表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/91

42話 寝相が悪いってレベルじゃない

 その()、私とミラ姉様は別邸に歩いて戻る。戻るなりチカ姉に「遅いよ!」と怒れれた。


「2人でなにしてたの〜? なんか怪しい〜」


 チカ姉の尻尾がユラユラと揺れる。面白がっているのかな……


「別に何もやましい事はしていませんわ、そうですわよねベル?」


「うん、なにも」


 本当になにもしていない、強いて言うなら少し距離が縮まっただけだ。


「ふーん、まあいいけど。それより私お腹すいたよ、メイドさんがご飯作ってくれるらしいし早く食べよう!」


 ミラ姉様を急かすチカ姉。


「はぁ……ほんと図々しいですわねあなた……」


 そうして、私達は食堂に向かった。


「おかえりなさいませお嬢様、ベールクト様、お食事の用意は出来ております」


 メイドさんが私たちに頭を下げる。


「す、すごい……」


 テーブルの上には豪勢な料理が。


「さー早く食べよう食べよう」


 椅子に座るチカ姉。私達も後に続いて座る。



 その後、夕食を食べた私とチカ姉は客室に案内される。チカ姉は食事中何回もおかわりを要求していた。この人あんなに大食いだったのか……


「はぁ〜お腹いっぱい」


 満足げな様子のチカ姉、ゴロリとベッドの上に寝転ぶ。


「というかなんで当たり前のように相部屋……」


「ベルちゃん私と一緒は嫌?」


 別に嫌ではないけど、サキュバスのチカ姉と同じ部屋で寝るとか……


「大丈夫だって! 襲ったりしないし!」


 ベッドから起き上がり私の方に近寄ってくる彼女。


「でも……ベルちゃん可愛いし……」


 ジリジリと私の方に迫ってくる。


「ち、チカ姉?」


 私は思わず後ずさる。なんだか雰囲気が……あ、しまった、後ろは壁だ。逃げ場が……


「はぁ、やっぱり無理。ベルちゃんが悪いんだよ? そんなに可愛い反応しちゃってさ〜」


 そうして、ドンっと壁ドンされる。いやいやなんなのこの状況。どうしてこんなことに……


「チカ姉ほんとにやめ……んぁっ……」


 顎クイされる。これってもしかしてファーストキスの危機なんじゃ……!


「まずはそのお口を塞いであげなきゃ♡」



「ファルクラム!!! あなた何をしているんですの!!!」


 と、突然ドアが蹴破られミラ姉様が特殊部隊さながらの動きで部屋に突入してくる。


「現行犯ですわね、これは……」


 ワナワナと震えるミラ姉様。


「はぁ……タイミングわる……」


 不満げな様子のチカ姉。


 不満げな様子のチカ姉。彼女は私から離れてミラ姉様の方に向き直る。


「"光子(フォトンスパー)煌剣(クルセイバー)"……!!!」


 と、手に持っていた魔法具の柄を握り呪文を詠唱するミラ姉様。柄から綺麗な青色をした光子の刃が生成される。


「今日こそ決着をつけますわよ!」


「ふん! 面白いじゃん! 受けて立つよ!!」


 いやちょっと……2人とも何してるの!?


「お、落ち着いてよチカ姉、ミラ姉様!」



 その後、ヒートアップする2人をなんとか宥めてその場を取り持った。2人が本気でやりあったらこの別邸が大変なことになるよ……


「私もこの部屋で寝ますわ!」


 ミラ姉様が唐突にそんな事を言い出した。


「いや、ベッド2つしかないし」


 部屋を見渡す。広めの客室だがベッドは2つしかない。


「あなたが床で寝なさいよ」


 チカ姉に向けそう言い放つミラ姉様。


「床って、せめてそこにあるソファーでいいじゃん……あ! じゃあ私はベルちゃんと同じベッドに」


 そう言ってチカ姉は私の方を見る。


「それはダメですわ、あなたと同じベッドで寝たらこの娘が何されるか」


 うんうん、私も心配。


「2人とも私をなんだと思ってるのさ……」


 結局、私とミラ姉様がベッドで、チカ姉がソファーで寝る事になった。




「……」


 月明かりが窓から客室に差し込む、静かな夜だ。隣からは微かにミラ姉様のすぅすぅと言った寝息が聞こえる。


 はぁ……まさか、ミラ姉様の家にお泊まりすることになるなんて夢にも思ってなかった。


「ふぁ……」


 欠伸が漏れる。そろそろ瞼も重くなってきた……もう寝よう。


 瞼を閉じ寝ようとしたその時であった。隣のベッドのミラ姉様が突然起き上がり……私のベッドに入ってきた!


「な、なにして……」


 彼女の方を向く、寝ている……? 寝ぼけているのだろうか、寝ぼけて隣のベットに入るとか寝相が悪いってレベルじゃない……


「ミラ姉様起きてください……って、んにゃ……!」


 い、いきなり尻尾を触られた。この人本当に寝ぼけてるの!?


「ちょ……尻尾を揉むのは……んっ……」


 尻尾はかなり敏感な部分、そんなにサワサワされると……!!


「はわっ……! み、耳を噛むのはやめてください……!!」




 そうして結局、私は一晩中ミラ姉様に色々なところを(まさぐ)り続けられるのであった……



〜〜〜〜〜〜〜



 翌朝、太陽が登り始める頃になって、ようやくミラ姉様は自分のベッドに戻っていった。


 寝相が悪いという次元を超越している。おかげで殆ど寝れなかった……


「それじゃ、学園に行きましょうか」


 朝食を取った後、私達は制服に着替える。一晩中ミラ姉様に弄られたせいでまだ気分がフワフワする……


「ベル? さっきからどうしたの?」


「!?」


 ミラ姉様と目が合ってしまった。まずい……なんだかすごく変な気持ちに……!


「い、一緒に登校して噂とかされると恥ずかしいので!!!」


 そうして、私は脱兎の如く駆け出し、別邸から飛び出す。


「はぁ……もうミラ姉様の顔直視出来ないかも……」



〜〜〜〜〜〜



「ミラージュ、ベルちゃんに何かしたでしょ?」


「い、いえ……そんな筈は……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ