67話 うどんと学園の七不思議②
「それにしても……やっぱり何処の学校にもそういう噂ってあるんですね」
テルミナがそう言った。なんというか、その手の話ってお決まりみたいなものなのかな……
「ウチの学園のはちょ〜っと嗜好が違うけどね、なんかどれも学園の隠された場所が! みたいなノリだし」
と、チカ姉。ホワイトリリィ学園は歴史が古いので、そんな如何にもありそうな噂が立つのだろう。
「なぁ! 他にはどんな噂があるんだ?」
グリペンがチカ姉に興味津々な様子でそう聞く。
「それ以外だと、学園の地下には古代文明の遺跡が眠ってるとか、学園内の何処かに魔界に繋がる入り口があるとか」
……幽霊関係じゃないのか、ちょっとだけ安心。あ、いや別に怖いわけじゃないんだからね! 勘違いしないでね!!
「まぁ、最後の噂は私のせいなんだけどね〜」
チカ姉が軽い口調でそう言った、一体どういう事なのだろうか。
「……はぁ」
その言葉を聞いてため息をつくミラ姉様。これは何が事情を知ってそう……
あぁ、そういえば忘れがちだけどチカ姉って魔界の住人なんだっけ、一体何をやらかしたのだろうか。
……それにしても、大図書館の閉鎖書架かぁ……あそこすっごく広いし、そういうのがあってもおかしくはないかも。
今度ラティ先輩に聞いてみようかな、あの人何でも知ってそうだし。
「ん……これ美味しいね、なんて名前の料理なの?」
七不思議の話題を切り上げたチカ姉は、竜田揚げを食べてそう言った。
「竜田揚げです」
私は丁寧に名前を教えてあげる。チカ姉は箸で竜田揚げ掴みながら興味深そうにそれを眺める。
「ふぅん……竜田揚げね、ベルちゃん私と結婚して、私の為に毎日これ作ってよ!」
チカ姉は冗談っぽくそんな事を言った。
「なっ、ファルクラム様! それはもしかしてプロポーズのつもりですか!? 抜け駆けは許しませんよ!!」
何故か怒りながら会話に割り込んでくるテルミナ。その様子を「やれやれ」と言った感じで眺めるミラ姉様とグリペン。
はぁ……賑やかだなぁ……
そうして、賑やかな食事の時間は過ぎていった。
「は〜お腹いっぱい」
満足げな様子のチカ姉、私は机の上のお皿を片付ける。
「相変わらず、チカ姉はよく食べますね」
ほんと、大食いというか。いったいこの身体の何処に吸収されているのだろうか。
「ベル、私も手伝いますわ」
と、ミラ姉様が立ち上がってそう言った。
「いいんですか? じゃあお願いします」
……というか、気がつけばテルミナ、グリペン、チの三人がいない。面倒くさくて逃げたな。
そうして、調理場でお皿などを洗い片付けを終えた私とミラ姉様。
「……ふぁ〜」
なんだか眠くなってきた、今日は気温もそれほど高くはなく過ごしやすい。私の眠気を誘うには充分すぎるほど凶悪な天気だ。
「ミラ姉様はこの後どうしますか?」
私はそう聞く。
「ええ、今日は学園に用事があるので私はこれで。美味しい昼食をありがとうベル」
そう改まったお礼を言われると恥ずかしい。少し作り過ぎただけなのに。
「あのー、去年何が……」
やっぱり気になる……
「ベル? 貴女がその事について知る必要はないのよ?」
ニコニコと笑いつつも、その言葉からは「聞くな!」という威圧感が漂ってくる。怖いんですけど……
「別にそんなに恥ずかしがる事でもないのに〜、今となってはいい思い出じゃん?」
と、チカ姉がやってきてそう言った。
「うるさい! 私にとっては黒歴史ですわ……! 思い出すだけでも恥ずかしい……」
「そう? あの時のミラージュ凄くかわいかったけどなぁ」
七不思議の調査……恥ずかしい……かわいかった……
なんか大体、予想が出来てしまった。多分調査中に怖くてチカ姉に泣きついてしまったとかだろうか。
〜〜〜〜〜〜〜
「ふ、ファルクラム! いまあのスケルトンの模型が動きましたわよ!!」
暗闇の中、学園の資料室を探索する二人。
壁側に立てかけられている骸骨の魔物、スケルトンの模型が動いたような気がしてミラ姉様は震えながらチカ姉に抱きつく。
「え? いやいや気のせいでしょ……ていうか半泣きじゃん、強がってたけど実はこういうの苦手? 怖い?」
そうからかいながらも、優しくミラ姉様の頭を撫でるチカ姉。
「〜〜ッ! こ、怖くなんかありませんわ! それより頭を撫でるのはやめてくださいませ!!」
チカ姉から離れるミラ姉様、その時何処からともなく聞こえてくるラップ音が……
「ひぃぃぃ!」
ミラ姉様は泣きながら再びチカ姉に抱きつく。
「はぁ……仕方ないなぁ、よしよし」
〜〜〜〜〜〜〜
多分、こんな感じだと思う。
「……ベル? どうかしましたか?」
「いえいえ、なんでもないですよ」
想像したら、途端にミラ姉様がかわいく思えてしまった。普段は凛々しいからギャップ萌えというかなんというか……
そうして、二人は海猫を去っていった。
チカ姉はもっと海猫に居たそうな様子だったけど「仕事の邪魔になりますわ!」とミラ姉様に連れて行かれてしまった。
思わぬ来訪客であったけど、まあまあ楽しかったし良しとしよう。




