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89話 魔界から来た少女①

チカ視点のお話です。

『ねえ、聞いた? お姫様がウチに入学してきたって』


『……えぇ、もちろん。全くあの方はいつも急なんですから』


 ミラージュは困ったような仕草をする、そういえば。ミラージュとあのお姫様は昔からの知り合いなんだっけ。


『まさか、初日から学園の壁を吹き飛ばしてクラス降格処分になるとは……』


『あはは、なかなかお茶目なお姫様だね〜』


 ミステール・ド・エルトニア……噂に違わぬおてんばなお姫様のようだ。


『桜組ならベルちゃんと同じクラスだよね? 後で会いに行ってみる?』


 ミラージュが断っても後で行くつもりだけどね。


『いえ、遠慮しておきますわ……というより何故……』


 と、ミラージュは間を置き『何故桜組のあなたが菫組の教室にいるんですの?』と、呆れたような口調で聞いてきた。


 そう、私が今いるのは自分の桜組ではなくミラージュのいる菫組の広めで大きな教室だ。


『え? いやいやそりゃヒマだから遊びに……』


 桜組で講義受けたても退屈だしね。


『……今は講義中ですわよ』


 そう、頭の中でミラージュの声がする。そう、今までの会話は魔法による念話だ。


 みんな真剣に講義を受けているのに私語はちょー邪魔だからね。私はそう言うところに気を遣える女なのだ。


「はぁ〜……」


 ミラージュが深いため息をついた。多分、ミステールというお姫様と私、二人に対するため息なのだろう。


『ため息つくと幸せが逃げるよ?』


 親切にアドバイスをしてあげた。


『もう帰ってくれませんこと?』



〜〜〜〜〜〜〜〜


 私の名前はラーストチカ・ファルクラム。キュートな魔族の角と尻尾、小さな羽根が特徴の普通の女の子。


 年齢は……秘密……!



 私は見ての通り魔族だ。魔族というのはその名前の通り魔界に住んでいる……説明が面倒だけど要するに普通の人とは異なる理を持つ生き物。


 魔界というのはこの世界ユリシーズとはまた別の世界であり、ユリシーズと魔界は昔から争いが絶えなかったらしい。


 ただそれも昔の話。今は両者は手を取り合い、共存して生きていく道を選んだ。


 それもこれも十五年前にあった大戦がきっかけとなったとの事。


 十五年前、魔界とユリシーズの最後の戦争。ユリシーズ側の英雄たちによって終結させられた……あの大戦。


 パパ曰く、あの大戦で現れた英雄たちにユリシーズの民の可能性を魅せられたらしい。


 一体何があったのかは話してくれなかった。


 そうして、和解の道を選んだ二つの世界。もちろん、長い間争いを続けていた二つの世界が共存していくのは並大抵の事じゃない。


 うまくいかない事だってあるし、まだまだ小さな対立は二つの世界に残り続けている。



「え……ユリシーズに行け?」


 そうして大戦から十五年が経ったある日の事。私はパパに唐突にそう命じられた。ユリシーズで学び、見識を広めてこいとの事。


 自慢じゃないけど、私はかなりの魔法使い。ユリシーズで言うところの魔女だ。


 そんな私が向こうの世界で何を今更学ぶことが……と思ったけど。まあ暇だし言ってみることにした。


 パパの紹介で入学したのがユリシーズ学園。英雄の一人であるラプターという人物がが教鞭を取っているらしい。


 この世界じゃ、まだまだ魔族は浮いた存在だ。そりゃそうだ。だって十五年前まで争いを続けていた種族なんだし。


 だから入学の時とかかなり大変だった。みーんな私を避けるんだもん、まあ仕方ないけどさぁ。


 だけどミラージュは違った。



「アナタが……ラーストチカ・ファルクラムですの?」


 入学から少し経ったある日、同じ菫組だった彼女が声をかけてきた。


「そうだけど、何?」


 この学園に入って、学園の娘に話しかけられたは彼女が初めてだった。


「……負けませんわよ、次は!」


 一瞬なんの事だろうと思った。思い当たるのは……あぁ、もしかして入試の成績の事だろうか。


 パパの紹介といえど、もちろんしっかりと学園の入試は受けた。まあ私には楽勝すぎてあくびが出るくらいだったけど。


「あー、もしかして。入試で二位だったバイオレットさん?」


 私に全くそのつもりは無かったんだけど。二位とか余計な言葉を付けたせいで彼女は煽られたと感じてしまったっぽい。


「ふんっ……覚えてなさい」


 これが、私とミラージュの出会いだった。



〜〜〜〜〜〜〜



「んーっ……気持ちいい」


 ポカポカとした春の暖かな日差しを受けながら私は空を見上げた。


 学園の本館にある屋上は私の隠れ家でもある、閉鎖されているけど……まあ私には関係ない。


 ふと、入り口の方に気配を感じた。


「……こんな所にいたのね」


「バイオレットさん? 何しにきたの?」


 バイオレットだった、珍しい事もあるなぁと思った。


「アナタこそ、講義をサボって。そんなんだから警告を受けるんですわ」


 警告……そう、私は講義をサボりまくったり、他にも色々問題行動を起こして、クラス降格の計画を受けている。


 普通ならこんな問題児、一発降格なのに。ここまで猶予されているのは私の成績が良すぎるせいなのかそれともパパの影響があるのか……


「んー、だって面白くないんだもん」


 学園で学ぶ知識は大体頭に入っていた。ホント、パパは何でこんな場所に私を入れたのだろうか。



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