第二十一話……ゲルマー王国の驕り
「今日もお仕事がんばりますか!」
晴信は工場用のつなぎ服に袖を通し、新しく出来た工場へと出向く。
彼自身には元から知識は無かったが、この世界に来て沢山の知識や技術を吸収していた。
彼の会社である【ミハタ社】は、惑星コローナにて新たに設立した会社だ。
この会社は宇宙船の製造を行うことを主目的としたが、それを支えるためには技術鉱山が不可欠であった。
ここにおける技術鉱山とは、今は既に作ることが出来ない部品を、地下から採掘できる地域であって、炭田や鉄鉱山といった純粋な鉱山を指し示さない。
確かに、準惑星ディーではすべてと言っていいくらいの部品を製造できたが、その製造速度は遅く、大掛かりに宇宙船を多数造るのには、古代遺跡に頼る他なかったのである。
「村長さん、今日も宜しくお願いします!」
「あいよ、飯富社長さん。こちらこそ頼むよ。しかし、あんたも物好きだなぁ……。こんな辺境の地には偉い人は来ないもんじゃぞ」
「あはは、私は偉い人じゃないんですよ」
晴信は、その技術鉱山のある地域をよく尋ねてまわった。
技術鉱山のある地域は、概ね生物が暮らすのに適さない。
何故ならば、生物が暮らしやすい地域にある古代遺跡は、すでに前の世代が掘り起こし枯渇していたのだ。
よって、この惑星コローナにおいても、人里離れた小さな村があるような地域にしか技術鉱山はなかった。
そのような地域の開発を、惑星コローナの支配者であるベルシュミーデ伯爵は嫌った。
厳しい辺境の地は流民や貧しい者が多く住み、概して衛生状態が悪く、度々の疫病や飢饉が襲うのだ。
しかし、支配層である貴族達が忌み嫌うからこその優良な技術鉱山でもあった。
晴信はそのような地域に、自ら出向き挨拶して回ったのだ。
時には現地の人々と食事をし、時には焚火を囲み歌った。
彼の口に合わないよう食物もあったが、我慢して飲み込んだりもした。
鼻を劈くような異臭に襲われ、吐くこともままあった。
貴族達が嫌うだけの環境が、確かにそこにはあったのである。
しかし、そのような行動のお陰で、【ミハタ社】の開発案件は、現地住民とトラブルが極めて少なく、スムーズに開発が運んでいたのだった。
「社長、あんたは僻地の民と仲良くするのが巧いな」
カンスケがそう言うと、晴信は笑ってこう答えた。
「いやいや、偉い貴族の人たちと仲良くするのは苦手だよ。そこはカンスケを頼みにしているよ」
「ああ、任せとけ」
この日も、晴信とカンスケは、技術鉱山のある地域を車でまわっていた。
緑が美しい惑星コローナの地と言えども、辺境部は赤茶けた砂漠も多く、時には強い酸の雨も降った。
晴信は酸性雨が降る地域には、決してディーを同行させなかった。
何故なら錆びるからだ。
ディーは金属製のロボットであり、酸性雨は大敵だったのである。
「これじゃあ、この鉱山もロボットが使えないね……」
「……だな」
カンスケは頷く。
気候や条件によっては、機械であるロボットより、現地の生物の方が、労働適性が高いこともあったのだ。
晴信は現地民と融和を図り、著しく部品採掘率を向上させた。
さらに、その効能は技術鉱山に留まらなかった。
発電プラントの建設や、鉄鉱山や炭田、港湾などの開発もスムーズに進んだのだ。
その進捗状況は、惑星コローナの貴族達を驚愕させるほどだった。
その結果として【ミハタ社】の造船プラントは、ゲルマー星系において唯一無二の生産効率を達成させようとしていた。
☆★☆★☆
――ちょうど、この頃。
ゲルマー王国はスラー帝国との戦争を優位に進めていた。
ゲルマー王国の軍隊とは、国王家が持つ直轄軍と、各惑星を統治する貴族家の私兵の連合軍であった。
そのため、部隊によっても階級の統一性もない、言わば寄せ集めの組織であった。
その反面、スラー帝国軍は、皇帝カラシニコフが大元帥として君臨する一元化された強固な組織であった。
……であったが、食料生産性や経済力、人口や生活水準。
そのすべてが、ゲルマー王国が勝った。
つまり、軍事力を支える国力が、ゲルマー王国が上だったのである。
ゲルマー王国軍は、先月にスラー星系の第六惑星シリウスを陥落させ、次の戦場を第五惑星レイラへと移した。
惑星レイラのスラー側の防衛軍では、既に地上での戦闘を諦め、地下を戦場として想定している有様であった。
このゲルマー王国軍の攻勢に、スラー帝国軍は各地で徐々に追い詰められていった。
もはや、戦端が資源地帯であるアダマンタイトであることも、忘れ去られるほどの劣勢である。
「逃げろ!」
「待て! こら……、待たんか!」
惑星レイラでは、物資の窮乏からか、スラー帝国軍は士気が上がらず、あちこちで逃亡兵が出た。
それを止める立場の士官たちも一緒に逃げる有様であった。
しかし、その楽観的な戦況に際し、ゲルマー王国軍は徐々に驕っていった。
占領地で略奪を繰り返し、歯向かう居住コロニーはことごとく焼き払った。
食料プラントを戦車で蹂躙したり、工場プラントを再起できないほどに破壊したりした。
……よって、段々とスラー帝国に徹底抗戦の機運が高まっていった。
もし、占領地を適切に統治すれば、ゲルマー王国の勝利は動かなかっただろう。
ゲルマー王国の良識派にそのような懸念が生じる中。
「……こ、国王陛下、ご崩御!」
ゲルマー王国の国王は、このような時に、突然に亡くなった。
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