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47話 不足単位はクエストで②

 お昼休み、学園内には数箇所の学食がある。


 どこもオシャレなカフェテリアみたいな場所なのは前にも言ったと思うけど。私たちがお手伝いをする学食はその中でも一際落ち着いた雰囲気で居心地のいい場所だった。


「いやぁ、今日はいつもここで働いてくれている人達が揃ってお休みが被っちゃってね、みんなが依頼を受けてくれて助かるよ」


 と、学食の人が。


「いえいえそんな」


 正直一日、お昼の間だけお手伝いで一単位貰えるならコスパが良すぎる。


 こんな感じならこういう依頼ばっかこなして単位を貯めそうな人もいるかもしれない、あ、でも自由単位って上限あったっけ……


「ん〜……悲しいかな、やっぱりこの服着てると落ち着く……」


 私達は給仕服に着替えてお手伝いをさせてもらっている。


 いつも似た様な服を着ているからだろうか……なんかすごくしっくりきてしまう。


「ベールクトさん、動きがプロだね、接客業経験者?」


 学食の人にそう褒められる。


「ええ、まあ」


 曲がりなりにも旅館で仲居をしてる身だ。多少勝手は違うとはいえ、こういう接客業はお手の物だ。


 テルミナも問題なく動けている。この娘は心配してなかったけど……


 チラリとチカ姉を見る。


「チカ姉! つまみ食い禁止です!!」


「や、やだなぁ、そんなことしてないしてない……」


 ほっぺに生クリームをつけながらそんなこと言われても説得力ゼロですよ。



 そうして、お昼の間働き続け私たちは依頼を完遂した。これで一単位はやはりコスパが良い、ラッキーな依頼を見つけられた。



〜〜〜〜〜〜〜



 放課後。私たちは二つ目の依頼に取り掛かる。一度海猫に戻り、ホーネットさんに事情を説明、私とテルミナは制服のままユリシア駅に向かった。


「こ、ここがユリシア駅……」


 建物を見上げる。ユリシア駅に来るのは初めてであった。


 チラチラと遠くから駅舎が見えたりしたけど実際にこうして近くで見ると……


「中々立派な建物ですね〜」


 テルミナがそう呟く。たしかに立派だ、煉瓦造りの大きな建物、なんだか東京駅を思い出す。流石にあそこまで大きくはないけど……


「テルミナって汽車乗ったことある?」


「いえ……ないです」


 だよねぇ、私の故郷ノースガリア、テルミナの故郷スノーラビットがある北大陸には鉄道なんてハイカラなもの無いし……


 鉄道は近年急速に発達しつつある技術だ、勿論最優先で路線引かれるのは南大陸、こういうところでも人間と獣人を始めとする亜人間の格差が見受けられる。


「現実は厳しい……」


 と、嘆いてばかりはいられない。まずは目の前の依頼を片付けなければ。


「にしても、チカ姉遅いなぁ……」


 駅の目の前で待ち合わせとのことだったが、まだ来ない。一体何をしているのだろうか……


「お待たせ〜」


 そこにやってきたチカ姉。


「遅いですよって……その制服」


 チカ姉は学園の制服ではなく駅員さんが着ているような制服……しかも、かなり可愛くアレンジされたものを着ていた。


 腕の部分には"帝国鉄道省"の腕章が。その下にはホワイトリリィ女子魔法学園という文字も入っていた。


「どこから盗んできたんですか?」


「いや盗んでないって、ちょっとツテがあってちゃんとしたルートで手に入れたものだから」


 ツテ……相変わらずこの人の人脈は謎だ。


「2人の分もあるから安心してね!」



 そんなこんなで駅に入る私たち、駅事務室に行き身分を説明し依頼書を見せる。そこで私とテルミナの分の制服も渡された。


「……あ、あの。私のだけやたらスカート丈が短い様な」


「あはは、気のせい気のせい」


 ニコニコ笑うチカ姉。この人絶対何かしたでしょ……


 そうして、更衣室で制服に着替えた私とテルミナ。最初に任されたお仕事は改札口で切符を切る事だった。


 この世界に自動改札なんてハイテクなものは存在しない。こういうのは全て人力だ。


 ……たまにお客さんに嫌な顔をされた、多分獣人だからだろう。露骨に「獣人かよ……」と言われた時もあった。


 はぁ……やっぱり世知辛い。



〜〜〜〜〜〜〜



「おつかれ〜」


 と、改札口にいる私の方に来るチカ姉、そろそろ終わる時間だ。


「中々人多くて疲れるね〜」


 愚痴るチカ姉。


「そろそろ時間なにで交代しますよ」


 と、そこに駅の方が。


「お願いします」




 エルトニア鉄道は日本の現代的な電車みたいに数分おきに来るわけではない、結構空きがあるのでその間は結構暇だったりする。今もその間と間の時間だ。


「もし、駅員さんや」


 お客さんから声をかけられた、おばあちゃんだ。


「はい、なんですか?」


「この商店に行きたいんじゃが……」


 道を聞かれる、手には一枚の紙が、そこには商店の名前が書かれていた。


「えっと……」


 どうしよう、わからない。


 私があたふたしてると、隣にいたチカ姉がポケットからメモを取り出す。そこにサラサラと簡単なマップを書きおばあちゃんに渡した。


「はいどうぞ、ここからだと歩いてすぐですよ」


「ありがとうね」


 頭を下げておばあちゃんは去っていく。


「チカ姉ありがとう」


「いいっていいって」


 海都について結構把握していたつもりだけど、私もまだまだだなぁ……


と、その時だった。出口に向かって歩いていくおばあちゃんに近づ1人の男。


「あの人怪しくないですか?」


 なんとなく不審な気配がだだよう。


「あー、あれは間違いなくやるね」


 その男に向かってスタスタ歩いていくチカ姉、私も後に続く。


 男は……おばあちゃんの荷物に手をかけた! 間違いなくひったくりだ。


「はぁ、現行犯」


 チカ姉はポケットから小さい本のような物を取りした、その本が紫の暗い光を湛える。



「っつ……!?」


 地面から出現した鎖に拘束されるひったくり犯。というか……今詠唱しなかったよね、まあチカ姉レベルなら無詠唱でも出来ておかしくないか。



 そうして無事ひったくり犯は確保、仕事終わりにそんなトラブルもあったが、これで無事二単位目を確保した。


 そして残るは……

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