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第三十四話……愛機ブラックジャック

――超光速通信。

 その名の通り光を超える速度の通信システム。


 古の人間たちが作った惑星間通信システムだが、戦争が長くなるにつれ、それを妨害するユニットが各惑星のあちらこちらに埋め込まれ、いまでは惑星上の無線通信も満足に行えない状況にあった。



「え!? 味方が撤退?」


 極寒の極地に停泊しているドレッドノートの艦橋で、晴信は味方であるエーレントラウト軍から通信を受けた。

 内容はと言えば、マエダ少将率いるコローナ地上部隊が全て撤退したということだった。

 晴信は取り残されたのだ。



「私はどうしたらいいんですかね?」


 晴信は映像通信スクリーンを通して、エーレントラウトの情報将校に尋ねる。


『晴信殿は、シリウスの雷神とまで言われたお方。是非とどまって我等と戦ってほしいのです』


「わかりました」


『ちゃんとお金もお支払いしますので……』


「ぇ? お金!?」


『コローナの正規軍が正式に撤退した以上、晴信殿を正規軍とはみなせません。一介の優秀な傭兵としてお手伝い願えませんでしょうか?』


「了解です!」


 晴信は映像通信スクリーンのスイッチを落とし、副官である犬族のエリーに尋ねた。


「……どうしたものかな?」


「もう、軍行動ではありませんので、自由になされて構わないと思いますよ」


「そうか、では失敬して」


 晴信はエリーのモフモフの尻尾をさわる習慣があった。


「……あ、晴信様くすぐったい。用事をきちんとしてください」


「今の用事は尻尾をモフることです!」


 晴信は地球で小さな犬を飼っていた。

 この副官の尻尾の触り心地は、とても心安らぐものだったのだ。


 この後、ディーとエリーと昼食を済まし、ドレッドノートの発艦に備えるのであった。




☆★☆★☆


 惑星エーレントラウト紛争地帯。

 主に寒冷地域が拡がり、人々の生活は貧しかった。


「いい女だぜ! ついてきな!」


「きゃあ」


「食料も出せよ! このハゲェ! 隠しているのは分かっているんだ!」


「それをとられたら、孫に食べさせるものが……」


「五月蠅いんだよ!」


 エーレントラウトの反政府軍はあちこちの村で乱暴狼藉、および略奪を繰り返していた。

 この点コローナの反政府軍は規律があったが、もはやエーレントラウトの反政府軍は軍服を着た山賊であった。


 この反政府軍を強力に支援するのがゲルマー王国の正統な王、ゼノンである。

 ゼノンの部下たちは、定期的に武器などの物資を、宇宙航路により反政府軍側に届けていたのだ。

 さらにはコローナの軍隊も撤退したことにより、反政府軍はさらなる優勢を勝ち得ていたのであった。


 この惨状をエーレントラウトの政府は危惧。

 再びコローナの政府へ正式に援軍を要請するのであった。




☆★☆★☆


 晴信たちを乗せたドレッドノートは寒い極地を出立。

 連絡された所定の位置まで飛行していた。

 赤道近くもなると、うっそうとした森林が生い茂り、活動的な火山も眼下の景色として目に入って来た。


 ドレッドノートが政府軍の陣地に着陸すると、おおくの将兵たちから歓呼をもって迎えられた。

 これほど大型な気圏戦闘艦は珍しかったためだ。



「飯富殿!よくきてくれました。さあさあ、こちらへどうぞ!」


 現地の将軍に出迎えられ、貴賓室のような所へ通された。


「私は軍歴30年になりますが、気圏戦闘艦などは実際に初めて見ましたよ」


 窓のカーテンを開けて、将軍はドレッドノートを見てほほ笑む


 気圏戦闘艦は、大気圏戦闘が可能な空飛ぶ要塞。

 それは宇宙戦艦に比べても作るのが難しく、現存を確認できるのは、ゲルマー王直轄軍が持つ数隻であった。



「……では、早速ドレットノートで敵をやっつけますか?」


 席上、晴信はそう言ったが、初老の将軍は頭を振った。


「こちらの事情で済まないのだが、とある峡谷に敵の補給基地があるのだ。この補給基地さえ叩けば、しばらく敵は動けないと言ったほどの大きな基地なのだ。だが、この基地は険しい渓谷地の中にあって、気圏戦闘艦どころか、気圏戦闘機でさえ侵入できない。もちろん陸上部隊で攻めるのも道すらわからない有様なのだ」


「なるほど」


「……でな、シリウスの雷神との呼び声高い、君のゴーレム操縦士としての出番なんだ。道なき道を辿って、敵中に侵入して欲しいんだ!」


「わかりました」


 晴信は照れ臭く思うも返事をする。


「隠密行動で侵入して、細かい敵基地の様子が分かれば、その情報を我が方の基地に送ってほしい。その情報に基づいて我が軍主力が総攻撃をかける」


「了解です!」


「そうだった。飯富殿は今は傭兵だったな。前金は金貨3000枚ほどでどうかな? 価値が落ちたゲルマー紙幣で受け取るのもなんだろう?」


「お気遣い感謝します!」


 とりあえず作戦は決まった。

 まず、ドレッドノートで敵基地上空から派手に攻撃。

 その隙に、晴信がゴーレムでこっそり侵入するというモノだった。


 その後、晴信が基地の地形データを集め、味方に連絡。

 地形データが集まったところで、主力陸軍部隊が総攻撃という手はずとなった。



――その日の晩。


「よっこらせっと」


 晴信はドレッドノート内の整備ハンガーで、今度の攻撃時に乗るゴーレムの整備に乗り出していた。

 ディーの手も借りて、油まみれになりながら万全を期したのだった。



 また、以下が、晴信の愛機のスペックだった。


【名称】ブラックジャック

【種別】汎用式二足歩行型ゴーレム

【速度】最大85km/h

【重量】100トン

【武器】

・長砲身レーザーライフル

・胴体部内臓16連小型レーザ砲

・背負い式ミサイルランチャー

・高振動サーベル(ゴーレム用)

【出力炉】核融合炉一機

【防御】

ハード・複合セラミック装甲

ソフト・電磁障壁

ソフト・重力シールド生成器


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

誤字脱字報告も大変感謝です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 凄い実力があって、頼みごとをされ、それを躊躇なく引き受けるのは凄いです。
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