第二十六話……敵の戦力はインチキ
――二週間後。
「乗艦急げ!」
大気圏内用戦闘艦ドレッドノートは、惑星コローナで作戦に必要な物資を積み込んでいた。
空いている輸送設備に、戦闘車やトラックも次々に載せていく。
そんな中、白髪の老将が晴信に挨拶に来ていた。
「御館様、よろしくお願いします」
「あ、こちらこそよろしくです」
晴信に丁寧に挨拶をするのは、ブリュンヒルデが連れて来た高級武官のザムエル。
今回、晴信の船に乗艦するとのことだった。
ちなみに、宇宙港に停泊するタテナシは、優れた通信設備を活かして、コローナ臨時政府の総司令部を兼任していた。
実質上前線に出れないタテナシは、今後戦力として計算しにくい状態にあった。
「司令官殿、乗員完了しました!」
「了解です!」
今回、ドレッドノートの艦橋には、ザムエル以外にもブリュンヒルデが連れて来た士官たちが乗り込む。
敵情視察と銘打っていたが、きっと半ばは晴信の監視であろうとディーは思った。
「これから我が艦は、臨時政府地上軍の支援に向かう。発進準備急げ!」
「了解!」
晴信が乗るドレッドノートはゆっくりと発進。
コローナ臨時政府に従わない勢力の討伐に向かった。
その大鳳を思わせる巨大な姿は、夕焼けの美しい空の向こうへと、ゆっくりと消えていったのだった。
☆★☆★☆
コローナ臨時政府地上軍と、それに抗する地方勢力は、静かな地上戦を展開していた。
コローナ臨時政府軍は、主にブリュンヒルデが連れて来た兵たちで構成されており、その数においては敵に劣った。
敵対する地方勢力は、新しい王であるゼノンと組んだ方が良いと思っている古くからの惑星コローナの派閥で、不倶戴天の敵と言った感じではない。
昨日は味方だったという感じの仲での抗争だったので、お互いに戦意は低かった。
「おーい、飯だぞ」
「了解です!」
反政府側、地方勢力の兵士ロバート二等兵は、塹壕の中で食事をとっていた。
人造バターに模造パン、それに温かいコーンスープが今日の晩御飯だった。
その食事を食べながらに、ロバートは塹壕の外を双眼鏡でぼんやりと見渡していた。
敵側の塹壕からも炊煙があがり、温かい気持ちになった瞬間。
突如上空の雲が裂け、赤紫色の稲妻が走った。
そのすぐ後には、空中要塞を思わせる大型機が姿を現したのだった。
「なんだあれは!?」
ロバートは急ぎ通信機を手に取った。
「未知の機影がワープアウト! 気圏型巡洋戦艦と思われます! 至急援軍をお願いします!」
『そんな馬鹿な! 敵に気圏戦闘艦がいるとは聞いていないぞ!』
「……でも、実際に上空にいるんです。助けてください!」
「わかった。すぐに戦闘機隊を発進させる!」
「ありがとうございます」
突然上空に現れたドレッドノートに、反政府側の地上軍は大混乱。
もう陽が落ちかけていたが、後方の基地から迎撃用の気圏戦闘機が次々に発進したのだった。
☆★☆★☆
反政府側の第二気圏戦闘機大隊は、急ぎ迎撃にあがった。
「アフタバーナー点火。急速上昇!」
気圏戦闘機のパイロットであったジャスミンは、敵の大きさを見て驚く。
「……敵があんなにデカいのを持っているなんて聞いてないぞ。あれじゃまるで空中要塞だ……。」
『全機散開! 各個撃破につとめよ!』
「了解!」
大隊副隊長のジャスミンはうんざりする。
隊長機の命令はいつも『各個撃破』だ。
馬鹿の一つ覚えとはこのことだと思う。
というか今回は、相手は一機だけだ。
それに対して、こちらは32機もいるのだ。
ただ、相手は150mを越えようかとする超大型機であったのだが……。
『敵大型機よりミサイル接近!』
『全機シールド全開!』
敵大型機は、雲に隠れながらに無数の空対空ミサイルを放ってきた。
「チッ……大きい割には機敏で嫌な運動をするな」
ジャスミンは思わず舌打ちをする。
ジャスミンの機もシールド出力を全開にしてアフターバナーを点火。
全力で回避運動に入った。
次第にミサイルだけではなく、赤紫色のビームバルカンの閃光が、ジャスミンの機を追い回す。
「チィ……、まったく桁外れな戦力だな」
ジャスミンは必死に機を立て直し、雲の中へと退避した。
未知の大型機は軽快なフットワークと、無尽蔵ともいえる火力をもってしてジャスミンたちを追い詰めた。
味方が瞬く間に撃墜されていく。
『隊長機撃墜されました!』
「了解、指揮権を引き継ぐ」
『了解!』
……隊長がやられただと?
ジャスミンたちの隊長は、指揮能力は微妙であったが、空戦においては歴戦のエキスパートといれる腕前だった。
そのエキスパートがあっさりとやられたのだ。
……敵はデカいだけじゃない。
腕も相当なものだ。
地上部隊には悪いが、これは逃げるが勝ちだな……。
「全機撤退だ! 基地まで戻るぞ!」
「了解!」
ジャスミンは部下たちに撤退を指示。
味方機はエンジンに鞭うって戦場を離脱したものの、半数が未知の大型機の餌食となっていた。
この日の一方的な空戦により、反政府軍は制空権を失った。
更には未知の大型機が現れるたびに戦闘機隊は敗北。
それを見た地上部隊の士気はどんどんと下がっていったのだった。
反政府軍ロバート二等兵は、その日々のことを手帳に書き綴った。
……敵の戦力はインチキだと。
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