74話 海水浴
砂浜からすぐ近くに私達がこの四日間、島で滞在する建物が見えた。
「あれが……」
なんというか……期待通りというか、すっごく……オシャレなんですけど!
建物は所謂南の島のリゾート地にありがちな海の上に、水上に建てられているコテージっぽかった。
「いい雰囲気ね」
ミラ姉様がそう呟く、彼女も気に入った様子だ。
「二つありますね、建物」
テルミナがコーテジを眺めてそう言った。
コテージは二棟あった。私たちはラプターさんを入れて六人だし、三人で別れればちょうどいいかな……
「えっと、じゃあ部屋割りどうしようか?」
「ハイハイ! 私はお姉様と同じ部屋で!!」
テルミナが手を挙げて食い気味にそう主張する。
「わ、私もベルと同じ部屋が……」
それを見たミラ姉様もそう呟く。
「私は何処でも……」「ん〜……どっちでもいいや」
対して控えめなライカとグリペン。
「あ〜決まったか? じゃあ後は適当に時間潰しておいてくれ、私は行くところがあるからな。こう見えて私は忙しいんだ」
“忙しい”という部分をやたら強調するラプターさん、そうしてどこかに去っていった。
「忙しいねぇ……」
大方、どこか馴染みの店にでも飲みに行くんじゃないかなぁ、あの人の事だし。
とりあえず、私たちはコテージ入る事にした。結局部屋割りは私、テルミナ、ミラ姉様とグリペン、ライカという別れ方になった。
コテージの中は小綺麗でサッパリとしたシンプルな作りだった。余計な装飾とかはなく、質素ながらどこか安心感のある雰囲気だった。
「きれい……」
ミラ姉様がそう呟いた、開放的な作りで海が良く見通せる、かなりの好立地だ。
私もコテージの外に出て海を眺めてみる、エメラルドグリーンの海がどこまでもどこまでも広がっている、波は非常に穏やかだ。
「はぁ……チカ姉も来れば良かったのに」
魔界に呼び出されたという話だが、一体なにをしでかしたのだろうか……?
「これからどうします?」
と、テルミナ。どうするってそりゃこんな場所に来たんだから……
「海に行こう!!」
コテージのすぐ隣、先程までいた砂浜。あそこが丁度いいだろう。
「いいですね! 賛成です!」
テルミナ嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。
「ミラ姉様は?」
「え? ま、まぁ……行ってあげなくもないですけど」
「じゃあ決まりですね」
そうして、隣の二人も誘い海に行くことに。
水着……なんかホーネットさんが露出度の高いやつ用意してくれたけど。流石にそれを着る気にはなれなかった。
なので、水泳の授業で使ってる学校指定ののやつに着替える、見た目は完全にスクール水着ってやつだ。
余談だけど私たち獣人用の指定水着にはしっかりと尻尾を出す用のスリットが入っている。親切な設計だ。
テルミナとライカも同じく学校指定の水着を着ている。ミラ姉様とグリペンは……ホーネットさんが用意したやつを着ている。
「ちょっとキツイですわねこれ……」
「そう? こんなもんでしょ」
二人ともスタイル抜群なので……目に毒だ。
「はぁ……格差社会」
ま、まぁ私はまだ発展途上だし?
着替えた後は、しっかりと日焼け止め用のクリームを塗った。
「んひゃ……つ、冷たい」
「ちょ、変な声出さないでよグリペン」
これはホーネットさんから渡されたものでそういった効果のある薬草から作られているらしい。
便利なものだなぁ……
そうして、水着に着替えた私たちはすぐ近くの砂浜に。
「よし! 準備は万端!」
「いつでも行けますよ!!」
「よし、行くよテルミナ!」
興奮気味なテルミナとグリペン。そうしてそのまま海に突っ込んでいった。
「はしゃいでるなぁ……」
まあ、気持ちはわからなくもないけど。
「お姉様もはやくー!!」
テルミナが手を振りそう叫ぶ。
「んー、今行く!」
私は海に駆け出す、海は結構冷たかった。そして……凄く透明度が高くて綺麗だ。
「全然濁ってないね」
太ももの辺りの深さまで入る、かなり綺麗な海だ。
「ベル!!」
グリペンに呼ばれる。彼女の方を向くと……
バッシャァーン……!! と大きな水飛沫。彼女の大きな竜の尻尾が水面に振り下ろされたのだ。
びちゃびちゃと海水をもろに浴びてしまう私。
「……こ、子供か!! ……ふにゃあ!!!」
私はグリペンに飛びかかる、仕返しだ。私たち二人はもつれ合って海にドボンと倒れ込む。
「ぎゃー! 何するんだよ!!」
「ちょっとそこ!! なにお姉様とイチャイチャしてるんですかー! 私も混ぜてください!」
そんなこんなで、私達は海を満喫した……結構楽しかった。
〜〜〜〜〜〜〜
そうして、しばらく海で遊ぶ。気がつけば太陽が沈みかけていた。
コーテジに戻った私達。コテージには備え付けの簡易的なシャワーのようなもがあったのでそれで海水を流し、身体を洗う。
その後、私達はラプターさんを探しに町に繰り出した。町の人に聞き込みをしてたどり着いたのが雰囲気の良さげな小さな食堂だった。
「……ホーネット……いや違うぞ……冷蔵庫のプリンを食べたのは私じゃなくて…………」
ラプターさんは酔い潰れて寝ていた。何してるんだこの人……
私達はそこで夕食をとった。もちろんラプターさんのツケで。
そうして、賑やかながら慌しい一日目は終わった。




