第三話……青い惑星
「あの青い星にいってみていい?」
「構いませんよ」
ある日、晴信はディーを留守番に残し、とある青い星に出向くことにした。
その理由は特になく、ただの冒険心と言っていい。
この宇宙に住む民族は、すべて平等にテクノロジーを持つわけではなく、古き良き時代を楽しむ民族もいた。
晴信がのる宇宙船アルファ号が訪れた惑星は、そうした古き良き時代を体現したかのような惑星の予定だった。
『ワープアウト! 予定地惑星まで3.7光秒地点です』
「了解!」
晴信はアルファ号のAIに返事をする。
アルファ号は、音声指示による操船を可能とする宇宙船であった。
『大気圏へ降下します! 安全ベルトをお締め下さい!』
アルファ号に指示されて、あわてて安全ベルトを締める晴信。
居住環境を優先したアルファ号ではあったが、惑星への離着陸などの時は、どうしても大きな振動が付きまとった。
……奇麗な星だ。
晴信は正直そう思う。
彼が住んでいた地球も、まさしくそうであったであろうが、彼は地球を宇宙からの視点で見たことは無かったのだ。
アルファ号は大気圏で熱に揉まれ、灼熱しながら重力ブースターを点火。
件の惑星の重力に抗いながら、雲を下に突き抜け着陸に成功した。
『降下完了しました。お疲れ様です!』
アルファ号に宇宙船酔いを労われる晴信。
しかし、彼が船外に出ようとすると、アルファ号が彼の行動を制止した。
『微生物クリーナーを浴びてください。さもないと当惑星の生物を死滅させる恐れがあります!』
……ああ、そうか。
晴信はディーに教わったことを思い出す。
惑星外からの未知の病原菌を持ち込めば、その惑星の生物たちが抗体を持つ時間を与えずに、絶滅させる恐れがあったのだ。
晴信はアルファ号に備わっていたクリーナーを浴びた後、勢いよく外に出た。
「いやっほぃ!」
久々に新鮮な空気。
大地には緑の草。
空には青い空と白い雲。
それらは、アルファ号を作った工場のある岩石天体には無いものであった。
その後、晴信はアルファ号から4輪バギーを持ち出し、その惑星の大地を思う存分に疾駆したのだった。
☆★☆★☆
「当惑星にご旅行ありがとうございます」
「お邪魔します」
この惑星の文明種族は、地球でのゲームで言えば獣人のような見た目だった。
地球の文明より科学水準は下であったが、その分は未開の環境が観光上のウリである。
それによって多くの旅行客を招きいれているようであった。
……意外とつまらないな。
これが晴信の正直な感想だった。
惑星間ギルドのカードを出せば、宿は簡単に泊まれるし、犯罪率もさほど高くない。
逆に言えば、未開の地を探検するというスリルや、冒険を楽しめるといった惑星ではなかったのだ。
彼はもっとスリルのある冒険がしたかったのだ。
晴信は一泊だけしたのち、その惑星から帰ることにした。
ひとつだけ思い出があるとすれば、晩御飯のスープがおいしかったくらいであった。
☆★☆★☆
「ただいま」
「おかえりなさい。どうでした? あの惑星は」
ディーが晴信を出迎える。
「いやぁ、あまりおもしろくなかったよ」
「……と、いいますと?」
「もっとさぁ、折角だから、ハラハラドキドキする冒険がしたいんだよね?」
「それは危険です!」
ディーが思ったよりきつく言ってくるので、晴信は驚く。
「ハルノブはこの工場の主なのです。危険なことはやめてください!」
……そうだ。
なぜかわからないけど、僕はこの工場の主だったんだ。
主でなければ、ディーが親切にしてくれる理由はない。
晴信はそう思い直し、ディーを安心させることにした。
「分かったよ。危険なところへは無断ではいかないよ」
「ありがとうございます」
晴信の言を聞き、ディーは青ランプをチカチカ点灯させている。
きっと喜んでいるに違いなかった。
☆★☆★☆
――翌日。
晴信とディーは、仲良く鉱石の採掘に取り組んでいた。
「ねぇ、ディー」
「なんです? ハルノブ」
「この星の名前はなんていうの?」
そう、この工場がある岩石状の天体の名前を、晴信は知らなかった。
それに対してディーは、
「私も知りません!」
きっぱりとそう答えた。
「あはは、ディーも知らないんだ。じゃあ名前を付けていい?」
晴信は笑いながらディーに問いかける。
「構いませんよ」
「……じゃあねぇ、ここはディーハウスって名前にするね」
その命名は、そのままディーの家という意味だ。
惑星と言うほど大きくないので、きっと準惑星ディーハウスというのが妥当かもしれない。
ディーは無言になり、赤いランプと青いランプを交互に点灯させる。
それは嬉しくて照れているのであり、その気持ちは、晴信にもはっきりと伝わったのだった。
――その晩。
ディーが作ってくれたご飯は豪勢であった。
エビフライとパスタとハンバーグ。
人造タンパク質製ではあったが、全て晴信の大好物だった。
「いただきます!」
「おあがりください」
なんだか晴信は『良いことをした』気になったし、ディーは紛れもなく喜んでいた。
その楽しい雰囲気は、殺風景な岩石状の天体であるディーハウスも、共有しているかのようであった。
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