27話 『恋慕』
私は、人生で初めて恋をしていた。
相手は同じクラスの男子だった──
私は幼い頃から超能力が使えた。レベルが低いものであったけれど、物を浮かせたり、火を出せたり。
そんなある日、政府から『長南能力開発学校』への入学依頼のようなものが届いた。
初めは揶揄っているのかと思ったが、数日後家に黒服の人が数人来て説明を受け、本当だという事に驚く。
「皐月 千尋様のご自宅でしょうか?」
話によると、これは政府極秘の超能力学校だという事だった。当然そんな怪しいところに両親は行かせるはずもなく、猛反発される。
私自身もちょっと怖かったし、完全寮制で不安もあったので行くのを躊躇っていた。
その時、ふと過去がフラッシュバックした──
「なぁ、ちひろぉ。お金貸してくんね?」
「ハハハハッ、ごめん! 手が滑ったぁ!」
「近寄んないでくんね? 菌がうつる」
そう、私はいじめを受けていた。中学3年間、クラスのほぼ全員から。
きっかけは、屯している女子達を横目で一目したこと。恐らく睨まれたと思われたんだろう。原因は生まれつき目付きの悪いこの私の顔だ。
このまま地元の高校に上がっても、ここは田舎だから殆どの人がそこに入学する。そしたら、また虐められるかもしれない。
そう思った私は、能力開発学校に入学し、新天地でまた1からやり直そう。そう決心した。
そうして春が訪れ、桜が満開の入学式。
化粧をし、髪を染め、全くの別人となる門出。
掲示板を見ると、能力の低い私はJクラスという最低ランクのクラスだった。
だけど、別にそんな事はどうだっていい。
私は、とにかく高校デビューを果たすことだけを考えていたのだから。
クラスは、男子23人女子20人の計43人。
早起きして寮から既に出ていた私は、その中の誰よりも早く超能力演習場にきていた。
と、思ったら1人だけ、右斜め前に座っているのに気づく。
(凄い集中してるなぁ……)
その男の人は、私の座る音にも微動だにせず、ただ黙々と小説を読んでいた。
話しかけようにも、凄い集中してるから声を掛けづらいし、初めに男の人に声掛けると女子からヘイトを集めそうだからやめておこう。
それから待っていると、ぞろぞろと人が席に座り出し、入学式が始まる。
「皆さん、入学おめでとうございます──」
生徒会長が前に立ち、副理事長が前に立ち、順調にプログラムは進んだ。
「──では、Sクラスから順に指定された教室に移動してください」
教室はA棟の4階にあり、校内は相当入り組んでいた。
そして、授業の事や年間の行事について説明されると、お昼の時間になる。
(ここからが勝負だ)
席を立つと、すぐさまイケてる女子数人に積極的に話しかけ、昼飯を同席する。
そこからはもう流れるままに事が進み、午後の授業が始まろうとする頃には、女子達の輪に入ることができた。
全てはこの日の為に、化粧の練習をし、オンラインゲームでコミュ力を上げておいた私の努力があったからだろう。
友達がおり、気軽に話せる相手がいる──かくして、私の高校デビューは大成功を収めたのだった。
そうして学校に馴染んで一ヶ月が経ったある日、今まで恋をしたことがない私に春が訪れた。
その想い人は、同じクラスの柚留君だ。後ろから2番目の窓際の席で、いつも小説を読んでいる。
この教室は広さ的に縦7席、横6席になり、出席番号6番の柚留君とは隣の席だった。
自分でも何に惹かれたのかわからない。
物静かなところ? 真面目なところ? 実は優しいところ?
恋愛とはこうもあやふやで、もやもやするものだとは思わなかった。
だけど、自然と悪い気はしない。寧ろ心を穏やかにする。
でも、今まで恋愛どころか男子と話す事さえしてこなかった私だ。アタックするにもどうすればいいかわからない。それに柚留君は何にも関心を示さず、誰とも話そうとしない。
陰ながら想ってる女子も私以外にいるが、話しかけても受けだけでこっちが質問責めしているみたいになってしまう。まるで興味がないみたいだ。それならまだマシな方で、中には完全に無視される人もいる。
友達も作らないようで、基本誰と一緒にいる訳でもない。一回だけ男子寮に行った際に誰かと笑顔で会話していたので、根暗な訳ではないと思う。初めて見た笑顔は少しキュンとした。
こんな事ならお母さんに恋愛の秘訣でも聞いてくるんだったよ。
「あーもうっ、一体どうすればいいの!」
そんな気持ちを抱えながら、何もせず7月を迎えたある日、彼は私の前から姿を消した。
表向きは家庭の事情により休学とのこのだが、私はそうとは思えない。
だってあの日、私は何者かに連れ去られる柚留君を見てしまったのだから──




