第三十六話……凶弾
【システム通知】……高エネルギー反応!
晴信は機体からの警告に従い、電磁防壁の出力を上げる。
刹那に飛んできた赤いレーザーは、緑色のシールドを展開する電磁防壁に中和された。
すかさず、晴信が乗るブラックジャックが反撃に展開し、レーザー砲台を沈黙させた。
二足歩行のゴーレムは、敵に対して投影面積が大きいという弱点があるが、光線兵器に強い電磁障壁と、実弾兵器に強い重力場発生シールドを備えていた。
それゆえに、戦車を凌ぐ陸戦兵器の長として君臨出来ていたのだった。
「あれが敵の基地かな?」
晴信は峡谷地帯をつぶさに調べ、敵の防御施設の位置をメモに取っていった。
散発とした敵の偵察部隊からの攻撃もあったが、ブラックジャックと晴信の前に沈黙していった。
「……よし、これだけデータが取れればいいだろう」
晴信が乗るブラックジャックは地形データを取り終えた後、機体の回収をドレッドノートに依頼。
渓谷から離れた平地にて無事に回収されたのだった。
「撤収だ! 上昇離脱!」
「了解!」
ブラックジャックを回収したドレッドノートは急上昇。
エーレントラウト政府軍の支配地域まで後退した。
☆★☆★☆
――エーレントラウト軍指令部。
晴信は件の渓谷の地形データを軍の将軍に手渡した。
「いやあ、飯富殿。よくやってくださった」
「いえいえ、これで平和が近づきますかね?」
「もちろんです。反政府軍には降伏勧告もしてみますよ。あはは……」
その後、将軍と晴信はコーヒーを飲みながら歓談。
一時間後に晴信は指令部を後にした。
ドレッドノートに帰ってきた晴信は大きなトランクを抱えている。
それを見て副官のエリーは驚いた。
「艦長! 一体それはなんですか?」
「いやいや、報酬を現金で頂いたので……」
艦橋で晴信はトランクを開けると、中には貴金属や有価証券、札束などがぎっしり詰まっていた。
最近はクレジットカードの偽造も多いからということで、報酬のすべてを現物で貰って来たのだ。
「あはは……、ハルノブお金持ち」
ディーに笑われる晴信。
晴信もなんとなく少し恥ずかしい面持ちだ。
「これで少し、皆でご馳走を食べますか!」
「「「賛成!」」」
晴信の提案に、艦橋のメンバーは歓声を上げた。
ちなみにドレッドノートは艦橋以外に、有人の配置は為されていない。
つまりは艦橋の人員が、艦の全ての乗組員であった。
☆★☆★☆
晴信たちを含めたドレッドノートの乗組員16名は、エーレントラウトの繁華街に繰り出した。
どうせ払いは艦長の晴信だ。
多数決をとった結果、比較的高そうなレストランでの夕食となった。
「いただきます!」
晴信をはじめとした乗組員は料理にがっつく。
普段は人造タンパク質などの保存食なのだ。
自然食品の温かい料理は、なによりのご馳走だったのだ。
「ちょっと失礼」
晴信は宴の途中、お手洗いへと席を立つ。
会場をでて、廊下を歩いていたところで、見慣れぬ男に声を掛けられた。
「飯富晴信様ですかな?」
「そうですけど……」
晴信が返事をするや否や、男はレーザーピストルで晴信の胸を撃ちぬいたのだった。
☆★☆★☆
「ぎゃあああ!」
晴信の悲鳴に最初に気付いたのはディー。
彼は急いで廊下へと飛び出した。
そこに倒れていたのは、血まみれの晴信の姿だった。
「ハルノブ、ハルノブ!」
ディーが問いかけるも晴信からの返事はない。
晴信は白目をむいて意識がない。
ディーは素早く冷凍スプレーで、晴信の出血部を凍結、止血していった。
「艦長! しっかり!」
他の乗組員も騒ぎを聞きつけてきてやって来る。
晴信の体は大急ぎで低温カプセルに移され、ドレッドノートの医務室へと運ばれた。
――【緊急手術】
赤いランプが医務室に点灯。
医療担当者以外、入室禁止となった。
マイクロレーザーメスを執るのはディー。
もともと彼は汎用ロボットである。
特に人間に仕えるために造れていたのだ。
人間の治療はお手の物であった。
「……コマッタナ……」
だが、晴信の心臓は破裂。
肺も熱線にやられボロボロだった。
ディーもこれほどだとは思っていなかったのだ。
ディーは晴信の体から幹細胞を取り出し、培養層にて欠損部分の器官を作り出す。
やはり、晴信のことを考えれば、機械の体は避けたい。
出来るだけ生体での健康復帰目指してディーは奮闘したのだった。
☆★☆★☆
――惑星コローナ
「晴信様が撃たれたですって!?」
凶報に晒されたブリュンヒルデは顔を青ざめる。
形式上とはいえ、晴信は彼女の配偶者なのだ。
「犯人はだれなのだ!?」
ザムエルが大声を上げる。
「わかっていません。情報が錯綜しておりまして……」
「早く安否を確かめるのだ!」
カンスケも大声を出した。
彼等にとって、情はおいといたとしても、半ば旗頭ともいえる晴信の喪失は避けたい。
「宇宙船を用意しなさい! 私が直々に向かうわ!」
「おやめくだされ! 現地は危険です。代わりに某が行って参ります」
カンスケは直々に行きたいというブリュンヒルデを止める。
晴信が狙われたのだ。
次の標的はブリュンヒルデということもあり得たのだ。
とりあえず、カンスケが高速船にて、惑星エーレントラウトに向かうことになったのだった。
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