第十話……ゲルマー王国とスラー帝国
ゲルマー王国とスラー帝国。
この二つの国家は長年抗争を続けていた。
各々の国家は一つの有人星系に領地を有する。
近年、その星系間の中間に、エネルギーを採掘できる小惑星帯が発見され、激しい争いを誘引していた。
ゲルマー王国は主に獣人たちの政権で、スラー帝国は主に虫人たちの政権だった。
二つとも中世を思わせる封建的な独裁政権であり、共和制ではない。
二つの政権は、元はと言えば、太古の人間たちの負の遺産である。
過去より人間たちの超文明は、あちこちの星系を植民惑星として勢力を拡大していったが、人間同士の戦いにより人間の種は滅んでしまう。
それによりあちこちの星系で、各文明生命体が独立。
主に封建的な独裁国家として自立していったのだ。
また、この二つの種族はお互いに温暖な惑星を好んだ。
よって、居住環境も似通うために、お互いの利害は常に衝突した。
二つの国家は、以前に滅んだ人間たちの科学力を借り、四度の大きな大戦を戦って尚、勝敗が付かないでいた。
又、どちらの国家も科学力は低く、星間航行可能な宇宙船は造れない。
気密性のある外殻くらいは作れるのだが、実用的なレーザー砲や電算機や機関など、重要部品が作れないでいたのだ。
よって、人間たちの遺産である古い宇宙船を改造して使い、より多くの重要部品を求め、星系外に勢力圏を広げていた。
逆に言えば、人間たちの文明遺産を大量に掘り起こすたびに、大きな戦が起きるきっかけとなったのだ。
度重なる戦争により、大規模な環境破壊を引き起こし、双方の居住環境が悪化。
食料不足などや疫病等を引き起こし、多くの人口が激減し今に至る。
しかし、二つの政権は人口が激減して尚、人間たちの科学力を欲した。
無理までして、星系内の無人惑星を探査、掘削し、修復可能な宇宙船を入手。
それを改造、武装を施し前線に投入し続けたのだ。
又、この二つの勢力の他に、力をもった勢力がもう一つある。
それが惑星間ギルドである。
惑星間ギルドは民間組織であり、ゲルマー王国にもスラー王国にも商圏を広げていた。
その力の源は、人間たちが残した技術を独自に採掘、および販売できることだ。
惑星間ギルドの発足は古く、ゲルマー王国が勃興する以前に発足した巨大商社であると言われる。
発足人は人間たちの遺産であるアンドロイドとの風聞がある。
……が、長い期間を経て、そのアンドロイドは壊れ、今は獣人と虫人の協調的な経営体制に移行しているとの噂だ。
以前に何度も、両政権がこの惑星間ギルドを掌中に収めようとしたが、その度に惑星間ギルドはその反対の政権の援助を頼み、経済的にも軍事的にも独立を保っていたのだった。
しかし、今の惑星間ギルドは、両政権の成長に反比例し、法人自体の実態規模は小さくなっていった。
……が、多くの無法者たちが掘り当てる文明遺産を買い取り販売することを専売事業とし、今でも隠然たる勢力を誇る第三勢力である。
そして、晴信の住む準惑星は、荒廃したゲルマー王国の支配する星系の外縁にあった。
近くには宇宙ステーション【タイタン】があるが、これも又、太古に繁栄した人間が残した遺物である。
ちなみに少なくとも二つの国家間において、満足な宇宙船を一から造れるのは、晴信の工場だけである。
それは少なくとも今は、ほとんどの人が知らない事実であった。
……もし、知られれば、争奪戦になるのは火を見るよりも明らかである。
惑星間ギルドの思惑はともかくとして。
今回、ゲルマー王国もスラー帝国も、エネルギー資源帯への出兵策を強化。
それに伴い、民間向けの宇宙船の割り振りは激減。
よって宇宙船の価格は急上昇した。
特に製造技術が失われたエンジンや電算機は、単体価格でも高騰。
一般的な商人が買えない値段となっていた。
ちなみに、以前の晴信とディーはどうしていたかと言うと、自作がバレないように、使えないような古いエンジンや、壊れた電算機を惑星間ギルドで購入。
それと引き換えに、新しい部品を工場で作り、それを船に積載することで、帳簿上の数だけの帳尻は合わせていたのだ。
よって、晴信の工場は、表向きは修理工場でしかなかったのだ。
……が、以前よりの大量の修理案件をこなすうちに、晴信の修理工場の名は売れていった。
遂にはゲルマー王国の目に留まり、ついには使者が来るようになっていったのであった。
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「ハルノブ、お客様だよ!」
「はーい!」
晴信たちは商談や引き渡しなどは、近くの宇宙ステーションである【タイタン】にて毎回行っていた。
それはディーが勧めた護身術であり、晴信も理解していた。
よって、今回のお客様との面会も、【タイタン】の宇宙港に併設された喫茶店で行われたのだった。
「初めまして」
今回のお客が差し出した立派な名刺を見て、晴信はびっくりする。
名刺には、金字でゲルマー王国軍防衛副大臣との肩書があったのだ。
「……は、初めまして!」
……大臣?
いや副大臣か?
それにしても、偉い人とか苦手だなー。
などと内心思い、声がこころなしか引き攣る晴信であった。
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