召喚勇者いわく、転生者は黒い悪魔
文字の書き方を忘れたので、思いつきのショート・ショート
ネタ被りまくってると思いますが、いろんな花を愛でるお気持ちでどうぞ
物心ついた頃に気づいた。
自分は異世界転生した!しかも前世で履修済みの世界であると……!
……そう、その者"たち"は気付き、行動を開始した。
「勇者召喚の儀式をする前に、新鋭の冒険者が各地で瘴気からの危機を救っている?」
「学園で王子が側近と一緒に元平民の女にうつつを抜かしている?」
「その王子の婚約者の令嬢が王子を放って、産業革命を起こしている?」
「見たことも無いような動物を数匹連れたやたら地味な人間がいる?」
「無償で病人やけが人を癒やす聖人がいる?」
「城下街で、目にも止まらぬ黒い影が目撃されている?」
「同じく城下街で最近評判の飲食店がある?」
最後のどうでも良くない?
報告を受けた王は、そう思った。
「た、大変です王…!」
「今度はなんだ」
「ひ、姫がさらわれました…魔王を名乗る男に!」
「魔王って誰!?」
この世界に魔王の伝承はない。
「魔王と名乗ってはおりましたが…どこかで見た顔でした。いま消息と素性洗っています…」
「姫は大丈夫なのか…?」
「何故か笑顔でむしろ嬉々として連れて行かれました…魔王を名乗った者の洗脳のような能力でしょうか…」
訳がわからない。
とりあえず、勇者召喚しよ。
王は理解することを放棄した。
後に召喚された勇者は言った。いや、叫んだ。
「この異世界、どうなんてんだよ!くそ神ィ!」と。
この異世界の創世神は悪くない。
分野の違う担当者……担当神がそれぞれたまたま同じ世界に送り込んでしまっただけである。
神にも運があるんだろうか?この異世界の創世神は運が最低値なのかもしれない。そんな概念があるのは不明だが。
「おい、普通自分の世界に他の世界から魂だけだとしても受け入れるんなら、異常に気付くだろうが」
召喚勇者に突っ込まれた。そうだね。
「せめて前世の記憶は消せ!」
正論は、ときに神も傷つける。
創世神は、直接自分の世界の人間に介入出来ない。なので、直接意思疎通が出来るのは異世界から”召喚”した勇者だけである。
また、神同士も報連相が基本出来ない。パワーバランス的な意味で。
「使えねえ駄神め!そして召喚やがったアホ王ぅぅぅ!てめぇら自分の世界は自分でなんとかしろやぁ!!」
召喚された勇者がブチ切れても仕方ない。だって、まだまだ”転生者”が居るのだ。
自分だけが”チート転生した”と思い込んで。
後の伝承に残された召喚勇者の語録には【やはり物理しか勝たん】と記されている。
何が起きたのか…。事件が多すぎて【混沌期】としか記載されていない。記録も面倒になったんだろう。
その混沌期後も異世界の人類が生存しているので、ブチ切れながらも対処した召喚勇者は悲しい事に優秀でまともな人間だったんだろう。とても悲しい事に。
生態系に多少の変化があったかもしれないが、滅亡してない事が奇跡だ。
召喚勇者が無事元の世界に帰還し、幸せに暮らしている事を、心よりお祈り申し上げます。
その他の召喚勇者語録
【米と醤油と味噌は史上】【モフモフでアニマルセラピー】【身体つくりは食から】【肌肉は裏切らない】【チート無双は幻想】…など。
美味しいご飯はとっても重要だよ、王様。
おわり。