第一話……未知の工場へ
寝直したい気分を抑え、高校一年生の飯富晴信(16)は思った。
今日は英語のテストの日。
早く起きて学校に行かなくては……。
……しかし、
「どこだ? ここは!」
起きてみれば、知らない天井。
それは硬質な金属で出来ているようだった。
晴信はベッドから飛び起き、周囲を見回す。
そこは見覚えのない無機質な一室だった。
「おはようございます。お加減は如何ですか?」
突然何もない壁から扉が開き、ずんぐりとした銀色のロボットが部屋に入って来た。
まん丸な愛嬌のある頭部が、晴信の警戒心を和らげる。
晴信は自分の頬をつねるも痛い。
どうやら夢ではないらしい。
「君は誰?」
晴信はロボットに尋ねる。
「私はDCB-46、ハルノブ様のお世話係です。以後、ディーとお呼びください」
ロボットは無機質な声でそう答えた。
「僕は学校に行かなきゃならない! ここはどこなんだ?」
晴信に問い詰められ、ディーは困惑した表情を浮かべる。
見た目には黄色と青色の信号が、交互に点滅していただけであるが……。
「貴方様は最後の人類です。私達の希望なのです……」
なんだかわけのわからないこと言うロボットに、困惑する晴信。
しかし、晴信は最後の人類という言葉を聞き逃さなかった。
「最後の人類ってなんだよ!? 人間っていっぱいいるもんじゃないのか?」
その言葉を聞いたディーは、何もない壁から静かに窓を開けた。
窓の外に広がるのは、岩石だらけの暗い大地。
空に広がるのは漆黒の大宇宙であった。
「地球はどこにあるの?」
思わず晴信はディーに問いつめるが、
「地球ってなんですか?」
どうやらディーは地球を知らないらしい。
晴信は家に連絡を取ろうにも、携帯電話も無かった。
「施設をご案内します」
その後、晴信はディーについて回り、彼が今後住まうであろう構造物の中を歩いた。
そこには、SFチックなモニターや計器が沢山あった。
晴信自身それを見て、どこか違う世界に飛ばされて、次元転移なりなんなりを起こしたのだと思うようになっていった。
「ここが、ハルノブ様の工場になります!」
「えー!?」
小高い位置にある部屋の窓から一望できる景色にビックリする。
ディーから説明を受ける晴信の眼下には、造船所や数々の兵器工場らしき施設が所狭しと並んでいたのだった……。
☆★☆★☆
晴信はディーが持ってきてくれた昼食を食べながら、この施設について聞いてみることにした。
「ここは宇宙船を作る工場なのです! そしてハルノブ様は、ここの工場の主なのです!」
「……ぇ? 主だって?」
晴信はディーに聞き返した。
彼は高校に入ったばかりで、なんの知識もない一般人なのだ。
「僕が宇宙船を作れるとは思えないけど……」
「そんなことはありませんよ!」
晴信はディーの勧めるままに、この施設の生体適合検査を受ける。
このテストは、全宇宙で一人しか適合できない検査機らしい。
結果は見事【適合】。
ものの見事に替えの効かない、ただ一人の工場長であることが立証されてしまったのであった。
☆★☆★☆
工場の司令室の椅子に座ると、晴信はディーに問うた。
「……でさ、何作っても良いの?」
「構いませんよ。ご自由にどうぞ」
晴信はディーに教わりながらに、設計に使う操作卓の方法を覚えはじめる。
それはゲームの操作のようで、ゲームが好きな彼にとっては覚えやすいものであった。
「いっちょやってみるか!?」
ある程度覚えたところで、晴信は200M級の宇宙船を設計してみた。
居住区画を配置したあとに、機関区画のモジュールを配置。
まるでブロック遊びのようにすいすいと組み上がっていった。
「お上手ですね!?」
相手はロボットであるが、褒められてまんざらでもない。
大まかな設計の組み立てが終わったので、晴信は実際に建造するよう操作卓に命じた。
……が、
【システムエラー】……材料が足りません。
「……あ、この工場は設備が整っているのですけど、資材や原料は無いのです!」
ディーが付け足すように説明してくる。
「……、原料ってどこで手に入れるんだよ!?」
「外は一面岩石ですので、ご自由に採取できます!」
晴信はディーに勧められるまま、船外スーツに着替え、建物の外に出た。
☆★☆★☆
「きれいだなぁ……」
晴信は誰に言うのでもなく呟く。
工場があるこの天体には大気がなく、空の星が美しすぎるほど煌めいていた。
「この鉱石って使えるのか?」
晴信がディーに聞くと、ディーが目に装着する眼鏡型のセンサーを手渡してくる。
「これを通してみると、岩石の成分比や、構造の弱い部分がわかりますから、採取に役立てて下さい」
それをつけると、確かに足元の岩石のデータが、眼前に次々に飛び込んできた。
……なるほど、このセンサーを使って有用な鉱石を集めたらいいんだな。
晴信は一人納得し、それから二時間の間、黙々と鉱石集めに精を出した。
集めた鉱石は工場に持ち帰り、一部を溶かし精錬したのだった。
☆★☆★☆
「……ふぅ」
晴信は工場に戻り、船外スーツを脱ぎ、体の汗をタオルで拭いた。
その後、ディーが入れてくれた紅茶を飲み、設計作業に戻った。
「なにをおつくりになるので!?」
「うーん、最初は、自動で原料を採掘してくれるロボットかな!?」
……正直、鉱石収集は辛い。
その証拠に、晴信の手は潰れた豆だらけであった。
晴信はそこを楽にして、より沢山の材料を手にしようとしていたのだった……。
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