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第十九話……戦争屋と名乗る男

「提督! 傷は大丈夫ですか?」


「ああ、大体な……」


 晴信はアルキメデス提督のお見舞いに、惑星シリウスの病院を訪ねていた。

 提督はこの地の地上戦で負傷したとのことだった。


「それにしても先のダム作戦、よくやってくれた! 流石だな!」


「いえいえ」


 提督に褒められ、頭をかきながら照れる晴信。


「謙遜することはないぞ。君の働きのお陰で、先のダム作戦は成功したと言っていい。君はもっと自分に自信を持つべきだ!」


「はぁ、有難うございます」


 気のない返事をする晴信に提督は言葉を続ける。


「あのダムを確保したことで、下流域のシトロエン平野への給水が確保されたのだ。これで穀倉地帯に水が行きわたる。君がおこなったことは、スラーの庶民の生活の為にもなったのだ」


「はい」


 提督の言質は正しかった。

 スラー帝国の政府は、惑星シリウスの穀倉地帯よりも、軍需工場地帯への給水と電力を優先していた。

 そのために、各地で渇水が起こり、畑が干上がっていたのだ。

 晴信たちの働きによってダムは解放され、穀倉地帯にも水が流れるようになったのだ。



「あと……」


「なんでしょう?」


「コーヒーが飲みたくなったのでな。外で買ってきてくれまいか?」


「わかりました。直ちに!」


 晴信はその後も病院でアルキメデス提督と歓談。

 楽しいひと時を過ごしたのだった。




☆★☆★☆


 スラー帝国。


 惑星シリウスなどを含むスラー星系を統治する軍事国家である。

 主要な民族は二足歩行の昆虫型人種であるスラー民族であるが、その他の種族も混じり比較的温厚な人種政策がとられていた。


 ……が、十八代皇帝カラシニコフの時代になると、度重なる軍事費の拡大により民衆からの支持率が低下。

 その支持率の回復の為に取られた政策こそが、スラー民族以外を劣等民族とするものだった。


 もともと、スラー民族は戦闘に強いが、お金儲けは下手だった。

 その分、他の少数民族がお金を独占していたのだ。

 そのことも、スラー民族は不満を抱えていた。


 が、この政策により、他の少数民族の資産を没収することが可能となり、他の少数民族は奴隷階級となって、人買い商人に売られるなどしてしまった。

 他の少数民族はしばしば反乱を起こしたが、相手は警察と軍隊に資金を集中する政府であり、すぐに鎮圧されてしまったのだ。


 その情勢を知ったゲルマー王国宰相ベッケンバウアは、スラー帝国の民族解放を歌い戦線を拡大。

 しかし、作戦の目標はエネルギー資源地帯のアダマンタイト制圧であり、民族解放はオマケであった。


 かたや、ゲルマー王国の統治は上手くいっているかと言うと、そうでもない。

 特権階級の王族や貴族とは別に、行き過ぎた自由経済の弊害により、貧富の格差は拡大。

 庶民は家を買えないほどに不動産価格は上がり、金を持たない者は、もはや人ではないと揶揄された。


 ゲルマー王国の構成人口は85%が獣人。

 その他の少数民族が15%という比率ではある。

 民族の違いで差別されることはないが、その分、もちうる資産で差別された。


 そのために、こちらも貧困層からの暴動が多発。

 首相を兼ねる宰相ベッケンバウアは所得の再分配政策をはかるが、富裕層や大企業から資金提供をうけた王族や貴族たちが、その政策に反対して廃案となった。


 そのために、ゲルマー王国も外に敵を造ることにより、民衆の不満をそらすことを企図。

 よって、スラー帝国との戦いは、果てのない泥沼と化しているのが現状だった。




☆★☆★☆


 アルキメデスのお見舞いを終えた晴信は、準惑星ディーに帰っていた。


「ねぇ、ディー。今日のお昼は何?」


「えっと、ハンバーグと機械油ですね」


 もちろん、晴信用がハンバーグで、ディー用が機械油だ。

 ちなみにディーの主食は油である。

 油の中でも比較的、機械油が好きとのことだった。



「あー、おいしかった!」


「おいしかったですね」


 二人は昼食を食べた後、工場に戻った。

 ゲルマー王国から依頼を受けた船の建造をしなくてはならないからだ。


「ねぇ、ディー。なんでこんなに宇宙船がいるのかなぁ?」


「それは戦争で沢山壊されるからですよ……」


「……なんで、みんな戦争するんだろう?」


「なんでか分かりませんけど、人間も昔は沢山戦争してたみたいですよ……」


「……そっかぁ」


 晴信の前世は、戦争を良しとしない世界であった。

 その分、ひたすら戦争をしているこの世界の常識が分からなかった。



――翌日。

 晴信とディーは新造した輸送船の引き渡しのため、宇宙ステーションであるタイタンへと出向く。

 宇宙船の引き渡しを終えた後。

 二人は宇宙港に併設された喫茶店でコーヒーを飲んでいた。


「早く戦争が終わって平和になればいいね」


「ですねぇ」


 そんなことをしゃべっていると、晴信は後から声を掛けられた。


「あんたは造船屋だろう? 戦争している方がもうかるんじゃねーのかい?」


 晴信が後ろを振り向くと、そこには片目の獣人の男が立っていた。


「貴方はだれですか?」


「ぇ? 俺かい? 戦争屋のカンスケと言われているモンだよ!」


「……せ、戦争屋?」


 唐突な物騒な名乗りに、晴信とディーはビックリしたのであった。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] カンスケ? 軍師でしょうか。
[一言] これは名キャラの予感( ˘ω˘ )
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