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55話 ナメクジは魔法に弱い

「な、な、な、何あれ!」「キモッ!」「かわいい……!」


 騒ぎ出すクラスメイト達。ていうか最後! かわいいって……


「なんかもう露骨なくらいにフロアボスって雰囲気出してるね……」


 まあ簡単に終わらせてくれるとは思ってなかったけどさ。


 なんか明らかに面倒くさそうな敵だけど、流石にこの人数がいれば苦戦することは無い……と思う。私達桜組だけど、腐っても魔女の卵だし。


 だがその時だった。天井を這うナメクジがズシンと床に落ちて来た。そして……その反動からか、天井の一部がピシピシと音を立てて崩れ始めた。


「!? みんな避けて!!」


 私は叫ぶ。


「やっば……!」「避けて避けて!!」


 口々にそう叫びながらが瓦礫が落ちてくる場所から距離を取る、だが離れ方が悪かった。瓦礫に巻き込まれた生徒はいなかったが、丁度部屋が瓦礫により二分され、クラスが分断される形になってしまった。


 逃げた方がいいのかと思ったけど……入り口の方を見ると見事に石の扉で塞がれていた。ある意味お約束だけどさ……


「そんなのあり……?」


 丁度半分くらい? いや、こっちの方が人数少ないか……


 私はこちら側にいるメンバーを確認する。あれ? テルミナがいない。あっち側に行ってしまったのかな。


「ベルさん!」


 と、こちらに駆け寄ってくるライカ。


「ライカ! みんなも怪我はない!?」


 ひとまず今こちら側にいるメンバーの安否確認。


「はい、大丈夫です」


 ライカがそう答える。


「こっちもー!」「ちょっと擦り傷できた……でも大丈夫!」


 こちら側に残されたみんなが近くに寄ってくる。私達の方にいるのは……私とライカを合わせ七人だ、やはりこっちの方が戦力が少ない。


「……うわっ! まだ生きてる!」


 と、ナメクジが瓦礫を吹き飛ばし、飛び出てくる。盛大に自滅してくれたかと思ったけど流石にそう上手くはいかないか……


 だけど彼らも分断された様だ。こちらにいるのは一匹だけ。おそらくもう一匹は反対側にいるだろう。


「一匹だけならこの人数でも……!」


 私は"桜"と"菫"を抜いた。ライカや他のメンバーもそれぞれ各々の魔法具を構える。


「攻撃用の近接武器持ってる娘は私と一緒に前に出て! 後の娘は後ろで援護お願い!」


 私はみんなにそう伝える、私のその合図で二人のメンバーが前に出てくれた。


 一人はライカ、もう一人は薙刀の様な武器を持った娘。


「二人とも行くよ!」


 私たち三人は一気に駆け出す。ナメクジは大きな咆哮を上げ何かを吐き出してきた。


「うわっ……!」


 それを躱す、飛んできたのは液体だった。液体は地面に飛び散る。


 あんなの……何か確実に毒とか持ってるでしょ……


「みんな、あれに当たらないように!」


 前に出た私たち三人は集中して狙われないように散開した。


「桜閃刀流、弐の技"不知火"!!!」


 距離を詰めた私は正面からおもいっきり、桜閃刀流の技を叩き込む。一度鞘にしまった二本の小刀を、向こうに刃が飛んでいくイメージを思い浮かべながら勢いよく抜く。そうして飛んでいく二本の白い残像の様な鎌鼬。


「……ッ!」


 鎌鼬は確かに当たった、だがあまり手応えは無かった。奴の体はやたらブヨブヨしていて衝撃が吸収されてしまったのだろうか……でも、きっと剣聖さんや、あの“白百合”使いの人なら問題なくスパンスパン切り裂けるだろう、今の私じゃこれが精一杯だ。


 と、そこに薙刀使いの娘が横方向からナメクジの懐に飛び込む。


「でりぁー!!」


 彼女の薙刀で斬りかかる、だがその衝撃も吸収され中々ダメージが当てられない。


「どうしよう〜! あんま効いてない!!」


 攻撃をやめ後ろに下がる彼女。


「……アイツには物理攻撃より魔法攻撃の方が効きそう、後ろのみんな! 魔法攻撃で一気に攻めて!」


 こういう敵には物理より魔法で攻めた方がいいだろう。


「オッケー!」「わかったよ!!」


 その合図で、後ろから火属性や風属性の攻撃が飛んでくる、私達前衛は当たらない様に射線から避ける。


 ナメクジは攻撃を受け随分と怯んだ様だ、ダメージもそこそこあっただろう。私は手持ちの小さい鞄から簪を取り出す。せっかく光属性の加護が付いてるんだ、こういう時に使わないでどうする。


 急いで後ろの髪を纏め簡単に小さいシニヨンを作る、そして根元に簪をさす、これでいいい。


「すご……」


 髪に簪をさした瞬間、それは仄かな熱を帯びる。と同時に身体に光属性の魔力が行き渡る感覚がした。これなら普段より威力の高い光属性魔法が使えそうだ。


土ノ錐(ソイルランス)!!」「炎ノ刃(フレイムカッター)!!」


 ライカと薙刀使いの娘が呪文を詠唱する。ライカのナイフは土の塊を纏い鋭いランスの様な形状に変化、もう一方の彼女の薙刀は刃の部分に炎がユラユラと纏い始めた。


 そうして、左右からそれぞれ攻撃を当てる、悲鳴をあげるナメクジ。


「ベルちゃんトドメをお願い!!」


 薙刀使いの娘が叫ぶ。


「わかった!! 二人とも離れて!!!」


 私は再度二本の小刀を鞘にしまった。そうして「"光子付与(フォトンチャージ)"……!」と詠唱する。これで小刀の刃に魔法による光子の力が付与された。


「……桜閃刀流、弐の技"不知火"ッッ!!!」


 小刀を抜く、そうして飛んでいく鎌鼬、だが今度のは大きくキラキラと輝いている。勢いよく飛んでいった鎌鼬は……綺麗にナメクジを切り裂いた。


 ナメクジは崩れ去る。


「やったか……?」


 誰かがそう言った、これで終わりなのだろうか、だが奴はタフだった。瀕死の状態なのにピクピクとしながら起きあがろうとする。ナメクジは悪あがきで、触手の様なものをライカの元に飛ばして来た……!


 なにそれ! 今までそんな使ってこなかったでしょ!! だめだ! 彼女は反応出来てない! 私も間に合わない……


 だが、その時、何処からか手裏剣の様なものが飛んでくる、スパンと触手を切り裂き後ろの方に戻っていった。


「……な、なに今の」


 私は手裏剣が戻っていった方を見た、だがそこには誰も居なかった……何が何だかよくわからないけど、とにかくライカは無事だ。


 触手を切り裂かれたナメクジは今度こそ力なく倒れ込み、霧散した。


「終わった……」


 これでクリアだろうか。


「勝ったの?」「やった〜!!!」


 クラスメイトたちは無邪気に喜ぶ、そうしてこちらに駆け寄って来た。


「ベルちゃーん!!」「ウチら勝ったよ!!」


 ……みんな最後の謎の攻撃はあまり気にしてない様だ、とにかく勝てた事が嬉しいんだろう。水を差すのも悪いから、あの攻撃には触れないことにした。


 



 いや! でも気になる……ほんと何だったんだろうあれ。

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