せる!」


「了解!」


 ドレッドノートは無事に海水面に着水。

 迎えに来た無数のタグボートによって岸壁まで誘導された。




☆★☆★☆


「社長、お休みのところスイマセンな……」


 惑星コローナの港湾施設で、車椅子姿の晴信を出迎えたのはカンスケだった。

 彼は頭をかき、すまなさそうに晴信を迎えた。


「いや、ブリュンヒルデも心配だったから、予定より早く来てみたよ」


「ありがとうございます。やはり社長は政略結婚にあまりいい印象はないですかな?」


「そうだなぁ、あまり彼女とは恋愛感情がないんだ。なんだか恥ずかしくもあるんだけど」


「ブリュンヒルデ様がお嫌いではありますまい?」


「うん、でも、多分時間が解決すると思うよ」


「わかりました」


 カンスケは思ったよりは状況は良いと判断し、少し気が楽になった。



「……で、敵情はどうなの?」


「ええと、ゼノン王が差し向けた10万の部隊に我が方が苦戦しております!」


「それは、多いね!」


「仰せの通りで……」


 惑星コローナが臨時政府を建てた際。

 もちろん、王都からの攻勢を呼び込む危惧はあった。

 だが、その兵力は宇宙空間で対峙することによって防ぐ算段であったのだ。


 宇宙空間なら絶大な能力を発揮しうるタテナシがいたのだ。

 だが、その目論見はサーペントの出現にて打ち破られた。

 ゼノンが派遣した地上軍は、やすやすと惑星コローナの地に土足で踏み込んできたのであった。



「まぁ、司令部に行って話そうか。ここでは誰に聞かれているかわからないしね」


「御意」


 晴信とカンスケ一行は、ブリュンヒルデとザムエルが待つ司令部へと急行したのであった。




☆★☆★☆


「おかえりなさい、晴信様!」


「ただいま!」


 司令部の入り口で、半分涙目のブリュンヒルデに抱き付かれる晴信。

 その柔らかい感触に晴信も気が気ではない。



「晴信様の為にご馳走を用意しておりましたのよ!」


「そうかぁ、お腹もすいているし、先にご飯を頂こうかな?」


 嬉々としたブリュンヒルデに案内され、晴信たちは立派な部屋に案内された。



「おっ! これは牛肉ですな。しかも培養されてない天然の……」


 カンスケが感嘆の声を漏らす。


「惑星間商人から買いましてよ。随分高かったのですけど、晴信様の快気祝いにということで……」


 ブリュンヒルデは胸を張り、エッヘンと言った感じだ。


 ……ブリュンヒルデって意外と胸が大きいのだね。

 自分でも変なことを考えるものだと晴信は思う。

 今までは、彼女を友達としてしか見ていなかった。


 変なことを冷静に考えているなと、自分を感じる晴信だが、晴信は以前の晴信とは変わっている部分があった。


 ……それは殺されかけたこと。


 生物としての種の死滅の恐怖を感じた晴信は、以前より生きることに関して敏感になっているようであった……。



「うまい!」


 満面の笑みで肉にかぶりつく晴信。

 一度死にかけたことは、旺盛な食欲となって血肉を欲させた。

 全てこれは生物の成せる業。


「……」


 ディーは半ば頼もしく、又、興味深く観察するように晴信の姿を見やった。


「お酒もどうですか?」


「頂こうかな?」


 車椅子の晴信の杯に、ブヒュンヒルデが自らワインを注ぎ入れた。

 死にかけた途端、これからすぐに地上軍との死闘が待っている。

 晴信の生に賭ける本能は燃え上がる。

 例え、理性が平穏な草原を思わせるものであっても……。



 晴信はワインに酔った。

 丁度この世界に来て2~3年たったであろうか?

 きっと成人らしき年にあったであろう。


 だが、しかし。

 初めての酒は彼を大いに酔わせた。



 ……いろいろな生物的な事案が重なり。

 この日の晩、晴信とブリュンヒルデはとある一線を越えたのだった。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] うおおおおおおおお!!!!!!(大興奮)
[一言] 本当の意味でここの世界の者になりましたか。
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