表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/55

第四話……新造! ベータ号!

――晴信はある晩。

 入ったことのないディーの寝室の前にいた。


 暗闇の中、部屋からうっすらと光が漏れる。


「ダ……、ダレデスカ!?」


 部屋の中から、聞いたことのない機械音。

 その発音者は、配線だらけの醜い機械の顔を晒していた。



「……ミ、ミナイデ。ハルノブ、君ニ嫌ラワレタクナイ……」


 後ずさりするディー。

 彼は晴信に内緒で、毎晩メンテナンスをしていたのだった。


 ……が、ディーが心配するほど、晴信は驚いてはいなかった。



「ディー。君が中古の部品を集めていたのは、この為だったんだね……」


 晴信はディーに丁寧に断って、彼の部屋へと足を踏み入れる。



「……ハイ。ワタシハ、モウナガクナイ古イロボットデス。ハルノブ様ヲ、オ迎エデキタコトガ最後ノ喜ビデス……」


「そんなこというなよ。僕のことを友達って思うなら、様をつけずにハルノブっていう約束だっただろ!?」


「……スイマセン」


 泣いて抱き付く晴信に、ディーはランプを赤青と激しく点滅させる。

 きっと動揺しているのだろう。


 その晩のディーのメンテナンスは、晴信も手伝った。

 ディーの体は奇麗にメンテンスされ、更に晴信に丁寧にワックスもかけて貰ったのだ。


 それは彼等二人のかけがえのないルーティンとして、その後も毎日続くことになる。




☆★☆★☆



――翌朝。


「あ、あれ? いない」


 ディーが晴信を起こしに行くも、彼は彼の寝室にはいなかった。

 彼は工場の指令室にて、何やら設計作業に打ち込んでいる様だった。



「あ、ディー。おはよう!」


「おはようございます。ハルノブ、なにをやっているのです?」


「ああ、ディーの新しい体を設計しているんだけど、上手くいかないんだ。なんでだろう?」


 晴信の困惑顔に、ディーもランプをチカチカさせる。



「ハルノブ、この工場は宇宙船を造るために作られているのです。私のような雑役ロボットは対象外なのです……」


「雑役だなんて……。この世界に僕は独りぼっちなんだ。ディーがいなくなったら僕とても悲しいんだ……」


 晴信は知らないうちに、この世界にひとり来た。

 その貯まった寂しさを、この時ディーに一気にぶちまけたのだ。


 ディーはいたたまれなくなったのか、黄色いランプを点滅させる。



「そうだ!」


 突然元気になった晴信を見て、ディーはびっくりする。


「どうしたんです?」


「いやなに、この工場で立派な宇宙船を造って、ディーが修理できる星までいけばいいんだって思ったんだ!」


「……あはは、有難いことです」


 ディーは今までになく、青いランプをチカチカさせた。

 それは彼にとって、最後であろう仕える主人への温かい感謝の光だったかもしれない……。




☆★☆★☆


――数日後。

 準惑星ディーハウスの工場にて、新たな宇宙船が誕生しようとしていた。


 その船名は【ベータ号】。

 その名が現す通り、アルファ号を再設計し改修したもので、全長を300Mと拡大。

 全幅も40Mに拡張した。

 更には、ささやかながら、自衛の装備も取り付けた設計となっていた。



「できた!」


「できましたね!」


 最後は、自分たちで船名などを船体にマーキング。

 お祝いに、とっておきの果汁100%のジュースを開封した。


 それは二人にとって、とてもいい思い出になった日だった。



――その日の晩。


 晴信はひとり工場の図書室にいた。

 ここを見つけたのは一昨日だが、ゆっくりできる日を探していたのだ。


「……」


 晴信はコンピューターを検索。

 この世界における人類の歴史をスクリーンに投影した。


……実用核融合炉の開発。

……超光速機関の開発(宇宙船の航行速度が光を超える)

……超極高周波通信機の開発(光速を超える通信手段の取得)


 そして。


……星系間戦争の勃発。

……未知の文明種族との遭遇。

……人間種族の最大版図。


……星系間戦争の激化。

……人間種族の絶滅。


……人間以外の文明種の発展。


 その【人類の歴史】は、人間以外の文明種の発展を最後に、映像データを閉じた。


 晴信はこの世界で人間を見たことが無い。

 出会った文明種族とは、ゲームや漫画にでてくるようなエルフやドワーフといった生命体だったのだ。


 手に入った紙幣の肖像も人間の姿ではない。

 この世界で普通の人間の姿をしているのは、まさしく晴信ただひとりだったのだ……。


 ……ディーが自分に期待しているのは、人間文明の復権なのだろうか?

 それとも、この工場の生産者としてなのだろうか?


 なんだか、晴信はそれをディー聞くのは怖かった。

 それゆえ、この図書室で見聞きしたことは、しばらくディーに話さないことにしたのだった。




☆★☆★☆


――翌日。


「エンジン始動!」


「了解!」


 晴信の号令と共に、ベータ号の超光速機関がうなりを上げる。



「機関出力正常」


「発進!」


 晴信とディーを乗せ、宇宙船ベータ号は宇宙空間へと出港。

 その機関出力は予想以上で、準惑星の地表に、宇宙空間から見えるほどのクレーターを作ってしまったほどだった。


「すごいね!」


「予想以上ですね!」


 晴信はニコニコ顔。

 ディーも青いランプを点滅させた。


 ベータ号は順調に準惑星ディーハウスの重力圏を離れ、試験航行を開始した。

 その試験航行は上手くいき、遥か遠くまで航行しても大丈夫であろうデータが、無事に取れたのであった。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

誤字脱字報告も大変感謝です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらもどうぞ!
↓↓クリック↓↓

i000000
(バナー作:「秋の桜子」様)
4m995efhcisxf3n45atdjngefp6w_1b6w_b4_b4_
(バナー作:「こたかん」様)

i000000
(バナー作:「砂礫零」様)
― 新着の感想 ―
[一言] 現実的な問題として、人間が晴信だけだと子孫は残せませんねえ( ˘ω˘ )
[良い点] ディーのために新しいボディーを求めて旅立ちます。 人間とロボットの絆が深まってゆくのが良きです。。。 [気になる点] ディーのメンテナンス(着替え?)を偶然覗いてしまった晴信君。。。。 ロ…
[一言] ディーを直せる惑星が見つかるといいんですが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ