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31話 『改竄された歴史』



 今から約2400年前、世は対魔大戦の最中だった──



 原初、人類は魔族に蹂躙され、6つの大陸のうち、4つの大陸が魔族によって支配されていた。それを見兼ねた神は、人類へ一つの対抗手段を授ける。


 それは──勇者召喚の術だった。


 勇者召喚の術は大量の魔力が必要となり、何百人もの魔導師によって召喚は行われる。

 異世界から来た勇者は確定で天恵を授かり、ほとんどが複数持ちだという。

 それに加えて異界の者は、基礎能力値も高かったようだ。


 だが、それでも人類は皆不安を抱いていた。

 何故なら、これまで人類は束になっても魔族に勝てなかったからだ。そんな存在に勇者とやらが勝てる保証などどこにもない。

 生命力と再生能力に優れ、同じレベルでも魔族の方が強いのは言うまでもないだろう。唯一の救いは、魔族の繁殖スピードが遅い事だった。


 それから召喚が各国でされ続け、勇者の育成が行われる。順調に力をつけていった勇者達は、各地の最前線へ送られた。

 だが、戦況は焼け石に水。以前より討伐がしやすくなっただけで、大陸の奪還作戦には踏み出せない。


 そんな状況が続き10年経った頃、1人の女性勇者が遂に大陸奪還作戦を計画。

 魔族領での初戦で大都市を陥落させる事に成功し、前哨基地を各地に張り巡らせた。


 これを計画した勇者の名前は『ヒマリ』

 女性で高い知性と美しい容姿を持っていたとされ、歴史上初めてミスリルの錬金に成功した人物だ。

 『勇者ヒマリ』なしに人類の勝利は無かったとまで言われるくらいで、この勇者の製作したフルプレートアーマーは全てミスリル合金でできていたそう。

 これにより一般兵でも、より魔族の攻撃を耐えることができるようになり、死傷者の数も大幅に減った。

 正確な数は未だ不明だが、彼女はこのフルプレートアーマーを何十万人分製作したと言われている。それなのに出土する数が少なく、世界で数えるほどしか発見されていない。


 それから5年が経つと、人類は全ての大陸の奪還に成功。魔族は根絶やし同然だった。

 魔王と四天王は9人の勇者に倒され、世界に平和が訪れる。

 だが、残念な事に約2400年前の出来事で、書物などは大量に紛失し、名前の判明している勇者は3人だけ。


 勇者『ヒマリ』

 勇者『カナデ』

 勇者『レン』


 異世界出身とは言えど、この世界を救った救世主だ。歴史に名が残らないのは、失礼にあたるだろう。


 いや、残らなかったのはこの後に起こった事件がきっかけなのかもしれない。


 ──勇者による世界征服。


 人類が救われ、神は送還術と呼ばれる元の世界に返す術を人類に授けたが、数人の勇者がそれに反対し、その有り余る力でこの世界を支配しようとしたのだ。

 だが、勇者は愚かだったようだ。自分達が最初にこの世界に来た時よりも、人類は何倍も強くなっていたからだ。それを分からず勇者はいとも簡単に全滅したのだった。

 悲しい事に、その勇者の中には上記で挙げた者もいたらしい。

 勇者召喚・送還の術は現在不明となっている。


 ──これが対魔大戦の大まかな歴史である。


 一番不思議なのが、今の方が魔法技術や科学技術が劣っている事。普通なら年月を重ねた今の方が高いはずだろう。

 その答えは勇者討伐後の空白の100年間に真相があると言われているが、誰一人知る者はいない──



 と、歴史書にはそんな事が記されていた。


 理事長から聞いた過去の出来事と大きく異なる。

 各国の王が一方的に勇者狩りを初めたのに、勇者側が悪いように改竄されていた。


 そして、エルフやドワーフなどの亜人種が活躍した歴史は一切なく、現在は世界各国の奴隷として扱われている。簡単に言えば、この世界は『人間至上主義』だ。

 理事長のいた時代では、人間と亜人種が一丸となって魔族を撲滅したと言っていた。というか、元より人間と亜人種は仲が良かったらしい。それが、今とはなっては奴隷。どこで歴史が狂ってしまったのだろうか?

 この対魔大戦時の『人類』という言葉は、亜人種も含んだ言葉であったが、現在は人間種のみという解釈に変わってしまっている。


 俺は、かつてないほど胸糞が悪くなった。

 人と亜人は助け合い、共存していた歴史。

 それが無かった事にされ、人間のいいように使われている現代。


 ──あ! そうだ、そうだよ!


 やっと俺がこの異世界に転移された理由がわかった。

 それは亜人種を救ってほしいという神の意志なんだ。

 あの時光を放った瞬間、自分のテレポートだと思ったが、理事長の言った通りあれは召喚だったんだ!

 そもそも、テレポートは一度行ったところにしか上手く転移できないし、光を放つことはない。そう考えると、召喚されたと言われた方が断然しっくりくる。


 その時、背後から女性に話しかけられた。受付にいた人だった。


「すみません、もう閉館の時間です」

「ああ、もうこんな時間か。すぐ出ます」


 そろそろ暗くなってきたし、一旦地球に戻ろう。

 俺は図書館を出ると、寄り道せずに宿に向かう。



 だが、この時の俺は知る由もなかった。

 まさか俺がいない間に、学校が大変な事になっているなんて──



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