第十四話……釣り堀と温泉地
「ハルノブ、そのお金で何を買うの?」
「う~ん」
晴信はゲルマー王国から、経費以外に成功報酬として3000万クレジットを得ていた。
しかし、晴信の回答は明後日の方角であった。
「釣りがしたいかなぁ?」
「ぇ!?」
ディーは驚く。
準惑星ディーハウスは、岩で出来た天体で、工場の窓から見渡す限り無機質な荒野が拡がっていたのだ。
……もちろん、水もない。
飲料水は近くのスペースコロニーである【タイタン】からタンクで購入。
その水を浄化させ繰り返し使っていたのだった。
「もっと水を買って、この星に池でも作りたいな!」
「えっ!?」
こうして晴信の願いを叶えるため、二人は【タテナシ】に巨大なタンクを括り付け、【タイタン】へと水の購入に出かけた。
そして、【タイタン】の水商人から大量に淡水と魚を購入。
ディーハウスへと持ち帰った。
そして、予定地に気密性の高い半円状のドームカプセルを建築。
その中でディーハウスの岩盤をくり抜き、そこへ水と魚を充填したのだった。
いわゆる簡易の釣り堀の完成だった。
さらには雰囲気を出すために、針葉樹や広葉樹も多数購入。
釣り堀の周りにコツコツと植えていった。
さらには釣り要素とは関係ないが、池から流れる小川も作り、趣に色を添えていったのだった。
☆★☆★☆
「やった! 釣れた!」
「意外と楽しいですね!」
晴信とディーは作った釣り堀で釣りを楽しむ。
作ったというか、もはや造成に近い大工事ではあったのだが……。
ちなみにディーは釣りをしたことが無かった。
晴信に教わりながら、恐る恐る餌をつけはじめ、二時間も経過すれば、釣りの虜となっていのだった。
二人は釣った魚を焼き、それを晴信は夕飯としてたべた。
お腹いっぱいになった晴信は、寝転びながらに呟く。
「うーん、次は温泉に入りたいなぁ~」
「温泉ですか?」
またもや晴信の意外な要望。
つまりは露天風呂を建築したいということであった。
温泉を造ろうにも、ディーハウスには水源がない。
二人は【タテナシ】に巨大なタンクを括り付け、再び【タイタン】へと水の購入に出かけたのだった。
☆★☆★☆
「……また水ですかぃ?」
二人は【タイタン】の水商人に驚かれる。
なにしろ、個人客が短期間に二度も何万リットルの淡水の購入だ。
ちなみに、この世界で水は貴重だ。
地球でのそれの比ではない。
しかし、晴信の行動を怪しむというより、実は水商人は在庫が切れていたのであった。
『う~ん』と、水商人は首をひねる。
しかし、どちらにしろ、売り物の水がない事にはやることは一つであった。
「淡水は売り切れなんで、一緒に採取にいきますか?」
「採取ですか?」
「……ええ、星系の外縁部の氷の小惑星から剥ぎ取ってくるんですよ、お手伝いの御礼もしますよ!」
「じゃあ、行きます!」
水商人の宇宙船と一緒に、【タテナシ】は【タイタン】の宇宙港を出発。
星系外縁部へと氷を求めて旅立った。
☆★☆★☆
――星系外縁部。
そこは薄い赤紫色のガスと塵が、帯のようになって漂っている場所である。
恒星から遠いため熱が届かず、大きな氷でできた天体も数多く浮遊していた。
「衝角用意!」
『極振動カッター準備良し!』
「GO!」
晴信たちの船である【タテナシ】の衝角は、氷を切り出すのにとても向いていた。
艦首にとりつけられた鋭利なカッターが、氷の小惑星を切り刻み、岩石部から氷の部分を剥離させる。
そうしたあと、さらに氷を運びやすいブロック状に変えていったのだった。
そうして切り出した氷は、水商人が安全を検査していった。
「いやあ、兄さんやりますな!」
「いえいえ」
水商人に氷の切り出しを褒められてまんざらでもない晴信。
「良かったら、たまにウチでバイトしてくれんかね?」
「いいですよ」
こうして晴信は大量の淡水の調達に無事成功。
たまに水商人のところでバイトする約束まで取り付けたのだった。
☆★☆★☆
「よし、温泉施設を造るぞ!」
「……でも、この星に火山はないですよ」
「えー!?」
温泉を造るにはやはり地熱などの熱源が必要。
それを生み出す下地は、どうもディーハウスには無かったのだ。
「どうしよう?」
「こっそり地下にてボイラーで炊きますかね?」
風情のないことをディーは言ったが、他に方法はない。
晴信とディーは温泉予定地の地下をくり抜き、工場にあった旧型の核融合炉をすえつけることにしたのだった。
「それじゃあ、地上部だけはそれらしく作ろう!」
「はい!」
晴信はディーに完成予想図を見せ、それに合わせて釣り堀の隣接地の土地を整地。
風情のある岩場を形成した。
かけながしの露天風呂以外に、サウナ風呂や水風呂も設置していった。
この大工事に携わる労力として、工場のお掃除ロボットが多数動員させていった。
「やったー、完成!」
「おお!」
――突貫工事の末。
五日後には風光明媚な温泉地が形成された。
「いや~やっぱり自然は良いね~♪」
晴信は湯につかりながらにそう言う。
しかし、一緒に湯につかるディーはロボットで、そもそもこの温泉施設自体が自然とは全く関係ない作りものであった。
「……」
そのことについて、ディーは人間って不思議な生き物だなぁと感じたが、あえて口にはしなかったのだった。
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