第二十七話……ドレッドノートvs地上要塞
「戦闘空域にジャンプアウト」
「作戦目標である要塞を確認!」
晴信は今日もドレッドノートの艦橋にいた。
敵の機動兵力を概ね掃討したため、今回の作戦目標は敵地上要塞だった。
もちろん空から要塞を占領できるという訳ではなく、今回は陸上部隊の支援であった。
「そんなに急いで攻略しないで良いよって、ザムエルさんも言ってたよ」
ディーがそれとなく晴信に言う。
「んー、そうなんだけどね。あの、苦手なんだ……」
「ブリュンヒルデさんのこと?」
「そうそう。司令部にいるとね、顔を合わせちゃうから、ね……」
「……ふうん」
ディーはなんとなく、晴信という人間が生物のメスを苦手としていることを感じ取っていた。
「友軍地上部隊は既に交戦状態に突入!」
「了解! 直ちに戦闘配備につけ!」
ディーは不思議に思う。
晴信は戦場で敵と対するとき、全く臆するそぶりはない。
ただ、対人の交友においては臆することが多いのだ。
友好的な生物と話をしたって、別に命をとられるリスクは無いのにだ……。
「全砲門開け! 艦首レーザー砲にエネルギー充填!」
「各種ミサイル装填急げ!」
晴信は手際よく乗員に指示をする。
ディーからすれば、それは手慣れた技というよりは、アドレナリン溢れる肉食動物の自然な仕草に見えた。
晴信が自然にドレッドノートという四肢を動かし、敵を仕留めるといった感じだ。
「艦首砲エネルギー充填70%……、85%……、100%、敵要塞への照準完了!」
「撃て!」
ドレッドノートの艦首レーザー砲が火を噴いた相手は、一見すると地面だった。
レーザー砲の熱で融解した大地がめくれ上がり、硬質コンクリートの巨大な破片が飛び散る。
晴信が狙ったのは要塞の地表構造部分ではなく、地下に埋もれた要塞中枢だったのだ。
「ディー、どう?」
「駄目だ。敵の司令部に多数の生存反応があるよ」
「失敗か……」
ドレッドノートの艦首レーザー砲は、著しく高い熱エネルギーと貫徹力に優れた超兵器であったが、一度撃つと暫く撃てないという弱点があった。
それは充填に要するエネルギー量の問題と、砲身の耐熱に関するものであった。
敵を一方的に攻撃できるのは初手の砲撃までだった。
敵地上要塞は、地表が真っ赤に染まるほどの火砲を唸らせてきた。
「敵反撃来ます!」
「シールド全開! 各砲塔応射開始!」
「ミサイル多数接近、防御システム飽和警告!」
ドレッドノートは空飛ぶ要塞と言った感じであったが、流石に本当の要塞を相手にすると、流石に分が悪かった。
多数のミサイルの飛来に対し、ドレッドノートは地表が裂けた渓谷地形に急いで逃げ込む。
――その結果。
ある程度のミサイルは地表付近の障害物に命中。
残りはドレッドノートの対空砲火によって打ち落とされた。
「再び攻撃する! 上昇せよ!」
晴信の神経中枢からアドレナリンがでて、彼が操艦の才能を発揮するのをディーは感じとる。
……ディーは思うのだ。
何故、それを他の分野には使えないものかと……。
「艦首砲だけに頼るな! 各砲塔斉射!」
「了解!」
ドレッドノートは再び高度をとり、地上要塞を攻撃。
対して、敵地上要塞も狂ったようにドレッドノートに反撃してきた。
……しかし、晴信が注意して見ていたのは、敵の要塞ではなかった。
「いいぞ! 味方が巧い事に前進できている! よし、このまま敵の攻撃を一手に引き受けるぞ!」
今回、ドレッドノートだけで作戦を行っているのではない。
第一には、ドレッドノートで敵の気を惹きつつ、味方地上部隊を支援するのが作戦主眼であった。
ただ、全部の攻撃を引き受けるといったことは、もちろん作戦に無かったことだったのだが。
「味方砲兵部隊、目標の高台を占拠しました!」
「味方戦車師団、目標エリアに到達」
「よし、このまま押し込むぞ! 突撃だ! シールド出力を前面のみに集中! 補助エネルギーも回せ!」
晴信の指揮のもと、ドレッドノートは前方に全ての力を費やし、敵の弾幕突破に成功。
「爆撃開始!」
「了解!」
ドレットノートは敵要塞の真上に来ると、搭載してきた特殊貫徹爆弾をばら撒いた。
爆弾は要塞の各所に吸い込まれるように着弾していった。
「投下完了!」
「よし、離脱だ!」
流石に敵要塞の真上にくると、ドレッドノートへの被弾も無視できないものとなっていく。
「第二格納庫大破!」
「二番砲塔損傷! 火災発生!」
「消火急げ!」
「火災区画に炭酸ガス注入!」
敵の弾幕を振りほどく様に、遮二無二逃げるドレッドノート。
各所に火災が発生し、黒い煙を吐きながらの遁走であった。
……が、敵地上要塞の注意を引き付けることには成功し、敵要塞には味方の歩兵部隊が雪崩れ込んでいった。
「第二歩兵大隊より連絡。我、要塞中枢を制圧せり、とのことです!」
「やった、成功だね!」
晴信はそう言い、ディーの方へと笑顔を向ける。
「……ですね。でも、修理代も凄いことになりそうだね」
「ぐは……」
ディーの言葉に、さっきまでの勇ましい晴信はどこへやら。
ドレッドノートの修理代に凹む、なさけない晴信の姿がそこにはあったのだった。
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