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57話 黒髪の少女と対抗戦②

 そうして、二日目のメインイベントである対抗戦が始まった。


 場所はユージアの街中にある小規模な魔法学園の闘技場みたいな場所。実はこの学園、ホワイトリリィ学園の系列で分校の一つであるらしい。


 ホワイトリリィ女子魔法学園は大陸の数カ所にこのような分校を持っているらしい。


 場所が場所なので、観客には分校の生徒までいる。分校には本校のような実力順での色分け(クラス分け)がないらしく、みんな同じ色の制服を着ていた。


「うぅ……緊張してきた」


 闘技場自体はそこまで大きくなかったけど、何せ観客が多い。


 まかさこんな結構な規模のイベントとは思わなかった……


「まあ気楽にいきなよ」


 と、チカ姉は言う、他人事だと思って軽く言っちゃってくれる。


「それにしても懐かしいなぁ〜、私も去年ミラージュと戦ったっけ」


「チカ姉、去年の代表戦に出たの? ていうか去年も同じ事してたんだ……」


 この行事って毎年開催されてるのだろうか。


 私がそう聞くと、チカ姉は遠い目をしながら懐かしげに「そうだよ〜」と答えた。


「これ、ウチの学園の伝統行事みたいなものだからね、クラスの代表者に戦わせて競争心を煽るとかなんとか」


 へ〜……いかにもそれっぽい理由だ。


「ちなみに……去年はどっちが勝ったの?」


 気になる、どちらも今の実力はほぼ均衡している。一年前はどうだったのかな……


「ん? 私が勝ったよ?」


 当たり前のな口調のチカ姉。意外だ……私的にはミラ姉様かな、と思ったから。


「あれからかな、ミラージュがやたら私に絡んでくる様になったの」


 ああ、その場面が目に浮かぶ。ミラ姉様ってやたら対抗心強いからなぁ……


「ん、そろそろ第一試合が始まるみたいだね、ベルちゃんも見た方がいいよ、次に戦う二人だし」


 チカ姉がそう促してくる。確かに、しっかりと見ておいた方がいいかもしれない。


 私達二人は学園の控室を出て、闘技場に向かう。闘技場には既に観客が大勢いた。まあ殆どホワイトリリィ学園の生徒か関係者だけど。


 私とチカ姉は適当な場所に座る、それとほぼ同時にフィールドに菫組と黄緑組の代表選手が入場した。


「あの二人が……」


 自身ありげに入場する二人、なんだかいかにも優秀そうな魔女の雰囲気を出してる。


「どっちも一年ではかなり優秀な娘だって聞くよ、まあ我が愛しの妹には敵わないと思うけど」


 チカ姉はそう言った。最後のボケは面倒だから突っ込まない事にした。


 そうして、菫組担任教員の合図で試合が始まった。


 試合の内容は至極簡単な物で、制服の胸の部分につけた宝石、これがライフの代わりでこれを先に破壊した方が勝ちという物だ。


 ちなみに、選手の身体には防御札と呼ばれる魔法陣を描いた物が貼られていて、それにより怪我などがないよう最大限の配慮がされているらしい。


 とは言っても流石に万能ではない、吸収できるダメージを超えると効力を失ってしまうらしい。


 先に動いたのは黄緑組の生徒の方だった。


「"旋風(フウァールウインド)"!」


 呪文を詠唱する、風属性の魔法だ。大きな旋風が菫組の生徒を襲う。


 しかし菫組の生徒の反応は早かった。彼女は身体強化の魔法を使い大きくジャンプし距離を取って躱す。


 そのまま彼女は、自らの魔法具と思われるブレスレットに手を添え小さな声で詠唱した。


 すると、彼女のそばから氷の針のような物が勢いよく生成されそのまま目にまとまらぬ速さで黄緑組の生徒の胸元に向かって走る。


「……っ!」



 勝負は決した、黄緑組の生徒の宝石は弾き飛んだ。菫色の制服を着た生徒たちが湧き立つ。


「はやかったね〜」


 と、チカ姉。確かに勝負は一般もかからなかった。


「身体強化の魔法はまだ一年のこの時期じゃ範囲じゃないはずなのに、さすが菫組の代表って感じ」


 確かに、まだ教わってない。菫組の生徒たちは範囲の外まで勉強しているというわけなのかな。


「次は……私と黄緑組の対戦か、はぁ……気が重い」


「大丈夫大丈夫、ベルちゃんなら勝てるって! ほら頑張ってきて!」


 そういうの逆にプレッシャーなんですけど。


「全勝したら……ご褒美にキスしてあげる♡」


「いりません」



 そうして、私はフィールドに向かった。ライブ判定に使う宝石を胸につけ、桜組のみんなの声援を受けながら試合開始を待つ。


 私は腰の桜と菫に手を添えた。大丈夫、いける……多分。


「試合開始!」


 そうして、バトルは始まった。


 先手必勝。私から動く、少し狡いけどミラ姉様から教わった高位魔法を使わせてもらおう。


「"光学(オプティカル)迷彩(カモフラージュ)"……」


 桜を抜き、詠唱する。


「き、消えた?」


 驚く黄緑組の生徒。そう、この技は一時的に光を歪ませ透明になれる魔法だ。


 そうして、足音を立てないように気配を消し彼女の近くに歩いていく。


 スッ、と彼女の胸元、宝石に鞘にしまった状態の菫を触れさせる。宝石は綺麗に弾け飛んだ。


 私は魔法を解除して、姿を表す。何が起こったのかわからないという表情の彼女。


 ワーッ! と湧き立つ桜組の生徒達、私はみんなに向けて手を振った。


「お姉様ー!!! 流石です!」


 と、テルミナの一際大きい声が聞こえた。彼女はピョンピョン飛び跳ね喜んでいた。

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