第十一話……輸送部隊の護衛
「わたくし、ゲルマー王国の防衛副大臣を務めておりますシュミットと申します」
中年のナイスミドルな獣人は、意外なことに丁寧な話し方と対応であった。
「……で、ですね。いまゲルマー王国は艦艇が不足しております。宇宙船をお持ちの方には臨時で王国軍に勤務して頂けないかと……」
「……はぁ」
晴信は気のない返事をする。
もちろん悪気はない。
「飯富殿にも、少佐の地位と経費以外に月給640万クレジットをお約束しますよ!」
「640万クレジットですって?」
これに反応したのはディーだ。
この世界の人造蛋白製牛丼は一杯100クレジットだ。
さらに言えば、通貨の価値を保持するために、通貨は全て兌換性で、いつでも純金かエネルギーに交換することが出来る貴重なものだったのだ。
「ハルノブ、やりましょう!」
「おおう、有難い。飯富君の船は見るからに装甲艦名義でいいかな? 二十日後の作戦には是非参加してくれ!」
肝心な晴信の意見はどこへやら。
話は副大臣とお金に目がくらんだディーによって決した。
晴信は一応、この時点で王国軍の少佐となったのだった。
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王国軍に臨時勤務の決まった晴信は、工場にて【タテナシ】の改装を行っていた。
正直、やられるのが嫌だったためだ。
それは彼の生来の気質といえよう。
「ねぇ、ハルノブ。防御兵器ばかり積んでも攻撃できないよ!」
「え~!?」
晴信が【タテナシ】に追加装備したものと言えば、重力シールドに荷電防壁、迎撃ミサイルに追加防御区画など、防御に関する装備をてんこ盛りにしていっていたのだ。
「じゃあこれなんかどう?」
晴信が工場の地下から持ち出してきた人間たちの遺物。
それは極振動電子カッターと言われる衝角であった。
まさかの近接攻撃兵器である。
この衝角は、敵の船に体当たりをして撃沈する趣向のものである。
まさに角というにふさわしく、艦首から長い槍のように突き出していた。
この長い衝角を艦首に取りつけたため、【タテナシ】は海獣である一角みたいな形状になってしまった。
「まぁ、前線にでることも少ないだろうしね……」
ディーは独り言をつぶやく。
晴信の防御主体な構想は群を抜いており、結局は重装甲艦のような態をなし、二十日後の作戦参加へ挑んだのであった。
☆★☆★☆
「ごほん、君が飯富少佐かね?」
「はい閣下!」
二十日後に指定された場所で晴信は上官に会う。
上官の名はアルキメデス中将。
はっきり言えばよぼよぼの老齢の獣人であった。
アルキメデス中将は老朽化した小型空母に座乗。
その船以外は、皆晴信と同じような臨時雇いであり、その合計数は8隻であった。
「我々の任務は輸送艦の護衛だ。大切な任務だから頑張ってくれたまえ!」
中将はそう言って、護衛対象の輸送艦のデータを各位に配ってくれた。
200m級の小型輸送船40隻。
結構な数である。
これを非常勤部隊のみで護衛する感覚が晴信には分からなかった。
「全艦出撃!」
サイレンが鳴り、アルキメデス中将が率いる輸送艦隊は一路前線を目指した。
☆★☆★☆
――護衛途中。
何度か宇宙海賊に出くわす。
「攻撃開始!」
「輸送部隊に近づけるな!」
晴信たちは全力で防戦。
ビームが交錯し、ミサイルが舞った。
そして次々に宇宙海賊たちを血祭りにあげていった。
……こうして晴信は実戦経験を確実に積んでいく。
そうこうして二週間たった時には無事に前線に到着。
前線部隊に貴重な補給物資を届けた。
その後、輸送船を護衛し、ゲルマー王国主星へと帰投。
作戦を成功裏に追えた。
この作戦での晴信のスコアは……。
宇宙海賊船2隻の撃沈。
2隻の大破、1隻の拿捕といったものであった。
☆★☆★☆
ゲルマー王国の主星のファミレスにおいて、晴信は再びシュミット副大臣に会っていた。
会合場所の選定は晴信であった。
「いやあ、飯富君。頑張ってくれてありがとう。アルキメデス将軍からも話は聞いているよ」
副大臣はとても褒めてくれたが、晴信は高級肘川牛のステーキにかぶりつき、ディーは特製機械オイルを堪能していた。
もちろん副大臣の奢りであり、二人は容赦なくお代わりをした。
「でだ……」
副大臣は少し声のトーンを落として話し始めた。
「いまはまだ内緒なのだが、我々は近くの星系にて、スラー帝国以外の有人星系と遭遇してしまったのだよ……」
「!?」
これにはディーが驚く。
文明のある星系の発見と言えば聞こえがいいが、相手がコチラを凌ぐ科学力を持っていれば、コチラの文明が滅ぼされかねない案件であった。
「幸いなことに、文明レベルは同じくらいらしい。でね、この星系を詳しく調べるために、アルキメデス提督と調査に向かって貰えないか? もちろん給料は今の倍をだすことを約束しよう!」
「やります!」
「えー!?」
晴信の『えー!?』に対して、『やります!』といったのはお金に目のないディー。
結局、輸送作戦で仲良くなったアルキメデス中将と一緒ということもあり、晴信は快諾。
調査部隊を編成し、調査へと向かうこととなった。
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