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91話 秋の訪れ

 元学園長さんとあの娘が泊まりにきてから数日後、彼女達はこの街での用事を済まして海都ユリシアを経っていった。


 そうして日は経ち。残暑も過ぎ去り海都も随分と過ごしやすい季節になってきた。街の街路樹や外の山々は徐々に黄金色に色づき始める。


 私はホワイトリリィ学園の生徒として、海猫の仲居としてたまにくるお客様のおもてなしをしながら変わらぬ日々を過ごす。


 もうこの海都にきて半年以上が経った、思えば本当にたくさんの事があったと思う。奴隷になりかけて、ラプターさんに拾われて、ボロボロの旅館に連れてこられて、ホーネットさんと一緒にその旅館を修復したり……


 そうして色々な人に出会った。テルミナやグリペン、ミラ姉様にチカ姉、ミステールとトーネードさん。ライカをはじめとする桜組のみんな。ラファールさんと剣聖さん。さらに旅館の仲居として様々なお客様とも出会った。


 ……中々に濃い半年であった。人生って、ホント何があるかわからないなぁ。


「お〜い、何黄昏てるの〜?」


 桜組の教室の窓から中庭を眺めてると、後ろから誰かに抱きつかれる。この声は……


「……チカ姉、今いい雰囲気でこの半年を思い出してるんだから邪魔しないでよ」


「あ〜、わかるわかる。そうやって格好つけたくなる時ってあるよね。ベルちゃんかわいい〜」


 何故か格好つけている事にされてしまった。なんだか納得がいかない……


「ってか、いつまでくっついてるの……?」


「ごめんごめん、ベルちゃん抱き心地いいからさ」


 って、私は抱き枕か!



 そんな下らないやり取りをしているうちに、休み時間が終わってしまった。


「それで、何で自分の教室戻らないんですか……?」


 テルミナがそう呟く。私の隣にはチカ姉が座っている。チカ姉がいるせいで狭い……


「講義つまんないんだも〜ん」


 ……本当にこの人は自由というかなんというか。


「はぁ、私もベルちゃんと同じクラスならなぁ。ミステールちゃんみたいに問題行動を起こして……」


 サラッととんでもない事言うなこの人。


「学年が下がるような制度は無かったと思いますが?」


 後ろの席にいるミステールがチカ姉の冗談に大真面目な返答をする。そんなマジレスしなくていいから……


「あ、じゃあ留年すれば来年は……ダメだ、ストレートで卒業しないとパパにぶん殴られる……」


 そうしてるうちに教室に魔法哲学の先生が入ってきた。先生はチカ姉をチラリと見るが何も注意せずにスルーして講義を始めた。この学園の先生はやはりチカ姉に甘いような気がする……



 講義中、チカ姉にイタズラされまくって大変だった……尻尾を触られまくって、変な声を出したりしてしまった。


「ちょ……テルミナ席変わって、って寝てるし……」


 テルミナ、講義はちゃんと受けようよ……




「ねえねえ、ファルクラム様とどんなプレイしてたの……?」


 講義が終わった後、クラスメイトにそう聞かれた。いやいや違うから、完全に変な誤解をされているし……



〜〜〜〜〜〜〜〜



「アナタがファルクラムと講義中にいかがわしい行為をしていたとの報告が……」


「ちょ、いやいや違いますからね! ホントに変な事はしてないですって! ちょっとイタズラされてただけです!」


 放課後の生徒会室。生徒会のお仕事を手伝いに来たら、開口一番にミラ姉様がそんな事を言ってきた。


「というかどこからそんな情報……それされたのついさっきですよ?」


「この学園はそういうのに敏い生徒は多いですから、その手の情報は広まりやすいのですわ」


 まあ確かに。この学校って女子しかいないし、何となくそんな気がある娘が多いような気がする。


「はぁ……全く、ファルクラムには困ったものです」


「あの人、自由奔放ってどころの話じゃないですからね」


 自由奔放という言葉じゃ収まりきらないレベルだ。まあそういう所がチカ姉の魅力でもあるんだろうけど。知っての通りチカ姉って意外と学内じゃ人気だし、あの人あれで頭も良くて強いし、そういうギャップも含めて、そんな所に惹かれる娘が多いのだろう。



「まあ、一年前に比べればまだ今の方がマシなのでしょうけれど……」


 一年前、というとチカ姉が一年生の頃の事か。


「そういえば、この前チカ姉に一年生の頃の話聞きました」


 ある意味、チカ姉とミラ姉様の馴れ初めみたいな話だった。


「……あの娘、何か変な事言ってませんでしたか?」


「いや、別にそんな変な事は。チカ姉、ミラ姉様の事凄く楽しそうに話してましたよ、一番の親友って言われて嬉しそうだったし」


 この二人、仲が悪いように見えるけど本当は凄く仲がいいんだなぁ……と、感じた話であった。


「ちょっと待ちなさい、“一番の親友”ってどういう事ですの?」


「……ミステールが、ミラ姉様がそう言ってましたよって」


「み、ミステール様……どうしてそれを本人に話して……!」


 顔を赤くするミラ姉様、うん。同情する……よくよく考えたら羞恥プレイってレベルじゃないなこれ。


 その後、ジタバタと恥ずかしそうにするミラ姉様をフォローしながら生徒会の仕事を手伝った……

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