第三十八話……遊撃生物兵器サーペント
――遊撃生物兵器サーペント。
それは太古、人間たちの世界で見つかった。
アルファ25星雲の外周。
超光速探査衛星にて収集された生物体はアルガと名付けられた。
この生物は高エネルギーを餌にすることが判っていた。
そのため、度々核融合炉を搭載する旅客船に衝突し事故を起こしていた。
が、そのアルガの大きさは全長50cmほどで、兵器と呼ぶほどのモノでは無かった。
だがしかし、軍に所属する生物博士により、巨大な宇宙龍種の胚にアルガが移植される研究が始まった。
この龍種、成体で全長を100km以上となる。
しかし、この龍種はおとなしいことが特徴だった。
ところが、アルガと融合した龍種は、予想通り核融合炉を搭載する宇宙船を攻撃する猛獣となった。
この生物兵器はサーペントと名付けられ、宇宙空間を航行する軍艦までを襲った。
全長100kmを超える固体は軽々と宇宙戦艦を宇宙の藻屑とした。
この固体は特異成長を果たし、ワープまでこなすようになり、人間たちの覇権争いに大いに貢献することとなった。
第一次星乱と呼ばれる戦争が終わり、サーペントは役目を終えた。
だが、それを排除するのはとても大変だった。
全長100kmを超える巨獣がワープして逃げるのである。
のべ一万数千隻の軍艦を投入して捕獲作戦を実行。
当時の人間たちは苦労して捕獲した。
この生物は使用禁止生物兵器に指定した後、とある小惑星に冷凍保存したのであった。
この生物兵器に破壊された宇宙船は軍艦だけで600隻以上。
軍民併せて数千万トンの宇宙船が宇宙の藻屑と化したのだった。
その恐るべき生物兵器を、ゲルマー王国のゼノンは解放しようとしていた。
今の文明生命体は、太古の人間たちの数百分の一の数しかいない。
またその科学力もその数に比例した低いものだった。
よって、サーペントを開放することは、回収不能を意味するものであった。
☆★☆★☆
――ゲルマー王国主星アレクサンドラ。
「……ですが、ゼノン王。これでは我が帝国の船団も襲われてしまいますぞ!」
サーペントの実験に際し、不安な面持ちのアンゲラー辺境伯。
「伯よ、先ずはこの生命体を賊徒が多い惑星コローナ周辺へと誘導せよ。それと我が方の宇宙船は民需用を低出力エンジンに積み替えることで対処せよ!」
「仰せのままに」
ゲルマー王国軍は核融合炉をむき出しにした艦によって、指定宙域までサーペントを曳航。
さらに自国の民間船を低出力の機関に換装させ、襲われにくいように定めた。
このことは、すぐに王国の経済状態に響くようになる。
低出力艦はすべからく低速であり、物資の輸送には不向きであった。
そのため、ゲルマー王国内では物価が急上昇するようになった。
……しかし、王国からすれば、反乱者の住まう惑星コローナの周辺宙域にサーペントを遊弋させることに成功。
惑星コローナ周辺の物資を運ぶ商船に多大な被害が出たのである。
……少なくとも、コローナ臨時政府に大打撃を与えたのは間違いなかった。
☆★☆★☆
――惑星コローナ。
「ご領主様、またもや商船隊が怪物に襲われましたぞ!」
老臣ザムエルがブリュンヒルデに報告する。
「爺、あれを撃破する策は未だないのか!?」
「ありませぬ。あれは古代の人間たちの軍事力でも難儀した化け物。到底我等の力では抗することは出来ませぬ……」
「このタテナシでもだめなのか?」
「万に一つも勝てますまい……」
「……うむむ」
惑星コローナには多数の宇宙空間で戦える船が駐留していたが、化け物相手には出撃できないと、ザムエルにより出撃は許可されないでいたのだった。
――そんな折。
ひょっこり晴信は帰って来た。
幸運にも、晴信の乗るドレッドノートは件の宇宙怪獣と出くわさなかったようであったのだ。
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惑星コローナの宇宙港に着陸するドレッドノート。
タラップが降ろされ、車いす姿の晴信が現れた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ。ご無事でしたか!?」
「あんまり無事では無かったけど」
ブリュンヒルデの出迎えに頭をかく晴信。
彼の体は文字通り満身創痍だ。
外からは見えないが、ありとあらゆる内臓が縫合されている。
「……で、怪物が出たって聞いたけど?」
「ええ、先ずはゆっくりなさってください。怪物の件はその後にしましょう」
ブリュンヒルデは晴信の容態を気遣った。
まぁ、車いすに点滴を吊った人物に仕事させるのは、普通の感覚ではない。
その後、晴信は惑星コローナの病院の個室に移った。
しかし、その晩。
晴信はディーと共に怪物対策を練っていた。
「これどうしたら倒せるのかな?」
病院の個室で映像を見る晴信。
「タテナシでは倒せそうにないですね……、というか、どうしたら倒せるのでしょうか?」
ディーのデータにもサーペントを撃破したというデータはない。
それもそのはず、太古の人間たちも冷凍保存に成功したのであって、死滅させたわけでは無かったのだ……。
「……じゃあ、どうしよう?」
「とりあえず、既存の宇宙船のエンジンを低出力化するしかないんじゃないかな?」
ディーは消極的な提案をした。
つまり、今襲われている宇宙船は、高エネルギーを生み出す高性能な核融合炉を積載しているのだ。
これを通常動力化。
つまりイオンロケットなどに換装。
襲われにくくするという対策であった。
この提案は、カンスケによって政策化されるようになる。
こうして、ゲルマー星系内は低速船のみが航行するという不可思議な航路と化したのだった……。
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