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10話 『捲土重来を期す』



『2500年 15日 09:21』



「……998、999、1000。ふぅ、こんぐらいでやめとくか」


 魔剣グラムを地面に刺し、ステータスウィンドウを広げる。


────────────────

《ステータス》

【名 前】神無月 柚留 

【種 族】人間

【レベル】338

【魔力量】29960/29960



《スキル》

【鑑定Ex】【言語理解Ex】【投擲Ex】【装備人Ex】【緑の手Ex】【痛覚耐性Ex】【毒物耐性Ex】【麻痺耐性Ex】【持久力強化Ex】【身体強化Ex】【駿足Ex】【鉄の胃袋Ex】【睡眠耐性Ex】【免疫力強化Ex】【水中呼吸Ex】【魔力回復lv7】【魔力量拡張lv8】【暗視lv9】【反響定位lv7】【魔力量拡張lv8】【魔力回復lv6】【鉄拳lv5】【狂化lv2】【明鏡止水lv3】


スキルポイント337

────────────────


 鍛錬に鍛錬を積み重ね幾星霜。もはや最初の頃の記憶はほぼない。

 覚えているといったら、ここに来る前と二階層にいたあの化け物。作業化された鍛錬の日々。


 今の俺の実力は木を打撃で粉砕でき、石を兎に投げれば肉塊が飛び散り食べれなくなる。

 装備人も【Ex】になったことで、基礎レベルにプラスlv1000の装備を持てるようになった。このように【Ex】はどれも規格外でぶっ壊れ性能を持ったいわゆるチートスキル。

 しかし、俺に植え付けられたトラウマはそのチートスキル達を持っていても恐怖で動けなくなるほど心の奥深くに刻まれてしまった。


 だが、時はきた。この一階層に囚われた生活に終止符を、そしてこのダンジョン攻略の幕開けを。

 戦闘準備を整えた俺は二階層へ続く階段を見下ろし、仁王像の如く佇んでいた。スキル【明鏡止水】のおかげで少し恐怖心が和らぐ。


「よし、行こう」


 小さくそう口ずさむと、俺は階段を一歩一歩力強く下っていく。あれから2500年経ったが、石煉瓦の壁は色褪せることなくあの時と全く同じだった。

 こうして階段を下っていると、家の近くにあった神社の100段階段を思い出す。偶然にもこの階段の段数も数えたところ、ちょうど100段あった。

 そうして階段の下に着き、うっすらと青く光った菱形の石を横目で見る。


「キリキリ、キリッ」


 そういえばあの時もこの音を聞いた気が──


 ガキンッ!


 金属と金属がぶつかり合う音がしたあと、俺は壁に打ちつけられていた。


 危ねぇ、間一髪のところでスキル【鉄拳】で防いだからいいものの下手したら死んでたぞ。

 だが、今のでわかった。俺はこいつの技を見切れるほどには強くなっているってことを。


 魔剣グラムの柄を強く握り、剣を構える。

 カマキリは両手を頭上に上げて威嚇した。


 カマキリは複眼によって全方向見え、死角がほぼない。どんな卑怯な手を使おうと防がれてしまう。

 フィジカルとスピードはまだこいつの方が上。しかし、スキルの数なら俺の方に分がある。勝てる可能性は十分にあるわけだ。まずは投擲でやつの力量を探ろう。


「【投擲Ex】」


 ビュンッと石が風を切り、カマキリへと勢いよく当たる。

 当たった左脇腹の装甲は大きく凹み、ひび割れから血がポタポタと滴っていた。


「キリッキリキリ、キリッ」


 不快な鳴き声を発すると、ひとっ飛びでこちらに突進。

 鎌を剣で受け流し右斜め前に逃げようと試みたが、想像以上のパワーに再び壁に打ち付けられる。


 吹っ飛ばされる間際、やつに一太刀入れたはずが傷一つ付きやしない。恐らく【身体装甲】の効果なのだろう。

 再度距離を取りたいが、テレポートは三回。ここぞという時のために温存だ。なんなら使わずに倒したい。

 待てよ、【投擲】が効いたということは、同じような攻撃なら通用するかも。一点に集中するような攻撃……。


 【身体強化】のExレベルで得た追加能力、『一時的に身体能力を通常の1.5倍に』を発動させ、【駿足】で更に脚力を1.5倍に。念には念を【鉄拳】のサブ能力である『握力強化』も発動させる。

 この威力全てを剣の突きに込めることが出来れば、ひとたまりもないだろう。チャンスは能力が切れる1分間のみ。相手が次に突っ込んでくる瞬間にカウンターだ。


「キリッ、キリッキリキリ」


 カマキリは口をモゴモゴさせ、黒板を爪で引っ掻くような音を出す。

 一度溜めを作ると、右の鎌を大きく振り上げ一直線に飛びかかってきた。


(今だ!)


 そのタイミングで俺はスキル【駿足】【身体強化】【鉄拳】を発動させ、両手で柄を持ち、カマキリの胴体の中心目掛けて全力で跳ぶ。

 カマキリは突然素早くなった俺の動きに対応できず、もろに渾身の突きをその身に食らった。鎌は無様にも空を斬る。


「ギギギギ、キリッキリッ」


 くそっ、かろうじで避けやがって。仕留め損ったじゃないか。

 だが、奴は左腕を失い、胴体の左大部分が欠損している。あれで生きている方が不思議だと思うほどだ。

 スキル持続時間は残り50秒ほど、畳み掛けるには十分な時間だ。

 このトラウマに決着を。そしてダンジョン攻略の第一歩を──


 結果、俺は勝った。奴が弱ってからそれはもうボコボコのギタギタで、もはや体は原型を留めていなかった。

 にしても、下半身から上だけになっても生きてるとか生命力高すぎないか。これが魔物という存在。これより遥かに強い魔物が奥の階層に跋扈してると考えたら途方もないな。

 だが、俺もこの魔物より強くなっていた。今後の課題は、対魔物戦の経験を積むことかな。このカマキリの魔物だって最初からスキルを上手く使えば楽々勝てた相手。そう考えると、俺は俺の思っているより強くなっているのかもしれない。


 では、果実で体力を回復して探索を続行しよう。

 俺は魔剣グラムを片手に奥へと進んでいった。



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