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40話 お泊まり会

「まあ、あくまでも噂だけどね〜」


 軽い調子なエタンダールさん。


 バレてないよね? 治癒魔法が使える事あんまり知られたくないし気をつけなきゃ……


「ベル? あなたどうかしましたの?」


 私に視線を向けるミラ姉様。まずい、態度に出てたのかな。


「え? いやいやなんでもないです!」


 必死に誤魔化す私。


「……?」


 うぐぐ、なんか不審がられてる。私こういうの苦手なんだよなぁ……


「じゃあ、私はこれから学園に行くから、2人はゆっくりしていってね」


 と、話題を切るようにそんな事を言うエタンダールさん。


「ふふっ、ミラの誓約妹がこんなに可愛い娘で良かったわ、改めてミラをよろしくねベールクトちゃん」


 そうして、彼女は庭園から去っていった。



 はぁ、なんかとんでもない人だったなぁホント……


「……じゃあ私もそろそろ」


 そろそろ帰らなければ、仕事もあるし。


「お待ちなさいベル、今日はウチに泊まって行きなさい、ステルス先生には話は通してありますわ」


 お、お泊まり?


「どうしてまた……?」


「お嬢様はベールクト様と親睦を深めたがっているのです」


 いつの間にかそばに居たメイドさんがそんな事を言った。


「余計な事を言わないで!」


 怒るミラ姉様。


 親睦を深める……要するに私ともっと仲良くしたいという事なのだろうか。


「まぁ……別にいいですけど」


 そういう事ならお泊まり会も悪くはない。実は私もミラ姉様とはもっと距離を近づけたいと思っていた。


 学園祭でのあの一件。私とテルミナ、ミステール様が謎の"白百合"使いに襲撃されたあの事件。


 絶体絶命のピンチの時、ミラ姉様は颯爽と駆けつけてきてくれて私達を守ってくれた。



「ベル! 大丈夫ですの!?」


「このバカ猫……! 心配させて!」



 あの時、ミラ姉様は本気で私を心配してくれていた。


 「ちょっと! 私もいたよ!」という、チカ姉の声が聞こえたような気がしたけどまぁ、今はあの人の事は傍に置いておこう。


 この一件で、私のミラ姉様に対する印象は随分と変わった。前までは何となくチカ姉と比べて、近寄り難くてツンツンしているイメージだった。


 まぁ、チカ姉は逆に距離が近すぎというか。あの人と比べるのもちょっと違うような気がするけど。



「決まりですわね」



〜〜〜〜〜〜〜〜



 そうしてバイオレット家の別邸にお泊まりすることになった私。


「光属性魔法の起源は……」


 私はノートを取る。隣には教科書を持ちながら私に勉強を教えるミラ姉様。


「はぁ……」


 お泊まり会って言うからもっと楽しいものを期待していたのに。これじゃただの勉強会じゃん……


 私はあの後、ミラ姉様の私室に連れられ、今こうして授業のおさらいをさせられている。ミラ姉様は「いい機会ですから、あなたのお勉強を見てさしあげますわ」と私に言ってきた。


 ありがたいと言えばありがたいけどさ……



 そうして、一時間ほど魔法史についてミラ姉様に教わった。


「そろそろ休憩にしましょうか」


 ミラ姉様が椅子から立ち上がる。


 と、その時だった、部屋のドアをノックする音。そして「お嬢様」というメイドさんの声が聞こえた。


「どうかした?」


 ミラ姉様がメイドさんに問いかける。


「失礼します、お客様がお見えです」


「……? 誰かしら、ちょっと行ってくるわね」


 そう言って部屋を出て行くミラ姉様。なんだろう、凄く嫌な予感が……




「やっほ〜!」


 その予感は見事に的中した。暫くして部屋に入ってきたのはなんとチカ姉であった。


「チカ姉、どうしてここに?」


 私がそう尋ねると、彼女はチラリとミラ姉様に視線をやり「私の可愛い妹がミラージュに連れてかれたって聞いてね」と答えた。


「妹の処女の危機……姉として見過ごせないでしょ!」


 さらりととんでもない発言をするチカ姉。


「ちょ……あなた何を言ってますの!?」


 怒るミラ姉様をスルーして、部屋に入り周りをキョロキョロと見渡すチカ姉。


「ここがミラージュの部屋? なんだか物が少なくてつまらない部屋だねぇ」


 入るなり失礼な事を言う彼女。


「悪かったわねつまらない部屋で……」


 ため息混じりにそう呟くミラ姉様。


「よいしょ」


 私の隣に座るチカ姉、彼女は机に視線を向ける。


「なんで勉強なんてしてるの? お泊まり会するって聞いたのに」


 不思議そうな様子のチカ姉。


「まったく、どこから嗅ぎつけてきたんですの……」


 と、ミラ姉様。


「ねー、ミラージュ。お菓子とかお茶とかないの?」


 太々しくお茶とお菓子を要求するチカ姉。


「はぁ……ちょっと待ってなさい」


 そう言って部屋を出て行くミラ姉様。



 なんだか、この二人の関係性ってイマイチ掴めないなぁ。友達という距離ではなさそうだけど、かといって仲が悪いという訳でもないし……


 隣に座るチカ姉を見る。彼女は机に置いてあった教科書を手に取りペラペラとページをめくっていた。


「うわ……懐かしいなぁ、これ一年生の範囲だっけ」


 そういえば、チカ姉ってこれでも一応、学園ではミラ姉様に次いで優秀な魔女なんだよね。ならやっぱり勉強もできるのだろうか……


「チカ姉、ここの問題なんだけど……」


 私はメモに書き留めていた、授業で分からなかった問題を彼女に聞いてみた。後でミラ姉様に聞く予定だったけど、チカ姉がどんな教え方をするのか気になった。


「どれ? あー……これね、ここはこうして……」


 ペンを取りメモにサラサラと魔術式を書き足していくチカ姉。


 十秒ほどで全ての魔術式を書き終える彼女。早い……一年生の問題なのもあるけど、これ二、三年生でも解くのにすごく時間がかる問題だぞと先生は言ったのに……




「チカ姉って本当に優秀だったんだね……」


「……ベルちゃん、なんか今すごく失礼な事言われたような気がするんだけど」

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